第246話 裏山で栗拾い
「今日は裏山に行くよー」
ハナとアルバロと3人で裏山へ栗拾いに来た。拾った栗は父さんたちに半分お裾分けして残りで渋皮煮やモンブランを作る予定だ。
ドアを通って我が家に移動し、3人で歩いて裏山に向かう。はしゃいで右に左に寄り道するハナが可愛い。
── 裏山に着いてみたら1人多かった。
「ちょっと九頭龍!」
「かたいこと言うな、他の世界を見てみたかったんだ」
「僕の側を離れないって約束できる?」
「任せとけ!」
「どうしてクズさんは小さいの?」
子供のクズさんが目を反らした。
クズさんの面影はあるけど、いつものイケメンではなく子供だった。
「他所の世界では姿を偽れないからね」
「……ってことはクズさんって本当は子供なの!?」
クズさんが目を合わせてくれない。
「信仰やお供えや世界の発展で成長するんだけど九頭龍はいろいろ偽っててお供えが合っていないから成長がすっごく遅いんだ」
クズさんがビクッとした。
「やっぱり下戸で甘いものが好きだって神託したら?」
「カナは俺のカッコいいイメージを台無しにするつもりか?」
反抗期の子供みたいだった。
「じゃあ雨と水と縁結びだけじゃなくて虚飾も司ってみたら?ものすごく成長しそう!」
涙目のクズさんに睨まれた。可愛いな。
「カナちゃん!栗は?」
ハナがぐずった。
「ごめんごめん、さっそく拾おうね。ハナはイガを踏まないように気をつけて」
「うん」
「アルバロは栗拾い初めてだっけ?地面に落ちている栗を拾うんだ。栗は熟すと自然と地面に落ちるから枝についているものよりも地面に落ちている栗の方を採ってね」
「へえー」
「こうやってイガに入った栗を足で踏んでイガを広げてトングで中の実を取り出すの」
栗を取り出した後のイガは間違ってハナが踏まないよう蹴ってはじに寄せておく。
「はいこれ持ってね!」
アルバロとクズさんにトングと籠を渡してどんどん拾う。
「大きいな!」
拾った栗の大きさにクズさんが驚いている。
「それは岸根栗。がんねぐりって読むんだよ。大粒で有名な丹波栗よりもさらに大きい品種なんだけど崩れやすいから調理する時は慎重にしないとダメなんだ」
「ほお!カナは物知りだな」
「あっちの方は利平。丸い形で食感が良くて甘みも強くて栗の王様と呼ばれているの。渋皮煮にすると美味しいよ」
「ほうほう!」
「その奥は最高級栗の代名詞、丹波栗ね。アルバロがこだわって大粒3Lサイズばっかり採れるように品種改良しちゃったの」
「アルは出来る男だと思っていたぞ!」
「あっちの方は銀寄栗。上品な甘さとホクホク食感が特徴の高級栗だよ。高級な和菓子に使われることが多い品種ね」
「和菓子か!」
クズさんがキラキラしている。
「クズさんは和菓子が好きなの?」
「大好物だ」
「和菓子は私の専門じゃないから立派なものは作れないけど今日拾った栗で何か作ろうか?」
「いいのか!?」
「こんなにたくさんあるしね!拾うの手伝ってくれて助かるよ」
「うむ!収穫は任せておけ」
みんなで黙々と拾った。……ちょっと植えすぎた。
「まだまだ終わらないけどお昼にしようよ」
「そうだね、今日はキーマカレーにしようと思うんだけど、どうかな?」
「カナちゃんのカレーすき!」
賛成してもらえたのでカレーに決定だ。
アルバロがアイテムボックスから竈門を出して炭火を起こしてくれる。
「ご飯も僕が炊くよ」
「ありがとう」
アイテムボックスから野菜と挽肉を取り出して野菜を勢いよくみじん切りにしたら大きなお鍋に油をひいてひき肉を炒める。みじん切りにした野菜をどさっと加えてさらに炒める。ここでスパイス類を加えて香り付けする。スパイス類を炒めると風味が増して美味しいのだ。
「いいにおい」
ハナがフンフンする。
「腹が減るのう」
ハナの隣でクズさんもフンフンしている。子供のクズさんとハナの組み合わせが可愛い。
「トマト缶と水を加えて煮込むよ」
沸騰してきたので火からおろして市販のカレールウを投入。カレールーが溶けたら再び火にかけて煮込みながら水分を飛ばす。
「大体いいかな」
ケチャップとウスターソースを少し加えて味を整えたら完成。
「ご飯も炊けてるよ、目玉焼きも作ったから乗せようよ!」
「いいね!」
アウトドアのテーブルと椅子を出していただきます。
「おいしー」
「アウトドアのカレーって美味しく感じるよね」
「美味いのう」
「クズさんの世界にもカレーってあるの?」
「似たものがあるぞ」
「そうなんだ」
地球でも国や地域ごとのカレーがあるもんね。今日は日本のカレールウを使ったから日本風だ。
アルバロとクズさんがおかわりしてカレーはきれいに無くなった。
「チャイでも淹れようか」
鍋に生姜のスライス、シナモンスティック、カルダモン、クローブと水を入れて煮出したら火から下ろして茶葉を加える。少し時間をおいて牛乳と砂糖を加えて火にかける。温まったら茶こしで濾して出来上がり。
「どうぞ、熱いから気をつけて」
カップに注いで配る。
「ハナのは少しぬるく作ったけどまだ熱いと思うよ」
「ありがとー」
ハナが慎重にふーふーして可愛い。
「おいしー!」
「気に入った?」
「うん」
食後のお茶をゆっくり楽しんで午後も頑張って落ちている栗を全部拾った。
「また落ちてきたら収穫に来ないとね」
ちょっと植えすぎたと思うカナとアルバロだった。




