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第243話 毛皮くらべ

 信楽焼の狸を見た翌日、クズさんは現れなかった。その翌日はアルバロとハナと一緒に新居の家具を選んで少しだけ買い足した。


 これまでも同じ家で生活を共にしてきたけど、日本も含めて初めての同棲生活なので家具選びで妙にうきうきしてしまった。



「アル!」


 リビングでハナとアルバロと一緒に映画を観ようかと相談していたらクズさんが3日ぶりに現れた。


「もう!来る時は前もって連絡してよ」

「すまんすまん」

「今日はどうしたの?」

「ちょっとテラのところに行ってた」

「テラ?地球の神だよね?どうして?」


「…ふふふ」

 クズさんが不敵に笑った。クールな美貌のイケメンなので凄みがある。


「テラに最近の流行りを聞いてきた。俺は時代に合わせてアップデートした」

「何をアップデートしたの?」


「見ろ!」

どろん!


 クズさんが可愛い子狸に化けた。日本の狸のぬいぐるみのような見た目に変わっていた。もはや信楽焼のような伝統を感じさせる要素はどこにも無い。


「かわいー!」

 ハナが駆け寄ってすりすりした。クズさんもまんざらでもない様子だ。


「この前はだらしない生活が身体に現れた中高年男性みたいだったのに!」

「カナは言葉をオブラートに包め」

子狸が涙目で訴えてくる。

「ごめんごめん」



「撫でてもいいぞ」

子狸がぐいぐいきた。

「いいの?」

「構わん、存分にモフるがいい」

遠慮なくモフってやった。


「首の後ろが気持ちいいの?」

首の後ろをつまんでモミモミした。

「効くう」


「ごろんして」

子狸がごろん。

「お腹は?」

「はうぅー…」

 胸からお腹を繰り返し撫でると子狸が溶けた。



「カナの浮気者」


振り返るとアルバロが涙目だった。


「撫でただけだし」

「九頭龍のいいとこ全部分かってるなんて…!」

「犬と同じだからね」

愛犬時代のハナと同じ反応だった。


「もう撫でちゃだめ!」

「あ…」

アルバロに子狸を取り上げられた。


「アル、カナは俺の毛皮にメロメロなようだぞ」

アルバロがビクッとした。

「いや、結構硬かった。圧倒的にハナのふわふわの毛皮が最高」


「アップデートした俺の可愛らしさにノックアウトされただろう!」

「可愛いけど愛犬時代から私とラブラブなハナには及ばないし」

子狸が眉間に皺を寄せて固まった。


どろん!

クズさんが人型に戻った。


「そこまで言うなら試してみようじゃないか。ハナちゃん、おいで〜」

 素直で可愛いうちのハナちゃんが抱っこされ、クズさんがハナのふわふわな頭に頬を寄せてすりすりする。

「ほほお!これはなかなか!」

「でしょう!?」


 真顔に戻ったクズさんがハナをそっと畳におろした。


どろん!

クズさんが消えた。


 ハナのふわふわな毛皮にショックを受けたようだ。子狸のクズさんも可愛いので元気を出してほしい。

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