第238話 我が家でご飯
神々へのご挨拶を終えてアルバロの拠点に戻ってきた。
「カナとリオは自分自身を鑑定してごらん」
アルバロに促されて自分で自分を鑑定すると隠密スキルをゲットしていた。
「さっき空気に同化してたから?」
「そうだよ。ダンジョンなんかで役立つスキルだけど、いつもハナとリザが正面からドカドカ倒しちゃうから使うことはなさそうだね」
「リザは?」
「特になにも」
確かに何事にも動じないリザに隠密スキルは必要ないだろう。せっかくゲットしたけど私たちも役立てる機会がなさそうだ。
「ここに建てる家の相談をしようか」
「明日にしようよ。そろそろお散歩に行かなきゃ。ずっと前にアルバロの拠点と我が家を繋げたじゃん?あのドア、私たちも使える?」
「忘れてた!そういえば繋げたよね。みんなも使えるよ」
アルバロが開いてくれたドアの先は見慣れた我が家だった。
「ハナ、お散歩にいこうね」
「うん」
今日はおやつも多めに食べたからたくさん運動させなければ。
「俺たちは晩飯の支度をするか。アルバロはお友達のところに行ってきたらどうだ?約束してただろう」
「ああー…」
ちょっと面倒そうだ。
「せっかく会いに来てくれた友達だろう」
「…行ってくるよ」
アルバロが億劫そうに出かけて行ったので私とハナはお散歩ダンジョンに向かった。今日は魚介モチーフの魔物がたくさんポップして美味しいシーフードがたくさんドロップした。
秋といえば鮭なので鮭もたくさんドロップしてハナがご機嫌だ。
「鮭でたねー!」
「そうだね、今日は父さんたちが支度をしてくれているから明日のご飯で食べようか」
「やったあ!」
海老や蟹に混じって鮭もたくさんドロップしたので張り切ったハナが予定以上に運動してくれた。可愛く四つ足でスキップするハナと一緒に帰宅すると夕飯が出来ていた。
「今日は煮込みハンバーグにしたぞ」
「うれしー、ハナの好きなやつ」
「アルバロは?」
「まだなんだ」
「そっか」
「ハナちゃん、先に食べるか?」
「アルバロと一緒がいい」
ハナがいい子で可愛い…ハナをぎゅうぎゅう抱きしめていたら疲れた顔のアルバロが帰ってきた。
「おかえりー」
「夕飯はアルバロの好きな煮込みハンバーグだぞ」
駆け寄るハナを抱き上げたアルバロの表情がぱあっと明るくなった。
「僕、お腹空いちゃったんだ!」
「すぐ食べられるぞ」
手分けして配膳してちゃぶ台についた。
「いただきまーす!」
── 1人多かった。
「…クズさんでしたっけ?」
九頭龍神が箸を持ったまま首を傾げた。
「親しみを込めて省略形で呼ばれているんだと思うが、なんだかちょっと変な感じがするような…」
「気のせいですよ」
「そうか?」
隣のアルバロが複雑な表情をしているのはスルーすることにした。
「それよりどうして家でご飯を食べているんですか?」
「引き止めたのにアルが帰っちゃって…」
クズさんがうつむいた。
「淋しかったんですか?」
「うん」
淋しそうなイケメンの表情は説得力があった。
「アルバロ…」
可哀想じゃんという雰囲気でアルバロを見る私と父さん。
「僕には僕の生活があるんだってば、食べたら帰ってよ」
アルバロが冷たい。
「以前はよく一緒に過ごしていたの?」
「俺とアルバロは幼馴染でな、梵天様のもとで共に育てられたのだ」
当然ながら「兄弟みたいだな…」「アルバロったら冷たいんじゃない…」という雰囲気になった。
アルバロが説明を引き継ぐ。
「成長して適正テストを受けてお互いに必要とされる世界に降臨したんだ。忙しくなったし、それ以降は数十年に一度の頻度で梵天様のところで会うくらいだよ。2年前に会ってるし!この前会ったばっかりだし!」
「神様の時間感覚ってすごいね」
「淋しいって感じるほど離れてた訳じゃないのか」
今度はクズさんに説明を求めるような空気になった。
「おいしーけど食べづらい」
空気を読まないハナがぐずった。フォークを持つハナのお皿を見るとハンバーグの端っこががボロボロになっている。
「今日の煮込みハンバーグはふわふわにこだわったんだが、ふわふわ過ぎたか」
「じゃあハナのハンバーグをロコモコ丼にしようか?」
「して!」
ハナのお皿を持ってキッチンに戻り、手早く半熟の目玉焼きを作ってロコモコ丼にした。
「ありがとカナちゃん!」
大喜びのハナがスプーンを持って目玉焼きを絡めたハンバーグとご飯をすくう。
「おいしー!」
「これなら食べやすい?」
「うん」
ハナが元気よく食べ出した。
「リオ様、私も2杯目は丼がいいです」
いつの間にか大量のハンバーグを完食していたリザがおかわりだ。
「じゃあ俺も同じのを」
遠慮知らずのクズさんにアルバロが何か言いたそうだったけど、アルバロが怒り出す前に父さんが手早くおかわりを作った。
アルバロが何か言いたそうだけど先にご飯を食べてしまった方が良さそうなのでハナやリザを見習って美味しく完食した。




