第234話(眷属編) アルバロの拠点
「今日は僕の拠点に行ってみようよ!」
朝からアルバロが張り切っている。秘境の我が家とアルバロの拠点、2拠点生活に移るにあたって昨夜のうちにリザに私たちの事情を説明したけど予想以上に淡白な反応だった。リザがこういう性格で本当に助かる。
「ハナは行ったことある?」
「覚えてない」
「ハナは転生する生き物すべてが集められた場所にいたから僕の拠点はハナも初めてだよ」
「そうなんだ」
「全員集まって。この魔方陣の中に入ってね。いい?いくよー!」
一瞬で森だった。
「森だね」
「そう。森の中に神々が拠点を構えているんだ。僕の場合はこの左右の石柱が目印。この石柱の間を越えると僕の拠点なんだ、さあ入って入って!」
アルバロに急かされるように石柱を越えると景色が変わった。何もない森に家が現れた。
「一人暮らしだから平屋の1LDKなんだ!みんなの住居は相談しながら整えるから心配しないで。入って入って!」
以前見せてもらった通り中世ヨーロッパのお城を思わせる石造りの部屋だった。その時の印象では中世のお城のようなところに住んでいるんだろうなと思ったのに、まさかの1LDKだった。
「お邪魔しまーす」
「西洋の城みたいな作りだなあ」
床も壁も石造りでひんやりしている。
「座ってて、お茶でも淹れるよ」
アルバロが指し示したテーブルと椅子は木製の素朴な作りで椅子を引いてみたら重たくて昔ながらの手作り家具って感じがした。
「手伝うよ」
「ありがとう」
神様のキッチンに興味があったので手伝いを申し出たら同じように考えていたのか父さんもついてきた。
「昔ながらのキッチンて感じだな」
キッチンというより竈門だった。こういうキッチンで料理するのも、たまになら楽しそうだ。
「魔法があれば便利なんじゃないかな」
「うん、だいたい魔法でやっちゃうよ」
アルバロが水魔法でヤカンに水を満たして火魔法で水をお湯に変えると手際良くティーポットに茶葉を入れてお湯を注いだ。アルバロの世界で飲みなれたハーブティーの香りだ。
「お茶請けは焼き菓子でいい?」
アイテムボックスからビスコッティとフィナンシェ、ロシアケーキを出した。
「やったあ!カナちゃんのロシアケーキ大好き」
ロシアケーキはビスケット生地にジャムやナッツやクリーム、チョコレートを乗せた焼き菓子で見た目がレトロで可愛らしいのでハナのお気に入りだ。ハナがいろんな種類を食べられるよう小さく作るのが私流だ。
「僕も好き!ありがとうカナ」
「たくさん食べて」
「では遠慮なく」
── 1人多かった。
言葉通り遠慮なく焼き菓子をもりもり食べる見知らぬ人がいた。
しばらく時間があいたにも関わらずご訪問くださってありがとうございます。
また8月ごろに仕事が忙しくなりそうなのですが、キリのよいところまで更新いたしますので、またご訪問いただけると幸いです。




