第230話 大豆の収穫
避暑を終えて我が家に戻ったら大豆の収穫時期だった。
「今日は全員で大豆の収穫だね!」
「みんな暑いから無理するなよ。休憩と水分とってな。ハナちゃんは日陰にいなさい」
──父さんが口うるさい。
お茶と違って大胆に収穫できるのがいい。
手の届く範囲全部を根っこからごっそりアイテムボックスに収納していく。自分がブルドーザーになったような気分だ。
── 収納しながらずんずん進むが全然減らない。
「もしかして植えすぎた?」
「俺もそんな気がしてきた」
ランチ休憩の時点で1/3しか収穫できていない。父さんも同じことを思っていたらしい。ランチの父さん特製3色そぼろ弁当を広げながらつぶやいた。
「今日はもう終わりにしない?」
日陰で休んでいたのにハナの食欲がなくて心配だ。
「そうだな止めておこう。午後は暑いから熱射病になりそうだ。アルバロ、今日全部収穫しなくても大丈夫だろう?」
「うん、何日かに分けて作業しようか」
「ハナ、無理して食べなくても大丈夫。お家に帰って休んだらお腹が空いてくるからその時に食べようか」
「…うん」
父さんの3色そぼろ弁当はハナの大好物なのに一口しか進んでいない。
お弁当を中断してハナと一緒に魔法陣で帰宅した。浄化魔法でさっぱりしてクーラーをつけてハナに水をたくさん飲ませて休ませる。風通しの良い日陰で休ませていたけれど毛皮を着ているし地面に近いので私たちより暑さが堪えるのだろう。
涼しい部屋で抱き寄せてぽんぽんしていたらハナの元気が戻ってきた。
「そぼろ弁当食べたい」
ハナの食欲が戻ったので一緒に食べることにした。
「おいしー」
「ハナの元気が戻って良かったよ」
「えへへ。さっきはお腹が空いてなかったの」
デザートにフルーツのヨーグルト和えを出したら綺麗に完食してくれて安心した。
「明日はこの魔法陣を使うから心配しないで」
「それなあに?」
「日陰をつくって温度と湿度を調整する魔法陣だよ」
ハナが休んでいる間にアルバロが描いていたのはハナのための魔法陣だった。
「この後、お米や葡萄の収穫もあるしハナに我慢させたくないからね」
「うれしー、アルバロありがと」
ハナがアルバロに抱きついて甘えている。
アルバロの魔法陣のおかげでハナが体調を崩すことなく3日後に大豆の収穫を終えた。
「収穫した大豆は全部父さんのアイテムボックスに入れておくってことでいい?」
「ああ、どんどん渡してくれ」
インターネット通販で大きめのバケツを召喚してアイテムボックスの大豆をバケツに入れて渡してゆく。残った茎や根っこや莢は畑に撒いた
「私の分はこれで全部」
「僕の分も終わり」
「私の分もです」
「父さん、全部でどのくらいになった?」
「…1.2トン」
想定以上だった。巽たちのお店が大繁盛しても大豆不足になることはないだろう。




