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第222話 プール

「プールを作ろうよ」


「カナ?」

私の提案にアルバロがポカンだ。

「海水浴は楽しいけど普通に泳ぎたい。冬は温水プールにしたい」


 日本にいた頃、少しだけジムに通っていた。少しだけというのはパン屋の仕事が激務で毎日疲れていて通えなくてすぐに退会してしまったからだ。あの時は自宅にプールがあったら…と妄想したものだが今なら実現できる。


「裏山温泉に付属する施設の1つみたいな感じで!やっぱり25メートルは欲しいな」


 日本のスポーツジムのホームページを見ながらアルバロと相談した結果、プールの他にヨガなどに使える広い部屋も作ることにした。



「暑いけど頑張る…」

 真夏に土木工事を始める自分の愚かさを噛み締めながら黙々と作業した。土魔法を使えてよかった。


 裏山温泉から渡り廊下で行き来できる別館のような感じで外観は裏山温泉に合わせることにした。プールはタイル張りでお水は秘境の中を流れる川から引いて少し離れた場所の海に流すことにした。冬は源泉を引く。


 凝った建物ではないので数日で出来たけどタイルや瓦を焼くのは暑かった。


「タイルと瓦を全部釜に入れ終わった?」

「うん」

「じゃあ焼いていくよ、焼き上がったら自然と熱が冷めるまで置いておこう」

アルバロが釜に火を入れた。


「あっついー」

「そうだね、ここは放っておいて大丈夫だから建物を作っちゃおう」

「うん、手伝ってくれてありがとう」

 私の気まぐれな思いつきに当然のように文句も言わず付き合ってくれて感謝だ。


 ヨガなどに使う部屋は広いだけで何もないフローリングなので簡単だった。プールも穴が空いているだけの何もない大きな部屋だ。

運動する部屋だし換気のために窓を大きく作ったら明るくていい感じで出来上がりに期待してしまう。



 毎日、作業を終えたら温泉で汗を流して疲労を癒してから帰宅した。


「おかえりー!」

 我が家に帰るとハナがすっ飛んできてくれて可愛い。

「ただいま」

 毛皮を着たハナを連れて行くと熱射病になりそうなので言い聞かせて父さんたちと一緒に過ごしてもらっている。


「明日もハナお留守番?」

淋しそうなハナが可愛い。


「明日タイルを釜から出すよ。それを貼り付けたらプールは完成だから秘境から川の水を引いてみよう」

「アルバロ、じゃあ明日で終わり?」

「その予定だよ。出来上がったらハナを迎えに来るから水を引くのを一緒に見よう」

「うん!」

 喜びを爆発させたハナがアルバロに抱きつく。この日は大喜びで夜眠るまではしゃいでいた。




「じゃあ釜からタイルと瓦を出していこう」

 翌日は朝からアルバロと一緒に瓦とタイルを出してアイテムボックス内でコピー&ペーストで複製した。


「瓦は僕に任せて」

「じゃあ私がタイルを貼っていくね」

 アルバロの方が早く終わってタイル貼りを手伝ってくれてランチを挟んで午後に完成した。


「やったね!」

「ハナを迎えに行こうよ」

 汗だくな自分達を浄化してハナを迎えに行った。


「ただいまハナ!」

「カナちゃん」

 迎えに行くとすっ飛んできて抱きついてくるハナが可愛い。

「出来た?」

「うん、一緒に水を引くのを見ようか」

「やったあ」



 ご機嫌なハナを連れてプールに戻るとアルバロが魔法陣を稼働させてくれた。


「北部の川からお水を引いているんだ。かなり冷たいからクサツのお湯を少しブレンドしてるよ」

 ドドドドド…という音と共に傾いた壺からプールに水が流れ込む。


「すっごいー!」

 ハナが大興奮だ。みるみるお水が溜まっていきプールが完成した。


「さっそく泳いでみようよ!」

 ハナを連れて更衣室で水着に着替えてからプールに戻ると水着姿のアルバロが待っていた。

「カナは泳いできたら?ハナは僕と一緒に遊ぼうよ、浮き輪もあるよ」

「うん!」


 ありがたくハナをアルバロに預けて身体をほぐしてからプールに入ると心地よい温度だった。平泳ぎとクロールで25メートルずつ泳ぐとくたくたで子供の頃にスイミングスクールで泳いでいた頃の体力はもう無かった。


 横を見るとハナがビート板につかまってバタ足で泳ぐのをアルバロがサポートしていて2人とも楽しそうだった。ハナは座っていても歩いても泳いでも可愛いなと思いながら、さらに2往復ずつ泳いだ。


「ハナ、アルバロ」

「もういいの?」

「うん、子供の頃みたいに泳げると思ったら全然だめ。しばらく通ってもっと泳げるようになりたいな」

「僕も付き合うよ、ハナもプールが気に入ったみたいだし」

「プール楽しいよ!」

「ありがとう」



 私が泳ぐ間ずっとハナと一緒に遊んでくれるつもりらしい。アルバロは本当に人柄が良いなと思うのと同時に、やっぱり恋人を通り越して小さな子供のいる家族みたいだなと思って恥ずかしくなってしまった。

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