第220話 羽毛がふかふか
fetch(取ってこい遊び)でハナとローザと狐太郎君が満足するまで遊んだ。
「ランチにしよう。動いて腹が減ったんじゃないか?」
オープン稲荷やサンドイッチやスープなどを庭のテーブルに父さんが出してリザがお皿を配る。
「好みのものを取ってくださいね」
「嬉しい!おじさんのお料理、本当に美味しいもの。おじいちゃん、おばあちゃん、全部すっごく美味しいのよ!」
クラリッサ本人が言っていたようにクラリッサはおじいちゃん子でおばあちゃん子なようだ。いつもの強気な美人の雰囲気じゃなくて甘えっ子な雰囲気を出している。ネルソンさんとアマリアさんも孫娘に甘い雰囲気がダダ漏れで微笑ましい。
ネルソンさんとアマリアさんご夫婦にあれこれ勧めるクラリッサを見ながらハナに好きなものを取ってやる。ハナのメインは鮭フライサンドだ。孤太郎君は予想通り巽にオープン稲荷を取ってもらっている。
「ローザ、フルーツはどう?小松菜もあるよ」
オープン稲荷やサンドイッチを見てキョロキョロしているローザに声をかけた。見慣れないものばかりで戸惑っているのだろう。念のためカナリヤが好むと聞いた小松菜や穀物も用意してある。
「ありがとうカナさん。ローザ、少しずついただいてみようか」
オスカル様が少しずつお皿に取るが小さなローザは食べる量も少ないようで全部少しずつだった。
「りんごも小松菜も美味しいわ!ダンジョンのりんごみたい」
ローザが裏山で採れたりんごや我が家の家庭菜園で栽培した小松菜を喜んで食べてくれている。
「ご先祖がダンジョンから持ち帰ったりんごの種を庭に植えて採れるようになったりんごなの。小松菜ももともとはダンジョンのものなの」
「…ダンジョン産の作物を育てるという発想はありませんでした、カナさんのご先祖は素晴らしい閃きの持ち主ですね」
── ネルソンさんに関心されてしまったが本当は日本で買った苗なんです。
「カナの家で栽培しているフルーツは美味しくて食べすぎちゃったわ」
「温室じゃないと育たない種類が多いから栽培の手間はかかるよ」
「うちで採れるうちはクラリッサちゃんたちにお裾分けできるから、たくさん食ってな!」
「家族で食べきれないくらいできるもんね」
「ありがとう。おじさん、カナ」
クラリッサに抱きつかれた。今日は本当にいつもと違うな。
「おいしかったー」
ハナが寄りかかってくる。これはお昼寝の合図だ。夜ふかしして寝不足なところに取ってこい遊びでくたくたになるまで走り回ってお腹いっぱい食べたら眠くなるだろう。横を見ると孤太郎君も眠そうだ。
「おばあちゃん魔法かけて!」
ローザが鼻息荒くアマリアさんにねだっている。
「はいはい、そこに立ってね。皆さんは離れててください」
ボフッとローザが巨大化した。小鳥のローザがハナと孤太郎君より大きい。大きくなったローザは孔雀のように美しい。
「これで一緒に寝ても潰されないわ!ハナちゃん孤太郎、いらっしゃい!」
巨大化したローザが手羽先でハナと孤太郎君を抱き寄せるとハナと孤太郎君の鼻先がローザの羽毛に埋もれた。
「ふわふわ…」
「すっごい…」
「むふー」
ハナと孤太郎君が左右からローザに抱きついてローザがご満悦だ。
「このくらいローザが大きいとお昼寝も安心だね」
「そうだね」
ローザが小さいまま一緒に昼寝をするとハナや孤太郎君が寝返りをうった時に小さなローザが潰されてしまうのでポーション片手に目を離せず見守る私たちが休まらないのだ。
ハナとローザと孤太郎君が抱き合って眠る様子は可愛かった。
「あっつい…」
1時間後に起きたハナと孤太郎君の顔が真っ赤だった。
「ほらほら!お水飲んで!ローザは?脱水してない!?」
慌ててハナと孤太郎君にお水を飲ませ、ローザも鑑定したが脱水は起こしていなかった。
「ローザの羽毛もふかふかで保温効果が凄いんだね、気づかなくてごめん。ハナも孤太郎君ももふもふだし次から少し離れてお昼寝しようね」
お水を飲んで落ち着いたハナを抱き寄せてぽんぽんした。
「ローザちゃん、ふわふわで気持ちよかったよ」
「俺も気持ちよかった」
ハナと孤太郎君はローザの羽毛が気に入ったようだ。
「やだ、世界一素敵な羽毛だなんて。ハナちゃんも孤太郎も正直ね…」
ローザは相変わらずだった。手羽先を頬に当てて照れる姿が優雅で美しい。
「でも次に会うのは冬にしようよ」
「ハナもローザちゃんと一緒にお昼寝するのは冬がいい」
赤い顔でハッハハッハする孤太郎君とハナの提案に嫌とは言えないけれど落胆を隠せないローザ。
アマリアさんに『そうしなさい』と言われて肯くローザは素直で聞き分けが良いし、アマリアさんに甘えるローザが可愛い。今日はオスカル様の存在感がほぼゼロだ。
「今日は会いに来てくれてありがとう。これはお土産ね、ローザの好きなフルーツと小松菜も入ってるよ。大人にはサンドイッチもね」
お別れのタイミングでお土産を渡した。もちろん巽とクラリッサにも渡した。
揚げ物を挟んだサンドイッチは太るから気をつけてと言ったら、カナは今日も一言多いとクラリッサに頬っぺたを引っ張られた。




