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第219話 ローザと孤太郎君と

 昨夜は王都!王都!とはしゃぐハナを寝かしつけようと苦労したから眠い。起きないハナをペットスリングに入れて朝早く出発した。わがままで本能に素直なハナが可愛いけど『わがまま娘』と思う瞬間だ。可愛いけど。



 王都に入る時になってもハナは起きなかった。

「この子は私の従魔です。ギルドカードはこれ」

「可愛い従魔だね」

「妹みたいなものなんです」

 一般的に従魔は魔物討伐のサポート役なので大きくて強くてキリッとしている。うちのハナちゃんのように小さくて可愛いくて無防備に眠っている従魔は珍しいのだろう、門番さんたちがニコニコしている。

「子供の頃から私が体調を崩すとずっと寄り添ってくれて。可愛いんです」

「最高のパートナーなんだね」

「そうなんです」

ぷうぷう眠るハナが誇らしかった。




「今日は市場にある屋台で飯にしないか?」

「いいね!屋台」

 ぞろぞろ移動して屋台を回っている間にハナが起きた。


「起きた?」

「…うん」

まだトロンとしている。


 スープや串焼きなどを買って屋台村のテーブルで早めのランチにしたが寝起きのハナは食欲がない。

「串焼きをアイテムボックスに入れておくね、後でお腹が空いたら出してあげる」

「うん」

 スープを少しだけ飲んでお腹いっぱいのようだ。


「今日は真っ直ぐ家に行って明日は朝市に行ってみないか?」

「そうしようか、今日は移動で疲れたね」



 今日は特に寝起きが悪く、起きてからもスリングの中で甘えていたハナが家に着く頃には元気になってきた。


「ハナお腹すいちゃった」

「さっき食べなかったお肉食べる?」

「甘いのがいい〜」

 マドレーヌと牛乳を出してやった。甘やかしている自覚はあるがマドレーヌを食べるハナが可愛い。

 なぜかアルバロもハナと一緒に食べている。お昼を食べたばっかりなのに甘いものは別腹らしい。アルバロの別腹は容量がデカい。


 その日は魔法陣で我が家に戻ってハナをお散歩ダンジョンで多めに運動させたら夜はいつもの時間に眠ってくれた。



 翌日は朝からハナが興奮していた。

「こたくんとローザちゃんまだかな?」

「11時ごろって約束したから、あと1時間くらいかな」

「早く来ないかなー」

 今日は孤太郎君とローザが王都の我が家に来て一緒にお昼を食べる約束をしている。


 落ち着かないハナと一緒に庭に出てみると門と私のところを行ったり来たり忙しい。

そわそわと歩き回るハナが何かに反応した。


「来た!」

 四つ脚で門に向かって駆けてゆくハナを追いかけると孤太郎君を抱いた巽が見えた。

「こたくん!」

「ハナちゃん」

 巽が孤太郎君を降ろすとお鼻とお鼻をくっつけてご挨拶した。


「来てくれてありがとう。ハナが落ち着かなくて大変だったの」

「孤太郎もだよ、昨夜はなかなか寝てくれなくてさ」

「ハナと同じだ!」

 おかげで眠いよねと話していたら名前を呼ばれた。


「カナ!」

「クラリッサ!ローザとネルソンさんもいらっしゃいませ」

 美しいエルフ御一家が勢揃いだ。クラリッサとクラリッサの叔父のオスカル様とオスカル様の従魔のローザ、クラリッサのおじいちゃんでオスカル様のご両親でお目付け役のネルソンさんご夫婦。全員美形だ。


「ローザちゃん!」

「久しぶりだね」

「今日もふわふわね!」

 駆け寄ったハナと孤太郎君が声を掛けるとハナと孤太郎君の毛皮を見たローザの目が光った。相変わらずモフモフ好きのようだ。


「カナちゃん、ハナたちにボール投げて!」

「今日はボールじゃなくてこれ」

 小さなカナリヤのローザはボールをキャッチできないのでインターネット通販で軽くて丈夫なソフトグライダーを召喚した。ソフトグライダーは頑丈な紙飛行機のようなものだ。


「捕まえたら私のところに待ってきてね、いくよー」

 思ったよりも速く遠くまで飛んだ。ローザとハナと孤太郎君がばびゅんと効果音が聞こえそうなスピードで走って行った。


「皆さんはこちらへどうぞ」

 父さんが庭のテーブルに案内してお茶を淹れてくれたので私はハナたちの相手に集中した。


「取ったわ!」

「ローザは凄いねえ」

 ソフトグライダーを嘴に咥えたローザが戻ってきたので受け取って撫で撫でした。


「もう一回投げて!」

「次は俺がとる!」

 ハナと孤太郎君もやる気なので今度は地面寄りに投げたら孤太郎君とハナがぶつかってしまった。しかし仲良く譲り合ってハナが咥えてきた。

「2人とも譲り合ってケンカしないで良い子だねえ」

ハナと孤太郎君を撫で撫でした。


「もう一回投げて!」

「はいはい」

 ローザとハナ&孤太郎君の中間の高さを狙って投げた。こんなに気を使う取ってこい遊びは初めてだ。



 喧嘩させることなくハナと孤太郎君とローザを平等に疲れさせるまで遊んだが私の疲労が半端ない。ハナと孤太郎君とローザがバランスよくキャッチできるよう狙って投げるのは体力も精神も消耗する。


「楽しかったー」

「俺も」

「ちょっと疲れたわね」

 ぜえぜえと肩で息をするハナと孤太郎君とローザが美味しそうにお水を飲んでいる。



── この遊びは私が1番疲れるわ。


 次の機会があったらアルバロに投げてもらおうと決めた。

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