第208話 養殖
── 鮑、牡蠣、ホタテ、車海老、ウニ、海苔。
「ほかに食べたいものはあるか?」
「海は充分じゃない?初年度だし。川なら鮎と鰻も食べたい」
「最初は控えめに始めた方がいいよな。今年は海で川魚は来年考えよう」
「上手くいったら来年は種類を増やそうよ!」
「そうだな!」
全然控えめじゃない欲張りラインナップなのに俺たち控えめ!と、はしゃぐリオとカナだった。
まずは養殖について調べた。
「籠を海中に吊るして育てる方法が簡単そうだね」
「気候や赤潮、外敵が原因で全滅することもあるらしいぞ」
「私たちにはアレがあるじゃん」
「アレ?」
「モンテ・トラスの鉱物ダンジョンでドロップしたミスリル、アダマンタイト、オリハルコンだよ」
「そうだったな!」
「気候や赤潮は仕方ないけど外敵に食われるのは避けたいもんね!」
貴重な鉱物で養殖の籠を自作して、稚貝や飼育のための配合飼料は召喚魔法(インターネット通販)で調達することにした。養殖用の籠を守る檻のような物はミスリルやオリハルコンやアダマンタイトで作る。しかも二重にして絶対に破らせない決意だ。
鮑、牡蠣、ホタテ、海苔は海中で育てるが、参考にした資料が養殖池で飼育していたので車海老とウニは養殖池を作って育てることにした。
「ミスリルが全然足りないね」
ミスリルはそこそこ手に入るからと売ってしまったことを思い出した。
「じゃあ鉱物ダンジョンに行くか」
さっそく鉱物ダンジョンに来た。鉱物ダンジョンは3フロアで構成されていて1階にガーゴイル、2階にゴーレム、3階にメタルマシン。フロア数は少ないが1フロアが広く、1フロアにセイフティゾーンが5〜6箇所ある。
1階は鉄、青銅、銅、爆弾石の錬金素材になる爆弾鉱石、希少価値が低い宝石。
2階に銀、鋼、魔鉄、ほどほどの宝石。
3階に金、プラチナ、まあまあな宝石、稀にミスリル、もっと稀にアダマンタイトやオリハルコン。
1階と2階はスルーして3階に向かうとメタルマシンや機械兵、メタルゴーレムなどが大量にポップしたがハナとリザに次々と倒されてゆく。ハナとリザの攻撃圏内から外れた魔物を倒しつつドロップ品を拾っていると徐々に魔物がポップしなくなってきた。
「セーフティゾーンで休憩しようよ」
「そうだね」
全員でセーフティゾーンに移動してお茶を淹れる。アップルパイを作った時についでに焼いてアイテムボックスにしまっておいたレモンメレンゲパイを出した。今日はたくさん動いたから解禁だ。
「パイだ!」
「レモンメレンゲパイだよ。大きく見えるけど軽いからハナもこれくらい食べられると思うよ」
「ありがとカナちゃん」
全員に切り分けて配る。いつも通りアルバロにはでっかく切った。
「おいしー」
「このクリーム、レモンの風味が美味しいね!ふわふわのメレンゲと合うー」
予想通りハナとアルバロが大喜びだ。
食べ終えてドロップ品を確認した。
ドロップ品の6割が金、プラチナ、まあまあな宝石だった。3割がミスリル、残りがアダマンタイトとオリハルコン。
「前回来た時よりミスリルのドロップ率、高くない?」
「俺もそう思う…」
「これだけあれば足りるよね?鮑と牡蠣とホタテと車海老とウニと海苔、楽しみ〜」
── アルバロの仕業だった。




