第203話 ネルソンさん
「お仕立ては時間かかるよねえ」
「そりゃ当然だよなあ」
勢いでドス・グラントに来たけど発注からお仕立て上がりまで結構かかる。いったん我が家に帰ることにしたけど、せっかくなので冒険者ギルドや織物のダンジョンにも行くことにした。
ドス・グラントが織物の街と呼ばれるくらい発展した理由は織物のダンジョンでシルクスパイダーの糸やゴールデンフォックスの毛皮など上質な素材がドロップするかららしい。
前回の滞在でアルバロが『美味しいバター』『美味しい牛乳』『美味しい卵』『アーモンドプードル』『粉糖』もドロップするように改修したのでハナも喜んでアタックしてくれる。
「美味しい牛乳でたねー」
「そうだね」
「プリン作る?」
ハナが期待に満ちた顔で見てる。この顔でねだられたら絶対に断れない。
「帰ったら作ろうか」
「やったあ」
抱きついてくるハナが可愛い。
「糸や毛皮なんかは売っていこう」
「そうだね」
ドス・グラントの冒険者ギルドに行ってみると前回もお世話になったネルソンさんがいた。ネルソンさんはカミロさんの息子さんでカミロさんに似た麗しいエルフだ。性格は穏やかで落ち着いた大人の雰囲気だ。見た目は若くて麗しいのに雰囲気はイケおじ。
「こんにちは!買い取りお願いします」
「いらっしゃいませ、カルピオパーティーの皆さん、お久しぶりです。たくさんありそうなので別室でお願い出来ますか?」
別室で織物ダンジョンのドロップ品を全部出して買い取りしてもらった。
「ありがとうございました!」
今回のお仕立てにかかった費用が補填されてほくほくだ。
「息子がご迷惑をお掛けしたようで申し訳無いです」
「息子さん?」
誰のことだろう。
「オスカルという名前で漁師町のルースラゴスにある冒険者ギルドで職員をしています」
マジか!?
「ネルソンさんてオスカル様のお父さんだったんですか!?」
「はい」
「ええええ…」
「似てるけど似てない…」
ネルソンさんは穏やかで包容力あるイケおじなのにオスカル様は超マイペースだ。
「独り立ちして従魔のローザを迎えて溺愛するうちに個性が強調されるようになって…」
「可愛がっていますもんね」
「溺愛の度が過ぎるので会うたびに注意してきたんですが、既に独立した大人ですし離れて暮らしているので…」
「ローザは素直ですよね」
「良くも悪くもオスカルの影響下にあるんです。妻がテイマーのスキル保持者なんですが妻によるとローザはオスカルの言うことを何でも受け入れちゃうのでローザも世間とちょっとズレてて」
ハナが“可愛い”は自分の名前だと思って反応しちゃうようなものか。ちょっと違うかな。
「我々は寿命も長いので早めに矯正しないとオスカル自身が不幸ですし周囲に迷惑をかけてしまうので、妻がオスカルの元で過ごしたりオスカルをこちらに呼んだりして再教育しているんですよ。私も話をするんですが私がローザと会話するには妻の通訳が必須で妻の負担が大きいんです」
「そうなんですか」
「ローザちゃん、また会える?」
ハナの言葉を通訳する。
「一緒に王都に来てほしいとクラリッサから連絡をもらっているので、そのうち行きますよ。私も妻もクラリッサに会いたいので楽しみなんです」
「ネルソンさんとクラリッサは?」
「私はクラリッサのおじいちゃんです」
マジか!?
「オスカルの姉がクラリッサの母親なんです。娘夫婦は仕事の関係で隣国にいるんですよ」
「そうなんですかー」
オスカル様が叔父さんなのは面倒くさいけど、イケおじなネルソンさんがおじいちゃんなのは羨ましいと思った。




