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第202話 再びドス・グラントへ

 裏山の果樹や温室、家庭菜園、田んぼ、コットン畑、ワイン用の葡萄棚、お茶畑を回って世話する合間にレーションの試作を続けることになったけれど全然進まない。


「毎日けっこう忙しいよね」

「そうだな、田んぼも野菜も世話しないと」

「レーション作りが進まないじゃん」

「冬の間のお楽しみにしておくさ」

「全然進まないのに焦っていないと思ったら、そういうつもりだったの」

「それくらいが丁度いいだろ」

「そうだね」

レーション作りは冬までお預けになった。



「話は変わるけど、ちょっとドス・グラントに行ってこようかと思っているんだ」

「織物が盛んな街のドス・グラントか?」

「そう。夏の服をお仕立てしたくて」

「俺も欲しい。みんなで行こう!」

「布は持ち込みしようよ」

「カナのオーガニックコットンは最高だよな」

「えへへ」



翌日には全員で出掛けることになった。


「みんな乗りましたね、出発しますよ!」

ドラゴン化したリザの背中に乗ってドス・グラントの近くまで飛んでもらった。そこから馬車で進むと2時間ほどで着いた。



 前と同じ宿を取って前と同じ小鳥の仕立て屋を訪ねた。

「いらっしゃいませー」

以前と同じカナリヤ獣人のみなさんが迎えてくれた。


「再びのご来店ありがとうございます!」

「抱っこ紐を使ってくださっているんですね!」

「かわいいです〜!」

今日もハナがモテモテだ。


「ハナのスリングも麻とかで夏用を仕立てたくて」

「お任せください!」

「私たちの夏服も仕立てたいんです、生地は持ち込みしたくて」

 オーガニックコットンの1番細い糸で織った柔らかい生地を出したら従業員のみなさんの空気が変わった。


「す、素晴らしい布ですね」

「滑らか…」

 ヤバいくらいうっとりしてる。大丈夫かな…。

「お任せください!」

「是非とも当店で!」

「どんなものをお仕立てしましょう!?」


やる気が溢れてちょっと怖い。

「家族全員の夏服を仕立てたくて」

「冒険者用も頼みたい」


 1人ずつ店員さんがついて希望をヒヤリングしてくれた。冒険者の夏の装備はバリエーションも少ないのですぐに決まって、私服は今回も町娘っぽいデザインで何着か作ることにした。


「カナさんは背も高くてスタイルが良いので思い切ったデザインもお似合いですよ!」

「私たちも腕がなります」

 営業トークに乗せられている自覚はあるけど気持ちよく買い物させてもらえて大満足だ。好みの色に布を染めるところからやってくれるというから嬉しくて堪らない。日本では考えられない贅沢だ。


「ハナちゃんの抱っこ紐は通気性重視、でも爪が引っかからない素材ということで難しいです」

「やはり麻がおすすめですが丈夫さも必要なので厚みはでます」

「それは仕方ないよね、可能な範囲でお願いします」

 結局、厚みのある布になった。お客の立場で好きなリクエストしたけど私が店員でも同じことを言うと思った。


注文を終えて雑談しているとニコニコな父さんが戻ってきた。


「ずいぶんご機嫌だね」

「こちらの皆さんは凄いんだ、俺の理想を形にしてくれる!」

ファンタジーな衣装を発注したようだ。

「どんなの?」

「ふふっ、出来てのお楽しみだ。お父さんに似合いすぎて驚くぞ!」



 リザと結婚して厨二病が完治したと思っていたけれど不治の病だったようだ。しかしファンタジーな町娘の衣装をノリノリで注文した自分も客観的にみたらこんな感じなのか…急に恥ずかしくなった。

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