第199話 初デートはダンジョン
「おでかけ?」
「そうだよ」
アルバロとデートすることになった。もちろんハナも一緒だ。
「うれしー!どこ行くの?」
デートといえば映画館やらアウトレットの商業施設やテーマパーク、夜景スポットなどが思い浮かぶだろうが、この世界にそんなものは無い。
「酒飲みのダンジョンはどうかな?」
「行きたい!」
ドーロにある酒飲みのダンジョンに行くことになった。
下層では鱈や鰯や小海老や腸詰やチーズ、干物などおつまみ系がドロップして、中層ではワインや蜂蜜酒やはちみつ、乾き物(塩味のナッツ)がドロップする。武器や宝石がドロップするフロアはスルーだ。
「じゃあドーロの近くまで転移するよ」
「そこからは車…じゃなくて馬車で移動?」
「うん」
問題なくドーロに到着し、ダンジョンに入った。
「下層は草原タイプのフロアだったよね?」
「チーズとお肉が出たよね」
どちらもハナの好物なので機嫌が良い。さっそく現れた魔物をハナが一撃で倒してゆくとバッファロー型の魔物から腸詰、ベーコン、チーズなどがドロップした。
「チーズいっぱいでたねー」
ハナが四つ足で器用にスキップする姿が可愛い。
「川も寄って行こうよ」
「うん」
槍を出して草原を流れる川にポップする魚や蟹やエビ型の魔物をザクザク刺すとアイテムボックスに干物やスルメ、魚介類が入ってきた。
「いっぱいドロップしたね!僕、今日の晩御飯に中華で食べたいなあ」
「じゃあ今日は中華にする?エビチリは絶対だよね、お魚は台湾風の蒸し魚にしようか。ネギと生姜とごま油のタレをかけて」
「いいね!」
「ハナには辛くないおかずだよね。ドロップしたお肉で回鍋肉と酢豚とよだれ鳥も作ろうか」
「うれしー!全部ハナの好きなやつ」
おしゃべりしながら中層に向かった。中層でもハナがグレープトレントを倒してドロップした葡萄をつまみ食いし、ナッツトレントを倒してドロップしたナッツをつまみ食いした。
「ぶどうもナッツもおいしー」
「良かったね。キラービーを倒してはちみつと蜂蜜酒も手に入れたいね」
「カナちゃん倒して!」
「はいはい」
はちみつも蜂蜜酒もハナの大好物だ。マッピングスキルを起動してキラービーの位置を確認、今回も氷魔法で凍らせて倒した。
「やったあ、ありがとカナちゃん」
中層もじっくり回って美味しいものをたくさん手に入れた。
「もう充分かな?」
「そうだね、ドーロの街をぶらぶらしてから帰る?」
「そうしようか」
デートっぽさを求めて一緒に街を歩いてみたがダンジョンのドロップ品を扱うお店が多かった。私たちは買う必要がないのでドーロの街歩きはすぐに終わった。
「帰ってご飯の支度しようか?」
「そうだね」
行きと同じく人目のない場所まで馬車で進み、転移で帰った。
「ただいまー」
「おかえり、どうだった?」
「たくさんドロップしたよ。今日はこれで中華にしたいんだ」
「それは良いな、手伝うぞ」
父さんとリザも手伝ってくれて4人で夕飯の支度をした。
「いいにおい…」
少し離れた場所でハナがフンフンする。
「ご飯も炊けたから食べようか?」
「うん!」
ハナの食器に回鍋肉と酢豚とよだれ鳥を盛り付けてやる。
「ありがとカナちゃん」
私はエビチリから…うん美味しい。
「おいしー」
「美味しいね」
ダンジョン産の食品は大ぶりで味も良い。
「カナちゃん、甘い蜂蜜酒のみたい」
「ソーダで割ろうか」
「うん」
薄めずに飲んだらあっという間に酔いが回ってしまうのでハナの蜂蜜酒はソーダ割にする事になっている。
「どうぞ」
「ありがと」
甘い蜂蜜酒が中華に合うか分からないがハナが喜んでいるからオッケーだ。
「甘くておいしー」
「良かったね」
アルバロとのデートのはずが、いつものようにハナとラブラブなカナだった。




