第195話 オープン稲荷
テリヤキのランチタイムの手伝いを終えて全員で休憩に入った。
「この様子だと稲荷寿司を限定メニューに加えるのは先になりそうか?」
「はい。新しいスタッフを雇う計画があるんです。長吉と小雪、登喜男、千歳、茶々丸、忍が交代でオムライスの新しい店舗を回して、新人スタッフにはこっちで経験を積んでもらおうという計画です」
「一緒に働き慣れたメンバーなら新しい店舗も上手くやれそうだな」
「はい。オムライス専門店は内装も食器も家具も良いものを揃えて具材やソースもリッチにします。持ち帰りも無しの高級路線の予定です」
「作るのも手間だもんな、客数を絞るのはいいと思うぞ」
「オムライス専門店が開店したらこちらの限定メニューから外す予定です」
「落ち着いたら稲荷寿司か?」
「はい。稲荷寿司は作り置きもできるし持ち帰り向きなので持ち帰りでの需要に期待しているんです」
「それでな、ちょっと作ってきた」
父さんがインベントリからオープン稲荷を出した。酢飯を詰めた稲荷寿司のお揚げの口を開けて整えて彩り豊かな具材を乗せたご馳走っぽい稲荷寿司だ。
「わあ!」
「綺麗ですね」
「これは人気になりますよ!」
「ゆで海老と枝豆、鶏そぼろと錦糸卵、鮭フレークときゅうり。割となんでも合うから材料を揃えやすいものを乗せるといいんじゃないか。2色くらいあると華やかで見た目が良い。まずは味をみてくれ」
「ハナ、鮭がいい!」
「おれ肉!」
「はいはい。こぼれやすいから手づかみでどうぞ」
ハナと狐太郎君に取り分けてやる。
「おいしー」
「おいしー」
ハナと狐太郎君がハモって可愛い。
「美味しいです!」
「お肉もお魚も合いますね」
従業員の皆さんにも好評だ。
「こっちも試してくれ。見た目は普通の稲荷寿司で中のご飯を変えてある。裏返しは五目で三角は柚子風味だ。上に具を乗せずにオープンにして中が見えるようにしてもいい。いろんな組み合わせができるぞ」
「これも美味しいです。全部美味しいです」
「柚子の香りがいいですね、1番好きです」
みんな好みがバラバラだけど苦手なものは無いらしい。気に入ってもらえて良かった。
具を乗せないオープン稲荷の中身は栗ご飯、梅ひじき、筍ご飯、豆ご飯、お赤飯、山葵、高菜じゃこ。全部オープンにして並べると中身が色とりどりできれいだ。
みんなでキャッキャしている横で桃吉さんと巽が頭を抱えている。
「巽はどうしたの?」
「どうしたのって…そりゃあ頭を抱えるよ。絶対に人気になるじゃん!作り置きできる稲荷寿司は持ち帰りで少し出るくらいって見積もっていたけど計算違いもいいところだよ。イートインもやらなきゃ!専門店化待った無しだよ」
「でもお米は受け入れられないって言ってたじゃん」
「その見込みが外れそうな予感がビンビンなんだってば」
「そうなの?」
巽と桃吉さんが肯いた。
「いいな!ヒノヒカリは粒がはっきりしててオムライスに合うんだ。冷めても美味いミルキークイーンは稲荷寿司に向いているから巽君たちのお店に売るのはヒノヒカリとミルキークイーンだ!」
父さんが生き生きし始めた。
「カナ、帰ってミルキークイーンを追加で植えよう。今年の秋の収穫が楽しみだな!」
…もう少しゆっくりしたかったのに日帰りで我が家に帰って田植えを手伝わされた。




