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第192話 錬金ギルドと食パン型

 パン・ド・ミーの型を卸しにきた。

たいした用事じゃないのに錬金ギルドマスターのホセさんが自ら接客してくれて恐縮だ。先日もポーション類を高く買ってくれて期待されているのかも知れないが今日は些細な納品なのだ。


「巽という妖狐の商人が買いに来るのでよろしくお願いします」

 一般的なサイズの型、山型、牛乳パックサイズの型、丸いトヨ型を多めに降ろした。多いかなと思ったけど足りないよりもいいだろう。


「テリヤキの共同経営者の方ですね」

「ご存じでしたか」

「週に一度は通っているんですよ」

「美味しいですよね、照り焼き」

「これはテリヤキ関係ですね?」

ホセさんの目が光る。


「たぶんテリヤキのお店で提供される新しいメニューに関係すると思います」

「肉の種類とトッピングでバリエーションは豊富ですし、いくら食べても飽きないくらい好きなんですが、あの店なら新しいメニューも楽しみです」


「ドス・グラントでレシピを販売したものなんですが、良かったら錬金ギルドの皆さまでどうぞ」

 錬金ギルドにクッキーを差し入れで置いてきた。いちごバターを挟んだクッキーを巽のお店で販売予定と聞いたので事前にクッキーというものが知られると売れ行きに影響すると期待してのことだ。



「今日もこたくんに会える?」

 錬金ギルドを出るとペットスリングの中のハナが聞いてきた。

「そうだよ、父さんが教えに行ってるからね」

 昨日はケチャップを教えたので今日はオムライスを教えるらしい。



 テリヤキのお店の裏口をノックするとウェイトレスの雪美ゆきみちゃんが開けてくれた。


「こんにちはカナさん、ハナちゃん。長吉さんと小雪こゆき千歳ちとせと茶々ちゃちゃまるしのぶ登喜男ときおがレッスン中なの。福子ふくこ源治げんじ小町こまちと私は狐太郎と遊んでるとこ」

 雪美ちゃんに案内された裏庭で狐太郎君がボール遊びをしていた。


「こたくん!」

 ペットスリングから飛び出したハナが狐太郎君の方へ走ってゆく。

「ハナちゃん」

 お鼻とお鼻をくっつけてご挨拶。


「ハナも一緒に遊んでもらってもいい?」

「大歓迎ですよ!」

 雪美ちゃんたちに任せてキッチンへ向かう。



「ああっ!破れちゃいました」

「これは難しいですね…」

 基本のオムライスに苦戦しているようだ。


「こんにちは」

「カナさん!」

「難しいですね、オムライス」

「たんぽぽオムライスとドレス・ド・オムライスは全員問題なく作れるぞ」

「それは凄いね!」


「それぞれ最初は10食限定で出そうと思っているんだ。人気が高まったら専門店化するから」

「そうなったら中身をチキンライス以外のメニューも作るといい」

「白いご飯ですか?」

「シーフードピラフとかドライカレーとかあるだろ?」

「シーフードピラフとかドライカレーって何ですか?」


「それも教える必要があるか…」

「新たな契約もクラリッサに頼みましょう」

 ため息混じりの父さんと嬉しそうな巽。お店が成功する自信があるのだろう。


「上に掛けるソースも季節限定とかいろいろ出来るぞ」

「ああ、それは良いですね!」

父さんと長吉さんが盛り上がる。



「パンの型を錬金ギルドに卸してきたよ」

「ありがとう。買っておくよ」

「オムライスは練習する時間が必要だから次はパンといちごバターとクッキーの講習をお願いしてもいいかな」

「うん」


 パンとクッキーといちごバターを教えるのは雪美ちゃんと福子ふくこさんと源治げんじさんと小町こまちさん。みんな給仕も調理も出来るスタッフらしい。頼もしいな。



 その日の夜は合コンでお邪魔したヘンリクさんのお店に集まった。今日は狐太郎君も一緒だ。


「カナは巽の店の講習が終わったら東の秘境に戻るの?」

「うん。田植えがあるから」

「リオさんとカナのお米、すごく美味しいよ。賄いで出したらうちのスタッフ全員どハマり」

「じゃあ頑張って作らないとね」


「淋しくなるわ」

 クラリッサとエステルがハナを抱っこして撫でて別れを惜しむ。


「ダンジョンも東の秘境の魔物も放っておけないし」

「もし長期間放置したらどうなるの?」

「溢れて近くの街を襲うと思う。1番最初に襲われるのはローレかな」

「ひいおじいちゃんがいる街じゃない!」

「カミロさんはローレの冒険者ギルドの職員だから真っ先に…」

「やだ!私ひいおじいちゃん子なのよ、淋しくても我慢するわ。カナも怪我しちゃだめよ」


 魔物退治のために精をつけろとクラリッサが追加注文した料理をたくさん勧められた。クラリッサはけっこう可愛い性格だ。

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