第189話 巽の両親と狐太郎
ハナを連れて錬金ギルドに来た。
冬の間に作った骨密度ポーションや美肌ポーションを売るのだ。
「カナさん、お久しぶりです」
ギルドマスターのホセさんが揉み手で出迎えてくれた。食品用ラップやジッパー付き袋が順調に利益を出しているせいだと思う。
「今日は冬の間に錬金したポーションなんかを買い取ってもらいたくて」
石化解除ポーション、再生ポーション、アロエの軟膏やマリーゴールドの軟膏、骨密度ポーションや美肌ポーションを2〜3本ずつ出した。
「これはまた貴重なものがたくさん…」
「買い取り可能ですか?」
「はい」
「じゃあ全部出しますね」
「それではあちらでお願いします」
指定されたテーブルに並べた。
「凄い量ですね」
「預けていくので預かり証をください」
「少々お待ちください」
預かり証を持って錬金ギルドを出て巽と狐太郎君のいるお店に向かった。
「たっくん!」
ハナが巽に駆け寄る。
「ハナちゃん!」
「こんにちは、早速来ちゃった」
「嬉しいよ、狐太郎は奥にいるんだ」
案内されて奥に行くと狐太郎君がボール遊びをしていた。ボールを投げているのは巽のご両親だ。
「こたくん!」
ハナが駆け寄ると狐太郎君もハナに気づいた。
「ハナちゃん!」
狐太郎君も駆け寄って2人でお鼻をちょんとくっつけ合った。
「遊びに来てくれたの?」
「うん!」
「尊い…」
巽と巽のご両親が心臓を押さえていた。気持ちは分かる。
「カナさん!」
「ありがとう!」
我に返った巽のご両親に手を握られた。
「帰宅した狐太郎が走ってジャンプして抱っこされてくれたのよ」
「狐太郎が元気に走り回って…夢のようですよ」
「完全には治っていないんです…」
「聞きましたよ。でも充分です」
「ええ。最高級ポーションでも治らなかった痛みが消えたなんて凄いことですよ」
「それに私たちが家族ですもの」
「一晩中魔物から逃げ回るようなことはもう無いからな」
もう山には帰らない、巽たちが家族だから。という話を聞いたのだろう。
「じいちゃん、ばあちゃん、おれとハナちゃんにボール投げて!」
巽が通訳するとご両親はボール投げに戻っていった。ハナまで遊んでもらってありがたい。
「カナお嬢さん、お茶をどうぞ」
振り返ると以前、巽のご両親を仕事に引きずっていった方だった。
「ありがとうございます。豆助さんとお呼びしても?」
「はい。私からもお礼申し上げます。痛々しく脚を引き摺っていた狐太郎さんが走り回る姿をみて従業員一同、感謝しております」
「温泉が効果あってよかったです」
「それだけではないでしょう?最大限に効果を発揮するよう試行錯誤してくださったのでしょう?」
「まあ、そうですね」
「今週は旦那様と奥様を大目に見ようと思っているんです」
「豆助さん?」
「来週からは朝から夕方まできっちり働いてもらいます。孫狐とのボール遊びは来週からは休日だけのお楽しみですよ、うふふふ」
豆助さんがやり手なことはよく分かったし敵に回してはいけない人だと理解した。




