第183話 ハナの腹痛
ハナが青い顔でひっくり返っている。
「鑑定してみたよ、状態異常に食べすぎって出てる」
フルーツを食べ過ぎて気持ちが悪くなったらしい。
「ハナは賢くていつも自分の適量を分かっているけど今日は楽しくて食べ過ぎちゃったのかな」
「…うん」
「分かるわ…」
「私も…」
「僕らも食べすぎちゃったもんね」
クラリッサとエステルと遠野と狐太郎君がお腹を押さえている。巽は狐太郎君の世話に忙しくて食べすぎなかったようだ。
「ただの食べ過ぎなら温泉に浸かってくるといいよ。治療が必要なら治癒魔法を掛けるね」
「温泉にしとくわ」
「私も」
「僕も」
全員が温泉に行ったのでハナと私が残された。なんともない巽とアルバロと父さんとリザも狐太郎君の治療のために一緒に温泉に向かった。
ぎゅるぎゅるぎゅる…。
ハナのお腹から不穏な音がしたのでハナを連れてトイレに向かった。
「もっと出そう?」
「もうでない」
「すっきりした?」
「うん」
浄化して治癒魔法を掛けたらハナのお腹は落ち着いた。
愛犬時代からお腹を壊すと悲しそうに甘えてくる子だったけど熊になっても変わっていなくて可愛い。
「おいしくて楽しかったの」
「そうだね、私も楽しかったよ」
ごろごろして甘えていたが散歩に行きたがったのでお散歩ダンジョンに行ったら、腹痛の鬱憤を晴らすかのように魔物を倒しまくった。
散歩を終えて裏山温泉に戻ると厨房が賑やかだ。
「ただいまー!」
「ハナちゃん!」
「もう具合はいいの?」
「うん」
クラリッサたちが厨房で父さんとリザを手伝っていた。
「リオさんのお料理は美味しいだけじゃないのね」
「食べすぎた時の対処法まで教わっちゃったわ」
「野菜スープで食物繊維やカリウムを摂取してむくみや老廃物の排出を促して、エネルギー代謝を促進するために高タンパクで脂肪の少ない赤身肉がいいんだって」
全員一人暮らしで自炊しているので包丁使いも慣れたものだ。
「いいにおーい」
ハナが遠野の足元でフンフンする。
「リオさんの指導で作った野菜スープだよ」
「パパのスープ大好き」
ハナと遠野の間を通訳した。
「リオさん、大根もっとすりますか?」
「大根おろしは充分だな、じゃあ肉を焼いていくか」
父さんがフライパンを手に取る。
「常温に戻した牛肉に塩胡椒、フライパンに油をひいてにんにくスライスを火に掛ける。にんにくに火が通ったら取り出しておく」
「お腹が空く匂いだな」
「本当ね」
「フライパンで肉を焼いていく。焼き目がついたら中火で両面をじっくり焼く。焼き上がったらにんにく、大根おろしを乗せて俺の手作りポン酢をかけたら大根おろしステーキの完成だ」
「美味しそう!」
「さっそく食おう」
みんなで運んでいただきます。
「美味しい!」
「お肉がさっぱりしてる!」
「大根ってお肉に合うんですね…」
父さんのおろしステーキは大好評だった。
「おいしー」
「おいしー」
ハナと狐太郎君がハモった。
「スープもおいしいよ」
「ハナがスープも美味しいって」
クラリッサたちに通訳した。
「嬉しいわ!」
「狐太郎と巽には治療に専念してもらってクラリッサとエステルと僕で作ったんだ」
「リオさんに教えてもらったのよ」
「3人とも手際が良かったな、作った翌日はもっと美味いぞ」
王都に帰ったらこのスープを家でも作ると盛り上がっている。狐太郎君の治療も進んでいるし今日も良い日だった。




