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第181話 回復の兆し

 翌朝、私がクラリッサとエステルの部屋を、アルバロが巽と遠野の部屋を回った。


「だるい?」

「…だるくて眠いわ」

「マッサージで悪い部分が改善されると反動で体のだるさや眠気が出るの。すっきりするまで眠ってね。お水とフルーツを置いておくから食べられそうなら食べてね」

「…ありがとう」


 無理して起きないよう言って部屋を出る。エステルもクラリッサもしばらく起きないだろう。


 厨房に戻るとアルバロが狐太郎君を抱っこしていた。

「巽も遠野も眠いって。無理して起きないよう伝えたよ。狐太郎は起きてたから連れてきた」

「おはよう狐太郎君、今日も温泉で治療しようね」

「ありがとう」

「まずは朝ごはんだね、お腹は空いてる?」

「うん!」


 人数が少ないので家族部屋のこたつで朝ごはんにした。


「今日の朝ごはんは和食だ。狐太郎君には稲荷寿司もあるぞ。ハナちゃんには鮭な!」

しゃけ!」


 焼いた鮭に大根おろし、だし巻き卵、おひたし、お味噌汁。

ハナと狐太郎君には小さな鮭のおむすびと稲荷寿司でワンプレートにしてある。


「おいしー」

「おいしー」

 ハナと狐太郎君の『おいしー』がハモって可愛い。


「巽が寝てるから私たちと一緒に温泉だけど大丈夫?嫌じゃない?」

「ちょっと淋しいけどカナちゃんもハナちゃんも好き」

…可愛い。ハナも喜んでいるし招待してよかった。


「まずは鑑定させてね。晩御飯の後、また温泉に浸かって治癒魔法も掛けたけど痛みはぶり返していない?」

「へいき」

「そっか。じゃあ鑑定するね」

「うん」


『後遺症 鑑定』で狐太郎君の身体がサーモグラフィーのように色付きで見える。


「あれ?」

特に酷かった左後脚と背中の赤い色が薄くなっている。

「父さんとアルバロにはどう見える?良くなってると思う?」


「良くなってるね」

「俺の見立ても同じだ」


「よかったね、こたくん」

「ありがとうハナちゃん」

狐太郎君の尻尾が嬉しそうに揺れる。


「午前中は私とハナとリザと一緒に入ろう?午後には巽が起きてくると思うから」

「うん!」


 良くなると分かったので全員のモチベーションが急上昇だ。休憩を挟みながらクサツの湯に浸かった。

リザがハナを抱っこして私が孤太郎君を抱っこしながら治癒魔法をかけている。孤太郎君の目が気持ち良さそうに細くなって可愛い。


「カナさん、私の腹時計がそろそろお昼だと言っています」

「そうなの?あがろうか」

 ハナと狐太郎君を一瞬でサラッと乾かして大広間に行くと父さんとアルバロが待っていた。


「昨日、巽たちがマッサージしている間に治癒魔法をかけ続けたのが良かったのかもしれないからクサツの湯に浸かりながら治癒魔法をかけていたんだ」

「へえ、鑑定してみてもいい?」

「うん」

 狐太郎君の許可が出たのでアルバロが鑑定した。


私も便乗鑑定した。

── サーモグラフィーの赤い部分が朝より減って薄くなっているように見える。


「良くなってるよね?」

「僕もそう思う」

「午後もクサツの湯と治癒魔法だな」


「ありがとう」

「よかったね」

「うん」


「巽君たちの分はインベントリに入れてあるから飯にしよう。たくさん食えよ、治療には体力も必要だからな!」


 お昼は父さんが勤務していたホテルのランチバイキングを再現したものだった。白身魚のムニエルとローストビーフ、パン、サラダ、スープが食べ放題だ。いろんな食材を使って、みんなの苦手な食材や好みを探るつもりとみた。


「パンはカナが焼いたんだぞ」

「カナちゃんのパンおいしいよ」

 父さんとハナがパンを推してくれてちょっと恥ずかしい。


 今日のパンはクロワッサン、バゲット、オリーブのチャバタ。パン・オ・フロマージュはチーズのパン。クロワッサンにアーモンドクリームを乗せて焼いたクロワッサン・オ・ザマンド、ブリオッシュに砂糖と発酵バターをのせて焼いたブレッサンヌシュクルだ。


「好きなだけおかわりしてな!」

 ハナと狐太郎君にワンプレートで盛り付けてくれた。父さんはすでに狐太郎君の食べる量を把握したようだ。


「おいしー」

「おいしー」

お昼もハナと狐太郎君がハモった。



「ふう、おいしかったー」

「お腹いっぱい」

 ハナと狐太郎君がお昼寝したので布団に寝かせて毛布をかけた。温泉で疲れたのだろう。寄り添って眠る姿が可愛い。


「寝てる間に治癒魔法をかけても問題ない?」

「大丈夫だよ」

 アルバロのお墨付きをもらえたので父さんと2人がかりで治癒魔法を掛けていると巽が起きてきた。


「お世話になってるのに寝坊しちゃってすみません…」

「すっきりするまで寝ててって言ったじゃない、鑑定!」

巽が悪い子なので許可なく鑑定してやった。


「起きてきちゃダメじゃん!倦怠感(軽度)って状態異常が出てるよ」

「狐太郎が気になって寝ていられないよ」

「その気持ちも分かるけど…。狐太郎君と一緒に寝る?」

ハナと狐太郎君が寄り添って眠る布団を指差す。

「…それは恥ずかしいから許して」


「巽さん、お茶をどうぞ」

「ありがとうリザさん」

「食欲は?」

「あんまり…」

「じゃあ飲みながら聞いてね。今朝、狐太郎君を鑑定してみたら少し良くなってるみたいだったの。それで午前中は私とクサツのお湯に浸かったの。今はお昼ご飯を食べたら寝ちゃったから父さんと2人で治癒魔法をかけていたところ」

「ありがとう」



 完治は無理でも普段の生活で痛みを感じなくなるまで治療を続けたい。なんだったら巽だけ先に帰ってもらおう。

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