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第179話 温泉の狐太郎

「傷に効くのはクサツのお湯だよ」


 アルバロに勧められて巽が狐太郎を抱いてクサツの湯に浸かる。


「あったかーい」

狐太郎の目が細くなる。


「痛かったり変な感じはしない?」

「しみてくるのが気持ちいい」

「染みるってのはお湯の魔力か?」

「狐太郎は魔力が分かるのかい?」

「うん。カナちゃんとおじさんの魔法はあったかいよ」

 巽と狐太郎のほのぼのな会話に遠野とリオとアルバロも笑顔になる。遠野にはアルバロが通訳するので時差があるが問題ない。


「鑑定してみてもいいか?」

「うん」


「……アルバロ、どう思う?」

「わずかだけど効果はあると思う。カナやリオの治癒魔法も効いていると思うんだけど、それ以上に傷が深かったんじゃないかな」

「そうか…」

「この砂時計の砂が全部落ちたら、また鑑定してみようよ。どのくらい効果があるのか見えるかも」

「そうだな」


「狐太郎の為にありがとうございます」

「礼には及ばんぞ、気持ちはよく分かる。ハナちゃんが怪我でもしたら俺は大騒ぎだ」

 巽と遠野が『分かるー!』と言わんばかりの表情で肯いた。


「蟹…」

アルバロがボソッとつぶやいた。

「あ、あれは本当に小さかったんだ!」

焦るリオ。


「蟹がどうかしたんですか?」

「ハナがリオとリザの釣りについていって浜辺で遊んでたらしいんだ。そこで蟹に興味を持って前脚でちょいちょいしてたら挟まれちゃったんでしょ?」

「もちろん走って駆けつけたぞ。全力疾走だ。ハナちゃんのお手手てては最高級ポーションで治療した」


「そのあとこんなに小さな蟹に大騒ぎしたって揶揄からかってハナに嫌われてくちもきいてもらえなかったんだよね」

「連日ハナちゃんの好物を作って機嫌をとった」


「リオから見たら小さな蟹でもハナから見たら小さくないってカナにも怒られてたんだ」

「ああー」

「それはー」

 巽と遠野がそれはダメだなと言いたげな表情になった。ぬいぐるみサイズのハナとムキムキなリオとでは感覚が違うだろう。


 気まずくなったところで砂時計の砂が全部落ちた。

「鑑定してもいいか?」

「うん」


「………まだ分からないな」

「休憩しながら何度も入ろう」

 アルバロの提案でぬる湯に浸かったり水を飲んだり休憩しながらクサツの湯に浸かった。


「おいしい!」

「甘いですね!」

「この建物の近くで栽培しているんだ。たくさんあるからもっと食え」

 狐太郎と巽と遠野が紅まどんなを気に入ったようなのでリオがどんどん勧める。



「狐太郎君、次はおじさんと一緒に入らないか」

「うん!」

休憩の後で誘うと狐太郎が大人しくリオに抱っこされる。


「ああ…可愛いなあ」

リオが狐太郎を優しく撫でる。

「ハナちゃんにパパと一緒に入ろうと誘ったら『やだ。ハナは女の子だから』って断られたんだ」

リオが大きな身体をしょんぼりさせる。


「ハナちゃんは女の子らしい性格ですもんね」

「ハナちゃんらしいですね」

 巽も遠野も混浴を断られても仕方ないと言いたげな表情だ。


「どうせハナちゃんは一年中、全裸じゃないかって言いそうになったけど奇跡的に寸止め出来た」


「リオさん…」

「…寸止めできて良かったですね」



 もしも声に出していたらリオとハナは未だに冷戦状態だったかもしれない。

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