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第178話 温泉のクラリッサとエステル

 お昼の後、部屋を決めてもらって荷物を置いたら温泉だ。


「男湯の案内は任せるね、クラリッサとエステルは私とリザと一緒ね」


「カナちゃん、ハナ先に入ってるねー」

ハナが湯船に向かって駆けてゆく。


「先に身体を洗うのがマナーなんだ。洗ったら好きなお湯に浸かってね、お湯によって効果が違うから」

「私はニュウトウオンセンキョウ一筋ひとすじです」

リザは今日も成人病の治療をするらしい。


 身体を洗い終わって振り返るとハナがスカユの湯船のフチに両手でつかまっていた。

「ハナちゃん可愛いわ」

「気持ちよさそうなお顔ねえ」

私も一緒につかってハナを抱き寄せる。



「クサツのお湯は強力な殺菌力で傷の治療に効果があるんだ。弧太郎君につかってもらいたいのはクサツね。あっちはゲロ。泉質はアルカリ性で無色透明、まろやかなお湯がお肌を絹のようにスベスベにしてくれるよ」

「へえー」

エステルとクラリッサはゲロに興味があるようだ。


「リザが浸かっているのはニュウトウオンセンキョウ。高血圧症、動脈硬化症、皮膚病、糖尿病なんかに効果があるよ」

「凄いのねえ」


「向こうはタマツクリ。お肌に潤いを補給して肌理を整えて美しい肌色になる美肌の湯。化粧水みたいなお湯が沸いてるよ」

エステルとクラリッサの目の色が変わった。


「ここはスカユ。強い酸性のお湯が特徴で神経痛、リューマチ、皮膚病、婦人病なんかに効果があるんだ」

「婦人病に効果があるの?」

「エステル、どこか悪いの?」

「病気ってほどじゃないんだけど冬は不調なのよ」

「鑑定してみてもいい?」

「お願いするわ」


「鑑定…確かに病気じゃないけど注意報みたいな感じがする」

「そうなの?」

「治癒魔法を掛けてみてもいい?」

「お願い!」

「いくよー」

「…カナの魔法ってあったかいのね、お腹がほこほこするわ」

「もう一度鑑定してみてもいい?」

「ええ」

「注意報が消えたみたい」

「嬉しいわ!ありがとう」


「カナ、私もお願い」

「はーい」

「クラリッサは異常なし。クラリッサは鑑定も治癒も出来そうだけど」

「多少はできるわよ、だから疲れた時は自分で癒すの。でも誰かに癒やしてもらうのって気持ち良いのよね」

「それは分かるわ」




「のぼせる前に出てね、すぐ外の湯上がりラウンジに冷蔵庫とマッサージチェアがあるからね」

「分かったわ」

「ありがとう」


 エステルとクラリッサが全部のお湯を試しに行ったので犬かきで泳いだりへそ天でぷかぷか浮かんだりハナに自由にさせた。


「ハナ、あっつくなっちゃった」

「あがろうか」

「うん」

 ハナと自分を魔法で乾かしたところにクラリッサとエステルもあがってきた。


「湯上がりはこれを着てね」

オーガニックコットンの浴衣と半纏を渡す。


「肌触りが柔らかい…」

「この布も凄いわ!ふわふわで雲みたい」

「これはタオル。うちのコットン畑で採れた綿で作ったんだ」

「カナ!」

 クラリッサの目が電卓みたいになった。ちょっと怖い。


「販売は無理。一枚作るのに時間がかかるから需要に応えられないの」

 680万円の中古の機械は安物扱いでタオル一枚作るのに結構な時間がかかるのだ。

「残念だわ…」


「ほらほら湯上がりラウンジに行こうよ。2人ともお水をたくさん飲んでね。これはこの山で栽培しているみかん、甘くて美味しいよ。この椅子はマッサージチェア、よかったら身体をほぐしていって」



「お水が美味しいわ!」

「みかんもおいしいよ、ハナの好きなやつ」

ハナがみかんをむいて口に運ぶ。


ぱくん。

「おいしー」


 ハナの言葉を通訳するとエステルとクラリッサもみかんを手に取る。

「美味しい!」

「甘い!」

 2人が嬉しそうで私も楽しい。招待してよかった。


「この椅子はどうやって使うの?」

「ここに座って、頭をあずけて足はここに乗せて。この棒で操作するの」

 スティック状のリモコンはこの世界に相応しい魔道具っぽくなっている。

「人体の絵が描いてあるでしょう?背中のボタンを押すと背中のマッサージが始まるよ」


 エステルが背中のボタンを押すとマッサージチェアが動き出す。

「ゴリゴリしてくれるのね」

「下の方のツマミで強弱を調節できるよ」

エステルがツマミを動かす。

「本当だわ!あ、ちょっと痛い」

エステルがツマミを弱に戻した。


「さっき鑑定して気づいたんだけどエステルは立ち仕事だから足に疲労が溜まっているみたい。まずは最弱で足のマッサージをおすすめしたいんだけど」

「仕事終わりはいつも足が痛いのよ」

「じゃあ足のボタンを押してみて」

エステルの足がフットマッサージャーに包まれ、ゆっくりと揉みほぐされる。


「ふくらはぎが気持ち良い…」

「足裏は効果あり過ぎるかもしれないけど慣れると癖になるよ」

エステルが足裏のボタンを押した。

「ちょ!なに!これ!…あ?うん?気持ち良い?あ、そこは痛い!」

「足の裏は内臓とかに繋がってて押して痛いところは悪いんだよ」

「いた、いたたたたたた!あ、そこは気持ち良い。うそ!やっぱり痛い!」


「エステルがうるさいわね、私も試すわ」

 クラリッサもフットマッサージャーのボタンを押したようでクラリッサの足もフットマッサージャーに包まれた。


「ふくらはぎが気持ち良いわ…」

 ふくらはぎのマッサージを堪能したクラリッサが足裏ボタンを押した。

「あら?あらあらあら?気持ち良いみたい…いだだだだだ!ちょ!そこは!痛い!あだだだだだだだ!」


クラリッサもうるさかった。

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