第176話 王都の友達と再会
王都の家から魔法陣で我が家に帰って掃除をしているうちにお昼になったので魔法陣で王都の家に戻った。
「今日は巽が経営するカフェで昼ごはんを食べてくるから」
「皆さんを裏山温泉にお誘いしてな!狐太郎君の治療は早い方がいいからな」
「うん。全員休めるといいんだけど」
父さんに送り出されて約束のカフェに向かうと案内された個室に遠野が来ていた。
「久しぶりだね!」
「とのくん!」
ハナが遠野に向かって駆け出した。
「相変わらず可愛いなあ、ふわふわ!」
遠野がハナを抱き寄せて優しく撫でてくれてハナも寄りかかって甘えている。
「王都に来たばかりなんだって?」
「一昨日着いて、昨日は朝から冒険者ギルドで午後は狐太郎君のことでいろいろ」
「僕まだ狐太郎に会ってないんだよ」
「可愛いかったよ。ハナと狐太郎君が2人で寄り添ってると胸が苦しいくらい」
「へえー」
「カナ!ハナちゃん」
エステルもやってきた。
「テルちゃん!」
ハナがエステルのお膝に移動した。
「今日も可愛いわね」
「えへへ」
ハナがエステルに甘える。
「お待たせ!遅れちゃった?」
クラリッサと巽が同時に現れた。
「私たちも今来たとこ」
「よかった。ハナちゃん抱っこさせて」
クラリッサがエステルからハナを奪ってモフりまくる。狐太郎君は巽のお膝の上だ。
「まずは注文しちゃおうよ、みんなお腹空いてるでしょう?」
「カナはこのカフェは初めてよね?」
「うん」
「テリヤキっていうメニューの専門店で人気なのよ」
「ハナ、テリヤキ大好き」
「ハナちゃんはテリヤキを知ってるの?」
「パパとカナちゃんがよく作ってくれるよ」
「お店に入った時から甘辛い匂いでお腹が空いちゃった。たぶん我が家の照り焼きと同じだと思う」
「カナたちはミソもウドンも食べるしハイヒューマンと妖狐の食文化って似てるのかな」
「妖狐に会ったのは巽が初めてだから断言できないけど似てると思う」
「ここはテリヤキの肉をパンに挟んだ専門店なんだ。肉の種類とトッピングを選んでね」
「ハナ、チキンとオムレツがいい」
「ハナちゃんはチキンのテリヤキでトッピングにオムレツね。このくらいの大きさなんだけど少し小さく作った方がいいかな?」
「ハナ、その半分でお腹いっぱい」
「ハナちゃん、おれと半分こしようよ」
「うん!」
ハナと狐太郎君が半分こすることになった。
「尊い…」
巽がまた心臓を押さえた。
「全員の注文が通ったよ、先にサラダとスープをどうぞ」
サラダは冬野菜がたっぷりでスープも具沢山だった。これは人気になるわ。特に女性客に受けそう。
「相変わらず美味しいわ」
「並ばずに座れてラッキーだったわ」
予想通りクラリッサとエステルから高評価だ。
時間をおかずにテリヤキもきた。やはり馴染みの味の照り焼きだった。
「おいしー」
「おれも好き」
ハナと狐太郎君がテリヤキサンドを両手で持って頬張る姿にキュンだ。
「今日は私が誘いたかったんだ。みんな1週間くらい休める?」
「なにかあるの?」
「狐太郎の治療にカナの家にある温泉が効果あるかもしれないって話なんだ」
「裏山の温泉は宿泊施設っぽく作ってあるから是非ご紹介しなさいって父さんが張り切ってて」
「温泉って?」
「魔力を含んだお湯が涌いてて、うちのリザが何度も浸かって病気を治したの。怪我に効果があるお湯もあるんだ」
「狐太郎の治療に繋がるならって藁にも縋る気持ちで厚かましくもお邪魔させてもらおうと思ってて」
「私に王都の友達ができたって父さんが大喜びなの。しかも長命種族の友達なら一生の友達だから父さんが心を込めておもてなししたいって」
「カナの家って…」
「東の秘境だけどドラゴン化したリザに乗っていけば3時間くらいで着くよ。家の周りはリザやハナの気配が濃くて魔物もあまり寄ってこないから普通の田舎だよ。リザは竜人族で冬の間に父さんと結婚したんだ」
たまに肝試し感覚でやってくる魔物がいることは黙っておくことにした。
「東の秘境を安全に旅するチャンスですって!?」
「休むわ!大丈夫、この時期は暇なのよ」
クラリッサとエステルは決まりだ。
「遠野はお店があるから難しいかな?」
「それがさ、一昨日から店の隣の家の建て替え工事が始まったんだけど資材が崩壊して店の入口が破壊されちゃったんだよね…営業停止中なんだ」
今日も暇すぎて早くカフェに着いてしまったらしい。
「狐太郎君の治療は早い方がいいから出発可能な1番早い日程で調整しようか」
2日後に出発することになった。




