第171話 冒険者ギルドで売却
翌日は朝から冒険者ギルドに来た。窓口には前回も買い取りでお世話になったゼカさんがいた。
「こんにちは」
「クラーケンの!」
「覚えててくださったんですか?一度しか来ていないのに。パーティー名はカルピオです」
「クラーケンは印象的ですし従魔さんが可愛いから忘れませんよ」
ハナが可愛いと褒められて嬉しい。
「冬の間ずっと領地にこもっていたんだがドロップ品が溜まっているんだ」
「魔石はローレであるだけ売っちゃったから魔物とかドロップ品の買い取りをお願いします」
「ローレから各地に送られた魔石はカルピオパーティーの皆さまのものでしたか!多くの街が助かりました」
「役に立ったならよかったです」
「買い取りですよね、倉庫でないと出せないものもありますか?」
「あると思う」
「ではあちらでお願いします」
「久しぶりだね」
ゼカさんに案内されて倉庫にきたらギルドマスターのパルミラさんが買い取り推奨のドロップ品リストを持ってきてくれた。
「ここからここまで鉱物だね、この辺は宝石だから私が出すね」
鉱物と宝飾品をどんどん出したらゼカさんが応援の鑑定士を連れてきた。
「まだまだ武器とか防具、魔道具もあります」
「見せていただいても?」
「今日は預けていってもいいか?待たされたらハナちゃんが飽きる」
「では預かり証を用意しますね」
総出でリスト化してくれた。
「鉱物と宝飾品、付与付きの装備品、武器、防具、回復アイテムやスキル獲得スクロール。すごい数ですね!」
「鑑定に何日か時間をいただけますか?」
「大丈夫です」
「中古の家を買ったから遣いをくれたらまた来る」
住所を教えたら結構近いですねと言われた。
「次は魔物を出すよ」
アルバロの言葉を聞いてギルドの酒場に避難することにした。
「私とハナは出てるね」
「う、うん」
「魔物が終わったら呼んでね、ハナちゃん酒場に行ってみようねー」
カナがさっさと出て行った。
「…カナ?」
リオがポカンだ。
「魔物は全部、僕が収納しているんだけど大きな蜘蛛の魔物が入っているんだ」
「仕方ないな…」
アルバロの話を聞いてため息を吐くリオがゼカとパルミラに向き直る。
「娘は蜘蛛が苦手なんだ。見るのも嫌がる。出した後で全身浄化しないと俺たちをバイ菌扱いだぞ」
「倒した時、ハナがしつこく浄化されてたよ」
ゼカとパルミラが大変ですねと言いたそうな表情だった。
話題の蜘蛛のほかコットン畑でハナが倒したマンティコアや秘境で倒した魔物を全部出した。
「あの…これらをどこで?」
「どれも大変危険な魔物ですよ」
「うちの庭と畑だ」
「………」
「お住まいはどちらに?」
「東の秘境だ」
「お住まいが?」
「東の秘境?」
ゼカとパルミラが営業スマイルのまま固まった。
「俺たちは結構強い種族だから問題ない。自然の恵みが豊かでいい土地だ」
「先祖代々住んできた場所だから愛着もあるし僕らがあの場所に住み続ける限りこういった魔物は秘境から出る前に倒すから近くの街も安全だよ」
「確かに…東の秘境に入ると格の違う強さの魔物ばかりで腕に自信のある冒険者やパーティーもたいてい命を落とすか重傷を負って引き返すけど東の秘境から魔物が襲ってきたって話は聞いたことないわね」
「東の秘境全体に畑が散らばってるから定期的に回るからな。最近はリザが飛び回って邪魔な魔物は倒しちまうし」
「東の秘境唯一のダンジョンも家にいる時は毎日行ってるしね」
「あのダンジョンは便利なんだ。うちの庭に入り口があるから近いのが良い。うちのハナちゃんが毎日お散歩がわりに行っててな、雨の日もダンジョンの中は晴れているから助かっている」
「へえー」
「そうなんですかー」
ゼカとパルミラが無表情で預かり証を書いてくれた。
「次は食料品か。この間ローレで全部出したから少ないんだ」
「ご協力ありがとうございました。雪深い街に送り出したとギルドマスター会議で聞いています」
「役に立っているならいいさ」
「僕、カナとハナを呼んでくるよ」
「ちょっと待て」
リオが全員を浄化した。
「カナー」
「アルバロ、このお茶はじめて飲んだけど爽やかで美味しいよ」
冒険者ギルドの酒場でカナがハーブティーを飲んでいた。
「レモンバーベナのお茶だって」
「へえ、いい香り」
「巽のお店にあったと思うから後で寄ろうよ」
「そうだね」
アルバロとカナとハナが合流して別室でダンジョンでドロップした肉や魚、家の前の海で父さんが釣った魚を出した。
「春の食材が出てくるまで食糧事情が厳しいので助かります」
「いつものように魔物を解体した肉も全部買い取りで頼む」
「助かります。あれだけあれば多くの街に行き渡るでしょう」
高値がつくのは魔物の角や毛皮などの素材だけど必要とされているのは肉だった。王都の家で査定が終わるのを待つことになった。




