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第169話 お茶の木

 ホワイトデーの翌日、アルバロが茶の木栽培に適していると勧める土地に茶の木を植えた。お茶を栽培したいと思って調べてみたら3~4月が定植時期だと分かったので即行動した。

 ローレで魔石が売れたのでお財布を気にせず欲しいだけ茶の木を購入出来た。緑茶も紅茶も全部同じ茶の木から出来るからたくさん欲しかったので嬉しい。



 午前中いっぱいかけて堆肥を撒いて天地返しで土壌を改善した。お昼ご飯を挟んで午後は茶の木の定植。今日も土魔法が大活躍だ。


「今日はここまでだね」

「明日また来ようよ」

 アルバロが明日来ようと言うってことは成長させてくれるということだろう。楽しみだ。



家に帰ると父さんが魚をおろしていた。

「今日はセンブラで仕入れたぶりで晩飯にするぞ」

「もしかしてぶりしゃぶ?」

「当たりだ」

父さんの鰤しゃぶは私の大好物だ。


「じゃあ私はサラダを作るね」

 父さんが出汁をとって鰤を捌く横でサラダと茶碗蒸しを作った。父さんが牡蠣やふぐを天ぷらにしてくれてる。天つゆに大根おろしで食べると美味しいんだよね。



準備が出来て全員揃ったのでお鍋に点火。

「まずは出汁に野菜ときのこ類を入れるぞ、みんなはサラダや天ぷらでも食っててくれ」

父さんが鍋奉行になった。天ぷらは牡蠣と春菊とふぐだった。美味い。


「そろそろいいぞ、刺身でもいける新鮮な鰤だ。さっとくぐらせて俺特製のポン酢で食ってくれ。紅葉おろしも合うぞ」


 ハナがフォークで上手に鰤を刺してお鍋でしゃぶしゃぶした。

「おいしー」

「鰤しゃぶが気に入った?」

しゃけの次に好き!」

「たくさん食べろよ、〆の雑炊も美味いからお腹に余裕を残してな」

「うん」


 〆の雑炊は卵でふわっとさせて三つ葉と海苔を散らして完成だ。

「おいしー」

「鰤しゃぶの雑炊って美味しいよねえ」


 私とハナの好物なので寒いうちにまた鰤しゃぶをやることになった。ハナも大喜びだ。



 翌日は全員で茶畑に行った。

「成長してる!一番茶だね」

摘採てきさいにちょうど良いよ」

「効率よく摘み取る魔法ってある?」

「あるよ」

ダメもとでアルバロに聞いてみたんだけどあるのか!


「一度に狭い範囲しか効果無いけど、こう範囲魔法で囲って“収穫”」

1m四方くらい収穫出来た。


「狭い範囲しか適用出来ないから魔法を使ってもけっこう大変だと思うけど」

「充分だよ!手摘みと比べたらめちゃくちゃ早いもん」


「今日が一番茶、明日は二番茶を収穫できるよ。明後日が三番茶でその次の日は秋冬番茶ね。カナがたくさん収穫したいって言ってたから僕も頑張ったんだ!緑茶のほかに玄米茶やほうじ茶、紅茶や烏龍茶も作りたいって言ってたもんね」

「うん…ありがとう」


 ありがたいけど大変だ…ありがたいんだけど4日連続で収穫か。農家の苦労と比べたらこの程度で弱音を吐くなんてぶん殴られそうだけど慣れない素人には大仕事だ。…お茶、大好きなので頑張る。



 4人で4時間かかって摘採てきさいが終わった。摘採てきさいの後はすぐに加工する。日本茶の場合、新鮮な状態で蒸して発酵を止める。


 蒸したら次に揉捻じゅうねんと呼ばれるお茶を揉む工程だ。茶葉を均一化しつつ成分が出やすくする。揉捻じゅうねんの後は乾燥。揉捻じゅうねんと乾燥は魔法でやった。機械的な作業は素人がやるより魔法がいい。



 烏龍茶は葉の周辺をこすり合わせて、傷をつけることによって発酵を促進させる工程がある。頃合いの発酵状態で釜で炒って酸化酵素の活性を止める。これも魔法でやった。


 紅茶は摘み取った茶葉を乾燥させてから揉む。茶葉の細胞組織を破壊して酸化発酵を促す。酸化酵素が空気中の酸素に触れると活性化し、紅茶の香り、味、コクになるらしい。

 揉んで塊になった茶葉をほぐして空気に触れさせて発酵を促進させると緑色だった葉が紅茶色になって紅茶らしい芳香を漂わせるようになる。さらに乾燥させればお馴染みの紅茶だ。


 魔法を使っても加工に3時間かかった。これを4日間続けるのか…。



 お茶を栽培したいと言い出した手前、弱音を吐けないけど愚痴を言いたい気分のカナだった。

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