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第167話 港町センブラ

 ちょっとしたお出かけをしたくなり、今日は私の運転でセンブラという港町に向かっている。

数年前に車を買い替えた時に父さんが出資してくれた。お金も出してくれたけど口も出された結果、父さんの車より私の車の方の方がゴツいものになった。車種にこだわりはないので文句はない。大きいので後部座席でリザがゆっくり眠れるだろう。


 朝市に間に合わせたくて明け方に起きて出発したが予想通りリザはぐっすり眠っているしハナもぷうぷう寝息をたてている。


「父さん、道が舗装されていないからリザが座席から落ちないようにみててね」

「任せとけ」

「アルバロはハナをよろしくね」

「うん」


 魔方陣で移動することも頭をよぎったが、それじゃあ旅行っぽくないので頭から振り払った。そんな訳で真っ暗なうちに出発する。


 マッピングスキルを起動して設定を操作、障害物や路面状況の表示をオンにした。

「信号も渋滞もないから思ったより早く着いちゃうかも。このマッピングスキルってカーナビよりも高性能ですごいね」


 まだ薄暗いので景色も見えない。途中で一度だけ休憩を取った。ポットに入れてきたコーヒーを飲んでひと休み、休憩時間を入れて3時間ほどでセンブラに着いた。


門番さんがいたので徐行で近づいて停止。


「降りるよー」

 ハナを抱いたアルバロとリザを支える父さんも降りてきた。


「寒いのに早いな」

「朝市が目当てかい?」

「そうです、ギルドカードはこれ。この子は私のパートナーです」

 アルバロから眠るハナを抱きとってペットスリングに入れる。


「朝市は門を入って道なりに進んでいくと大きな道と交わる、そこを左に曲がって真っ直ぐだ」

「今の時期のおすすめは?」


「俺のおすすめは鯖だな!新鮮な鯖に塩を振って焼いてレモンを絞っただけで美味い」

「俺は鱈を推すな、どんな料理にも合うからな」

「腕がなるな!」

「料理をするのか?」

「俺の本職は料理人だ。俺の魚料理は娘たちも妻もたくさん食べてくれるんだ」

「料理人?」

「…その筋肉は?」


 いつものやりとりを経てセンブラに入って門番さんたちの言う通りに進むと賑やかな声が聞こえてきた。


「買い付けは父さんお願いね、リザは私たちに任せて」

「悪いな」

 アルバロと私で両側からリザを引っ張って歩く。寝ながら歩いて器用だな。


「いいぶりだな!」

「分かるかい?今朝あがったばかりだよ」

「丸ごとくれ。そっちの籠に入ってるやつがいい」

「目利きなんだな!これは美味いぞ」

 父さんが鰤をインベントリに収納して次の店へ。


「そのハマチをくれ!」

「このハマチの良さが分かるのかい!こいつは美味いよ!」


 次々と店を回って買いまくる。門番さんおすすめの鱈と鯖もたくさん買った。


「一周したか、買い物はこんなもんだな。…リザはまだ寝ながら歩いているのか。向こうに新鮮な魚を料理した屋台があるらしいから行ってみよう」

 父さんがリザの腕を取って歩き出すと活気ある屋台村が見えてきた。


「… 縺斐�繧�?」

「起きた?」

美味しい匂いでハナが目覚めてきたが寝ぼけている。


「あの屋台の煮込みが美味そうだ」

 ハナの嗅覚に頼ることなく父さんが選んでお鍋いっぱい買ってきたので屋台村のテーブル席に座って食べることにする。


「…おいしいにおい」

「起きた?」

「うん」

ハナが起きたのでご飯にしよう。


「これでよし…いったん鍋ごとインベントリに入れて魚の骨や蟹の甲羅とか食べられない部分だけ取り出したからな」

 ブイヤベースのような煮込みをハナがスプーンで食べやすいようにしたらしい。子供を甘やかす目的でインベントリを使う人は少ないだろう。


 ハナをペットスリングから出して座らせてやる。


「おいしー」

「うん、美味しいね」

「贅沢にいろいろな魚を使っているな」


「マグロのステーキって美味しいですね」

「リザはマグロが気に入ったのか、にんにく醤油で焼いても刺身で食っても美味いから家で作ろう」

「嬉しいです」

 食べさせたい父さんと食べたいリザは今日も相性ぴったりだ。


「ねえアルバロ、この街にダンジョンはあるの?」

「ないよ、ここから1番近いのはこの間行った酒飲みのダンジョンかな」

「そっか」


 特に観光する場所もないのでアンデッドが出没する地点を浄化しながら、ゆっくり帰った。今日は間に合わないけど明日の夜には父さんの魚料理が食べられるだろう。

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