第161話 お米料理
「田んぼの準備?」
「ああ。まだ寒いからやる気にならないが3月下旬くらいには準備を始めたい」
田んぼ予定地は決めてあるので土魔法で水路を整えたら次に土だ。苗は酸性を好むがpHが高すぎても生育不良や苗立枯病が出やすくなるし低すぎてもいけない。土のpHを測定して調整する。これは土魔法と化学の力で行う。
4月になったら土魔法で深く耕して田んぼの土を乾燥させて肥料を混ぜる。その後、種籾をカマボコ型のビニールトンネルで育てる。
種まきから10日ほどで苗が8cmくらいに成長する。気温が上がって保温の必要が無くなったらビニールトンネルを外す。
種まきから30日くらい経つと苗もだいぶ成長してくるので、田んぼに水を張って土をかき混ぜて土の表面を平らに均して苗を植えやすくする。
ここまで来たら、いよいよ田植えだ。12〜15cmまで成長した苗を、田んぼに移植する。
「ほとんど土魔法で出来るが田植えは手でやるしかない」
「それか機械だよね」
「パーティー資金で田植機を買いたい。ちょっと見てみたら中古で安いのは20万くらいからだった」
「いいんじゃない?もう少し予算を上げて機能重視でいこうよ」
みんなで話し合って程々のグレードの田植機を50万円で買った。こっちの通貨で約50万シルだ。
「植えた後の管理で大変なのは雑草らしい。害虫なんかは害虫除けの魔方陣を仕込めばいいけど雑草はどうにもならないだろう」
「そうだね。みんなで交代で行こうか」
「特定の植物以外育たないようにすればいいの?」
「アルバロ?」
「出来るの?」
「任せてよ!」
父さんに胃袋を掴まれたお米大好きなアルバロが上手いこと魔方陣を用意してくれることになった。雑草だけでなく稲の病気にも対応すると張り切っている。
「お米が収穫できたらどうする?」
「まずは寿司とおむすびだな」
「鮭のおむすび!」
「釜飯もいいよね、リゾットも!」
「カツ丼がいいです」
「炒飯とかパエリヤは?」
夢が広がるね!と話していたらお腹が空いてきた。話し合いの結果、今日の夕飯は手巻き寿司になった。みんなの希望がバラバラだったけど、それぞれ好きなものを巻けば良いと父さんが決めたので、みんなで焼き海苔と酢飯をたくさん用意した。
お刺身はマグロ、イカ、鯛、サーモン、穴子、ホタテ、イクラの醬油漬け、エビと甘エビ、カニ。
カイワレとレタスとキュウリ、納豆、アボカド、大葉、だし巻き卵、カニカマ、ツナマヨ。トロたくとネギトロ、イカ納豆。
リザの為にから揚げ、焼いた厚切りベーコン、肉味噌、焼肉、牛肉のしぐれ煮、豚カツ、焼き鳥の缶詰。
「準備はいいな」
「いただきまーす!」
ハナの分は私が巻く。
「サーモンだけでいいの?」
「アボカドも一緒に巻いて!」
「はいはい」
サーモンとアボカド、サーモンときゅうり、サーモンとサーモン…サーモンとサーモン?ハナが好む具材をハナの希望通りに巻いてやった。
「おいしー」
「よかったね」
自分の分も巻いてぱくり。今日も手巻き寿司は美味しかった。お米作りに向けてやる気になった。




