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第158話 シードル

「りんご?」

「そう、ふじだけで30ケース以上あるけど、ハナあと半年くらいでぜんぶ食べられる?」

「無理」

「じゃあ2ケースくらい使ってもいい?」

「うん」


誘導尋問のようにハナの譲歩を引き出した。


「りんごで何をつくるの?」

ハナが期待している。正直に目的だけ告げると機嫌を損ねるだろう。


「りんごジュースとはちみつりんごゼリーとシードル」

「はちみつとりんご!?」

 どちらもハナの好物なので大興奮だ。予想通りシードルはスルーされた。

「そうだよ」

「うれしー」

丸い尻尾をぴこぴこさせている。

「座って見てる?絞ってばかりだから退屈だと思うけど」

「見てる!」

 ハナを椅子に座らせてジューサーでりんごを絞りまくる。23リットルくらいジュースが出来た。


「このジュースでゼリーを作っていこうか。ミルクゼリーとはちみつりんごゼリーの2層にする?」

「する!」

 ダンジョン産の美味しい牛乳で作ったミルクゼリーの上からはちみつりんごゼリーを注いで冷蔵庫で冷やす。

「晩御飯の頃には固まってるよ」

「早く固まらないかなあ」

「搾りたてのジュースを飲む?」

「のむ!」


りんごジュースをハナのグラスに注ぐ。

「どうぞ」

「ありがとー!」


 ハナが機嫌よく飲んでいる間にシードル作り。イーストをぬるま湯と合わせておく。その間に瓶を準備する。今回は20リットル作るから1リットルの瓶を20本。瓶を浄化してりんごジュースと温めたイーストを入れたらS字型のワイン排気弁で栓をする。

 密閉容器で発酵させると炭酸が発生して瓶が破裂する恐れがあるからガスを逃すタイプの栓をする。これで作業はおしまい、3〜4日で飲めるようになる。


「これでシードル作りは終わり、このまま室温で発酵させるよ」

「シードルってなに?」

「お酒」

ハナの顔が曇った。

「さらに発酵させるとりんご酢になります」

「ハナ、お酒もお酢もうれしくない」

「ハナにはジュースね」

 少しだけ、おかわりを注いであげたら機嫌が直ったのでお散歩ダンジョンに出かけた。


 今日は洞窟フィールドでスケルトンやゾンビなどアンデッド系がたくさんポップして金塊など希少な金属をドロップした。


「今日はおいしいの出なかったー」

 もともとダンジョンで食べ物がドロップすることは稀だけど今日のドロップ品が金属ばかりでハナの機嫌が悪い。

「いつも同じフィールドで同じ魔物じゃつまらないでしょう?」

「そうだけどー」

 ぷくっと膨れるハナを浄化して玄関で放流した。今日はあまり機嫌が良くない。


「ただいまー」

「おかえりハナちゃん」

「いいにおい」

ハナがフンフンする。

「今日はジャンバラヤだ。向こうで待っててな」

 家庭で作るのが面倒なジャンバラヤは私の大好物だ。日本で食べるジャンバラヤは偽物だと言われるがスパイスが違うんだと思う。

父さんのジャンバラヤはホテルでも人気のメニューだったらしくアメリカ旅行で食べたのと同じくらい美味しい。


「出来たぞ」

 父さんがジャンバラヤを大きなフライパンごと運んできた。


「ダンジョン産の大きな有頭海老で出汁をとって大きなチキンも入ってる。コメを洗わずに調理するのがコツなんだ」

 説明しながら取り分けてくれる。今日もスパイスたっぷり具沢山で美味しい。


「おいしー」

「うん!美味しいね!」

「カナの好物だったよな」

「うん。アメリカ旅行で食べたのより美味しいよ」

「それは褒めすぎだ。もっと食え」

 ご機嫌な父さんにおかわりを盛られた。



「美味しかった…」

「ハナもごちそうさま、カナちゃん!」

忘れてた。ゼリーだ!


「ちょっと待ってね」

 自分のキッチンからゼリーを持ってくると夕食のお皿は片付けられていて取り皿も用意してくれていた。


「パウンド型でゼリーを作ったんだ。下がダンジョンの美味しい牛乳で作ったミルクゼリーで上がはちみつりんごゼリー」


 ミルクゼリーとりんごゼリーの割合は1:4だ。ゼリーはゆるゆるが美味しいので今回もゆるく作った。型から出したら高さが半分になった。

 みんなに食べる量を聞きながらカットして残りを全部アルバロが食べるかと思ったらアルバロが明日の朝にハナが食べる分を残そうと言った。

 ハナの好物の組み合わせなので遠慮したようで、もちろんハナは大喜びだ。


次はアルバロが喜ぶものを作ろう。

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