表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/331

第156話 ワイン作り

 その後、何日か通って家と裏山温泉のタオルとシーツをすべてオーガニックコットンに入れ替えた。


 さらに通ってオーガニックコットンの反物も作った。

「今度これでお仕立てしようっと」

「何を作るの?」

「裏山温泉で使うみんなのバスローブとか浴衣とか。いろいろ」

「バスローブはいいねえ。でも創造魔法でも作れるよ」

「そうなの?じゃあ自分で作ろうかな」

 肌着も仕立てるつもりだがアルバロにそこまで打ち明けるつもりはない。



「コットン畑はこれでひと段落。春になったら普通に種まきして秋に収穫しよう」

「収穫したら何か作るの?」

「まだ考えていないけどインベントリに入れておけば時間停止だから劣化も無いし使いたくなった時にあるといいなって」


「そっか。次はワイン?」

「うん。リザが楽しみにしてるから父さんとリザも一緒に行くよ」

 そんな訳でワイン醸造に関わる機械や道具をパーティー資金で買ってもらえることになったので予算内で買ってある。


「今日は金曜日だから明日と明後日は裏山温泉でのんびりして月曜日からワインだよ」


 週末の裏山温泉で美肌の湯を堪能した上にお風呂上がりのタオルがふわふわのオーガニックコットンだわ、ベッドのシーツがすべすべオーガニックコットンだわでお肌のレベルが何段階か上がったような気がする。


 しかし召喚魔法(インターネット通販)でちょっと良い基礎化粧品を取り寄せたらテカテカぬるぬるするだけで10代の肌には合わなくて安いヘチマ化粧水がぴったりだったのは残念だった。高級基礎化粧品はインベントリに温存した。いつか歳をとって肌質が変わったら使おう。



 今日は日焼け止めを塗ってガロンヌの葡萄畑だ。やる気に満ちたリザや父さんたちと一緒に魔方陣で移動した。転移先は醸造所のエントランス。


「アルバロが葡萄を成長させてくれたんだ。まずは収穫しようよ」

 全員で品種ごとに収穫することになった。ハナはみんなの間を行ったり来たりして葡萄をつまみ食いさせてもらっている。父さんの足につかまって葡萄を立ち食いして父さんがデレデレだ。


「収穫だけで午前中が潰れちまったな」

「そんなに広く作らなかったんだけどなあ」

「ハナお腹すいた」

「続きは飯を食ってからにするか」


 父さんがあらかじめ作ってインベントリに入れておいた料理をどんどん出す。

「メインはコンビーフとジャガイモのグラタンだ。じっくり炒めた玉ねぎが甘いぞ。上にたっぷりチーズを乗せて焼いたので熱いから気をつけてな」


「おいしー」

「ハナちゃんも気に入ってくれたか!」

「おかわりください」

「ちょっと待ってな」

 リザがいつも通りたくさん食べて父さんの機嫌が良い。



「おいしかったー」

「それに暖まったね」

「午後は葡萄の加工だな」


 後片付けをしてから全員で移動して醸造所の端っこに除梗機を出した。


「除梗機で果梗(葡萄の軸)を取り除くよ」


 カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランを順番に処理した。品種が変わるごとに機械を浄化魔法で洗浄した。浄化魔法を使えなかったら大変だっただろう。


 未成熟の粒や腐敗した粒を取り除く選果という作業はインベントリ任せだった。インベントリにカベルネ・ソーヴィニヨンを収納するとカベルネ・ソーヴィニヨンフォルダの中の表示が自動的に分類された。


・成熟した粒

・未成熟な粒

・腐敗した粒

・ゴミ


 この中から成熟した粒だけを取り出して次の工程に進ませる。


 ここで白ワインと赤ワインで作業方法が別れるので、まずは白ワインの作業を進める。


 白ワインは発酵前に果皮や種子を取り除く。これはインベントリでやった。白ワイン用のシャルドネとソーヴィニヨン・ブランをインベントリに入れて果皮、種子、ゴミを取り除いて、それぞれを圧搾すると葡萄ジュースが出来た。


「のみたい!」

 予想通りハナが飲みたがったので少し注いであげた。

「おいしー」

「良かったね」


 この果汁を数時間置いて不純物を沈殿させてから上澄みの果汁をアルコール発酵させるのだ。


 置いている間に赤ワインの作業を進める。次の工程は破砕。果汁を搾りやすくするために軽く潰して果皮を破る作業で、これも機械で行った。

 次に果汁を果皮や種子と一緒に木桶に入れて葡萄が持っている天然酵母のみでアルコール発酵させるので今日できるのはここまで。


 白ワインの元になる果汁も不純物が沈殿したので上澄みだけを樽詰めした。樽でアルコール発酵させる。


 赤ワインは圧をかけることなく自然に流れ出した分はフリーラン・ワインと呼ばれる。フリーラン・ワインを抜き出した後、果皮や種子を圧搾機でプレスして搾って出た果汁を樽に詰めて熟成させる。

 熟成を終えたワインは濾過処理をする業者としない業者があるらしいので両方試してみるつもりだ。濾過処理で香りや複雑味が損なわれる場合があるらしい。


 スパークリングワインは瓶内で二次発酵を起こさせる方法で作ることにしたので今日やることは特に無い。



  アルコール発酵のもととなるブドウ糖が多く含まれている葡萄はお酒になるために生まれたフルーツだと思う。あまり手を加えなくても自然にお酒に変化してくれるのだからありがたい。



 熟成途中で沈殿物が出るので上澄みだけを別の容器に移し替える作業を定期的に行う必要があるのでちょくちょく通うことになるけど、それも楽しみだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ