第155話 タオルとシーツおかわり
今日は父さんとリザも一緒にオースティンのコットン畑に来た。
「あっちが加工小屋だよ」
全員でぞろぞろ向かう。
「昨日の帰り際、収穫したコットンボールを機械に入るだけセットしておいたんだ。夜のうちに全部1番細い糸になってるね」
まだまだインベントリにはコットンボールがあるけど、これがこの中古機械に出来る精いっぱいだ。昨日は遅くまで稼働してくれてありがとう。
「こっちの機械でハナのシーツを作ろうね」
「ありがとカナちゃん」
ハナの丸い尻尾がぴこぴこする。
「こっちの機械で父さんとリザのタオル」
機械がゆっくりと動き出した。
「随分とゆっくりなんだな」
「全部で680万円の機械って安物なんだって。中古だし。家族で使う分を必要な時に作るだけだし最新の機械は必要ないかなって。それでも贅沢な買い物だったよ」
「そうだなあ、布作りの機械なんて滅多に使うことも無いしなあ」
お茶を沸かして飲みながら待っていると出来上がってきた。
「ハナのシーツが出来てきたよ」
畳んでハナに差し出すとハナがぎゅっと抱きしめた。
「やわやわ〜、ハナ今日から使う」
「良かったね」
糸をセットして父さんとリザのシーツに取り掛かる。全員分できたら洗い替えの分を作る。今日中に終わるかな、無理そうだな。
「バスタオルも出来たよ」
アルバロが次の糸をセットしてくれているので出来あがったバスタオルをリザに渡す。
「リザ、どうぞ」
「…ふわふわです」
美味しいお肉と同じくらい喜んでくれた。
「しばらくここに通うよ。家の分のタオルを入れ替えたら裏山温泉のシーツとタオルも全部取り替えようよ。予備も欲しいし」
「シーツを作ってる方の機械は普通の布を作る機械なんだ。くるくる巻かれた状態の反物が出来るよ。幅と長さは自由に設定できるからね」
「反物にしてお仕立てしようよ。コットンボール足りるかな」
「待ってる間に種まきしようか!成長は僕に任せてよ!」
待ってる間、暇なので全員で種まきした。時々様子を見に戻って出来上がっていたら次を作ることにした。
「カナちゃーん!」
近くで遊んでいたハナが戻ってきた。
「おかえり」
「大きいのドカンした!」
見にきて!と誇らしげなのでアルバロと一緒に見に行った。
ライオンにサソリの尾とコウモリのような翼がある魔物が倒れていた。今回も一撃だったらしく首がおかしな具合に曲がっている以外は見た目に傷がない。
「マンティコアだね、キメラの一種だよ。尻尾に猛毒があって刺されると即死だから会っちゃったら気をつけて」
どう気をつけろというのか…アルバロは時々無茶を言う。
「マンティコアは人間の肉が大好物なんだ。カナたちがコットン畑にいたのを狙って来たんだろうね」
「うわあ…ハナに助けられたね。ハナちゃんありがとう」
「えへへ」
ハナを撫でまくるとデレ顔でハナが溶けた。寄りかかって甘えるハナが可愛い。
アルバロがマンティコアを収納してくれたのでコットン畑に戻ってみると父さんとリザが種まきを終えて機械に糸をセットしてランチの準備もしてくれていた。
「簡単で悪いな、ホットプレートで作った鮭のちゃんちゃん焼きだ」
ホットプレートの蓋を開けると美味しい匂いと湯気があふれる。
「鮭!」
大好物の鮭にハナが大喜びだ。
「ほら、ハナちゃん」
「ありがとパパ」
ハナには鮭を多めに父さんが取り分けてくれた。
「〆でうどんにするからお腹に余裕を残しておくんだぞ」
半分くらい食べたところで焼きうどんに転生させた。仕上げに溶き卵を回しかけてまろやかに仕上げる。
「おいしー」
「うん、美味しいね」
お腹いっぱい食べた。
片付けて外に出たらコットンボールが収穫期を迎えていた。リザが細かいことを気にしない種族で本当によかった…。いくらなんでも疑問に思うかなと思ったら全然気にして無くてありがたい。
腹ごなしに午後も全員で収穫した。合間に機械をチェックして出来上がっていたら次をセットして布やタオルを仕込む。
「全部収穫出来たね」
インベントリにコットンボールだけを残して枝や葉っぱはコットン畑に撒いた。
全員のタオルとシーツの洗い替え用の予備は今日中に出来た。裏山温泉のタオルやシーツはちょこちょこ通って作っていこう。
布もタオルも複製すれば早く出来るけど、みんなで収穫したり加工するのが楽しかったので複製のことは黙っていた。たぶん父さんも気づいてて黙っていたんだと思う。今日もいい日だった。




