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第154話 オーガニックコットン

 食べて温泉に入って寝て過ごしたお正月が終わった。


「あれだけ怠けたら活動しなきゃって気になるよね」

「コタツでゴロゴロに飽きる日が来るとは思わなかったな!」

「ハナ、飽きてないよ」

「そっか。でも今日はコットンを見に行こうね」

「うん!」



 馬車でオースティンに向かった。

先日作った小屋に転移の魔方陣を設置したので一瞬で移動できるけど風景を眺めながらゆっくり移動したい気分だった。



「見えてきた!」

 先日植えた綿花が成長していた。もはや驚かないつもりだったけど見事な眺めに嬉しくてたまらない。


「ハナ、着いたよ」

 ハナを降ろすと『いってきまーす』と言いながら見えなくなったのでマッピングスキルを起動して白熊アイコンを表示させた。


「鑑定してみると収穫可能って出てくるね」

「製品化してみたいって言ってたよね、今日出来るところまでやってみようよ」

「うん」


 アルバロと一緒に片っ端からインベントリに収納した。すべてを収納してから綿花フォルダから枝や葉などを取り出すと綿花フォルダにはコットンボールだけが残る。


「合理的!すっごく早いね」

「午後は機械を動かしてみようよ」

「そうだね、お昼にしようか。ハナを呼んできてくれる?」

「オッケー」


 今日は残り物のスープを父さんから鍋ごともらってきたので簡単にする。

 テーブルに材料を並べて薪ストーブで大きなソーセージを炙っているとハナが戻ってきた。

「ただいまー!」

「おかえり」

「いいにおい」

ハナが隣に来てフンフンする。

「今日はホットドッグと父さんのオニオングラタンスープだよ」

 スープにバケットを浮かべてチーズを乗せて火魔法で炙る。ホットドッグのパンに用意した具材を挟むだけで完成だ。


「出来た!いただこうか。ケチャップとマスタードは好みでね」

「カナちゃん、ケチャップとマスタードして」

「はいはい」

 ハナの好みにケチャップとマスタードをかけてやった。


「今日はフレッシュトマトと大きなピクルス、チリ、スイートオニオン、レリッシュを挟んだシカゴスタイルだよ。ハナにはチリペッパーを入れてないから辛くないよ」


「おいしー」

気に入ってもらえたようだ。


「パンも美味しいね、つぶつぶしてる」

「ホットドッグのパンに芥子の実が入ってるのはシカゴスタイルの特徴なんだって」

「他にも種類があるの?」


「ニューヨークスタイルはシンプルだよ。ザワークラウトやソテーした玉ねぎをトッピングしてあってチーズは別料金のオプションだったりするし」

「へえー」


「デトロイトの有名なホットドッグはコニードッグって名前で呼ばれて牛挽肉のチリ、チェダーチーズ、玉ねぎのみじん切りが乗って食べ応えある感じ」

「リザちゃんが好きそうだね」

「そうだね、アトランタスタイルはシャキシャキのコールスローが乗ってるよ」

「いろんなホットドッグ食べたい」

「ハナはホットドッグが気に入った?」

「うん」

「僕も!」

「じゃあまた作ろうね」

「うん」

「やったあ」

 ハナとアルバロが喜んでいるけどしめしめだ。当分の間、外出先でのメニュー選びに迷わずに済むし作るのも楽だ。


 午後は加工小屋に召喚魔法(インターネット通販)で買った機械を出した。どれも規模の小さな中古の業務用で全部で680万円で買えた。こちらの通貨だと680万シル。分かりやすくて良かった。


「こっちの世界の文化レベルに合わせて自動変換されているんだよね?」

「うん魔道具になったよ。ここに収穫したコットンボールを入れると糸になる。糸の太さなんかは自由に選べるよ。糸を加工する機械は2つ。こっちがタオルでこっちが布」


「太さを変えて何種類か糸にしてみようよ」

 さっそくインベントリからコットンボールを出して機械を稼働させた。設定ボタンを押すとステータス表示画面みたいなのが出てきて設定終了したら消えた。中世っぽいのか未来っぽいのか不思議な感じがする。


「おお…動いた。糸が出来てる!」

 動かなかったら困るし動いて当たり前なんだけど糸が出来てくる様子は楽しかった。


「その糸をこっちの機械にセットするとタオルや布になるよ、設定はここ」

 こちらの設定もステータス表示画面みたいなのが出てきたのでタオルの選択肢を選んだ。


「まずはタオルね!サイズを選択してください…ハンドタオルかフェイスタオルかバスタオルを選べるのね。このほかにサイズを自由に設定可能だからタオルケットも作れるね。今回はフェイスタオルにしておこうか」

ポチ!


「次にオプションだって。ふわふわにチェック、柔らか仕上げにもチェックで設定終了」

 設定終了で画面が消えて機械が動き出した。


 しばらく待つとフェイスタオルが出てきた。けっこう時間がかかるのは買った機械が安い上に中古だかららしい。仕方ないけど世知辛い。680万円は思い切った買い物だったのに…680万円が安物か…。


「どれどれ」

 出来上がったフェイスタオルを手に取って衝撃を受けた。めちゃくちゃ柔らかい!期待以上だ。


「ハナ」

ぼす!


ハナの目の前に差し出すとタオルに顔を埋めた。

「これ好きー!」

ハナがフェイスタオルを抱きしめる。

「糸を変えて作ってみようか!」


 1番細い糸でタオルにするとさらに繊細な手触りだった。

「布もタオルも1番細い糸のタオルがいいよね?」

「うん!」

「いいと思う!」


 ハナとアルバロも賛成なので1番細い糸を大量に作ってバスタオルとシーツを作りまくった。しかし機械のスピードが遅くて今日できたのはハナと私とアルバロのバスタオルと私とアルバロのシーツのみ。


「明日また来て作ろうね、ハナのシーツが間に合わなかったから今日は私と一緒に寝ようね」

「うん」



 馬車で移動する時間が無かったので魔方陣で帰宅した。


「おかえり、遅かったな」

「ちょっと夢中になっちゃって。明日も朝から行くよ」

「どんなのが出来たんだ?」


「今日できたのはハナと私とアルバロのバスタオルと私とアルバロのシーツだけ。明日はハナのシーツと父さんとリザの分も作るよ」

 試しに作ったフェイスタオルをインベントリから出す。

「試作で作ったタオル。良かったらどうぞ」


 父さんとリザの背景に稲妻が見えたような気がする。

「カナ…これが試作?」

「もっと細い糸で作ったのが1番良かったんだ」



 個人的な趣味のコットン畑のつもりだったけど680万円の機械の代金をパーティー資金で出してもらえることになった。

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[気になる点] 先日植えた綿花が成長していた。もはや驚かないつもりだったけど見事な眺めに顔がにやける。 にやける(若気る) 男性が女性のようになよなよとして色っぽい様子。 鎌倉・室町時代に男色を売…
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