第151話 クリスマス
日本らしくクリスマスイブにご馳走を食べることになった。本場の皆さまごめんなさい。
でも今日は父さんが頑張る日だ。私は早起きせずにゆっくり起きた。就職してからはクリスマス時期は父さんも私も繁忙期でほとんど家にいなかったから、こんなにゆっくりできるクリスマスは学生の時以来だ。
父さんのキッチンをのぞいてみるとリザとアルバロと一緒に肉の塊を焼いていた。私はハナと一緒にビッシュドノエルを焼こう。
まずはスポンジ作り。
牛乳とバターとはちみつを湯煎にかけておく。使うときには溶けてるだろう。
ボウルに卵とグラニュー糖を混ぜる。均一になったら湯煎にかけてハンドミキサーでツノが立つまで泡立てたら半分に分ける。
1つには薄力粉を加え、もう1つには薄力粉と純ココアを加えてざっくり混ぜたら湯煎にかけておいた牛乳とバターとはちみつのボウルにひとすくい混ぜる。よく混ざったら湯煎にかけていた方を泡立てた方に混ぜる。
天板に生地を流し入れて表面をならしたらオーブンで焼く。焼き上がったら網の上にのせて粗熱を取る。
焼いて冷ましている間にクリームと苺を用意した。
「ハナ」
多めに用意したので余った苺をハナの口に運ぶ。
「おいしー」
「裏山の苺、美味しいよね」
白い方は苺をクリームと一緒に巻く。茶色い方はチョコクリームのみ。巻き終わったら端っこを切り落とす。外側にもクリームを塗ってフォークで模様をつけて出来上がり。本体は冷蔵庫に入れた。
「ハナ、切り落としたのとミルクティーでいい?」
端っこがハナと私に1切れずつ。余ったクリームと苺も乗せた。アルバロにはご馳走の時に大きく切るから許してくれ。
「うん!」
薄く切ったのでご馳走に響かないはずだ。
「おいしー」
「アルバロには内緒だよ」
「うん」
味見が終わったらハナと一緒にお散歩ダンジョンに行った。今日はたくさん食べるのでいつもより沢山倒した。さっきの端っこのカロリーを帳消しにしたいという気迫で倒しまくった。
「ただいまー!」
お散歩ダンジョンから戻るといろんなご馳走の匂いがした。
「お腹すいたー!」
「おかえりハナちゃん。もう少し待ってな」
ソワソワするハナと一緒にテーブルセッティングをした。
「お待たせ、料理を運ぶぞ」
メインはローストビーフとローストチキンとクリスマスハムだった。リザが大喜びのメニューだ。
「じゃあ肉を切っていくぞ。みんなの皿に乗せていくな」
父さんが盛り付けてくれた。野菜料理も種類が多いけど味付けを変えて飽きないように工夫されている。
「じゃあメリークリスマス!いただきます」
「お肉おいしー」
「クリスマスハムは醤油とはちみつのタレを何度もかけて焼いたんだぞ」
「僕、ハムのタレ係だったんだ。リオの指示通り何度もハムの塊をオーブンから出して刷毛でタレを塗ってを1時間以上繰り返したよ」
「そうなんだ、すっごく美味しく焼けてるね」
「そう?」
アルバロが得意顔なのも当然だ。本当に美味しく焼けている。それに今日のスープは本格的なコンソメで見た目はシンプルだけど手間がかかっているし野菜のローストも素材ごとに味付けを変えてあって美味しい。
「リザ、もっと肉をどうだ?」
「ローストビーフを少しだけください」
リザが満腹になってきたようだ。
「そろそろケーキを出そうか?」
「やったあ!」
テーブルを片付けて2本のビッシュドノエルを並べた。
「カナは上手だな!」
「父さんたちのお肉も美味しかったよ。切っていくね」
「ハナ、少しでいい」
「私も薄く…」
ハナには薄く、私と父さんとリザに薄めだけど普通に1切れ。残りはアルバロに。
「おいしー」
「うん、美味しいな!」
「ハナ食べすぎちゃった」
「美味しかったもんね」
「くるしくて眠れないかも」
困り顔のハナも可愛い。
「じゃああとで温泉に入りにいこうか?」
「それはいいな、温泉で汗をかいたら腹も落ち着くぞ」
「いく!」
片付けてから全員で裏山温泉に行ってハナが選んだ部屋で一緒に温泉につかった。
「温泉気持ちよかったね」
「そうだね」
「お肉、おいしかったね」
「そうだね」
「カナちゃんのケーキおいしかったよ」
「よかったね」
寝るまでずっとこの繰り返しで可愛いかった。こんなに喜ぶなら来年も美味しいのを作ろう。




