第144話 農地の視察
温泉は週末のご褒美に決めた。
「快適過ぎてダメになっちゃう…」
「温泉は週末のご褒美だな」
話し合って平日は温泉を封印して人間らしい生活を送ると決めた。お米作りや綿花の栽培、葡萄とワインの計画を進める。
「じゃあ乗ってください」
全員でドラゴン化したリザの背に乗って米作りに適した土地に向かった。
20分ほどで飛ぶと目的地に近づいてきたようだ。
「この辺りですか?」
「そうだね、川の近くに降りてみて」
全員がリザの背から降りるとリザも人型に戻った。
「ここら辺がお米作りに向いてる土地だよ」
さっそくハナが駆けまわっている。
北部の山から流れてくる川が米作りに欠かせない豊かな水を運んでくるし、平らで水はけも良く、昼夜の温度差もしっかりある。
「どんな品種を栽培するか決めてあるの?」
「ああコシヒカリは絶対だ」
「魚沼産のコシヒカリって美味しいよね」
新潟旅行ではどこで何を食べても美味しかった。
「ヒノヒカリも作るぞ。粒がはっきりしてて丼ものや、カレーライス、オムライスなんかに合う。冷めても美味いミルキークイーンはおむすび向きだ。ササニシキも寿司に合う品種だから必要だな」
「4銘柄?」
「1年目はこんなもんだろ」
拡張する予定らしい。そんなに作って食べきれるかな。
「じゃあお米はこの辺りに作ろうか。いずれ広げるつもりで計画的に田んぼを作ろうね。カナが作りたいのは綿花とワインだったよね」
「うん。どこで作ってもオーガニックの基準は間違いなく満たすと思う」
「もっと南に作ろうか。移動の魔法陣があれば離れてても問題無いし」
「うん、私の好きなカベルネ・ソーヴィニヨンは温暖な気候で栽培するんだ」
タンニンが強めの重い赤ワインが好みなので是非とも温暖な地方でお願いしたい。
「じゃあ移動しましょうか」
「ありがとうリザ、ハナー!次の場所に行くよー!」
「おいてかないでー!」
必死な顔で走って戻ってきた。
「おいていかないよ、可愛いなあ」
ぎゅっとしがみつくハナをペットスリングに入れてドラゴン化したリザの背に乗り込む。
「この辺りがおすすめ」
30分近く飛んだところで着地。
「広いね!」
「あんまり改造せずに栽培を始められそうでしょ?」
「うん!栽培したいのはカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン」
私好みの赤ワインを5割、白ワインを3割、泡を2割でいくと決めている。
「多めに作って寝かせるからたくさん栽培したいんだ」
ぐっと力こぶを握った。見える範囲をすべて葡萄畑にしてやろうと思っている。
「そ、そう。コットンは?」
「けっこう難しい条件なんだ。春の種まきから成熟するまでは高温多雨で秋は昼夜の寒暖差があって繊維が弾ける時期は雨が降らずに乾燥してて霜も降りない地域ってある?」
「あるよ」
「あるの!?」
「ここと拠点のちょうど中間がそんな感じ。帰るついでに寄っていこうよ」
「じゃあ変化しますね」
「カナちゃん抱っこ」
離れすぎるのを恐れて今度は手の届く範囲にいたハナが抱っこをねだるので抱き上げて再びドラゴン化したリザの背に乗る。
10分ほど飛んだところで着地した。
「ここら辺が条件に合うよ」
「土壌は?水はけが悪い土壌の場合、砂や軽石を混ぜて排水良好な土壌に改良する必要があるんだって。もし土壌が酸性ならコットンは酸性土壌を嫌うから植え付けの前に石灰を混ぜるといいんだって」
「それは手をかける必要があるね。砂と軽石と石灰なら秘境の中で手に入るよ」
土壌まで思い通りにはいかなかったけど気候が合うだけでラッキーだ。
綿花を収穫できたらハナにふわふわの柔らかいタオルを作ってあげよう。




