第142話 温泉旅館のお料理
お湯からあがってハナの毛皮を火魔法と風魔法を合わせた技で乾かした。自分の髪を乾かすために編み出した技だが一瞬でサラッとなるのでハナにも気に入ってもらえた。
湯上がりラウンジでハナに美味しい牛乳を飲ませていると父さんとアルバロが合流してきた。
「気持ちよかったよー」
「ハナちゃんも気に入ったか!」
「うん!」
「ハナちゃん、今度はパパと一緒に入ろうか?」
「やだ。ハナは女の子だから」
ハナが混浴をきっぱりと断っていた。
温泉に浸かるハナはさぞかし可愛いだろうに見られないのは残念だと父さんががっかりしている。
「夕食なんだが温泉に浸かりながらアルバロと相談したんだ」
「今日は料理したくないよー」
「俺もだ」
「召喚魔法に新しい機能をつけたよ」
「新しい機能?」
スマホを起動してみたら出前可能になっていた。
「これで本物の旅館の飯を取り寄せよう」
「いい…!すっごくいいっ!」
全員で相談してメニューを決めた。
前菜にお造り、焚合に焼物。変り鉢に揚物、椀、御飯、香の物に水菓子のコースを取り寄せた。ハナにはハナが選んだお子様御膳。
「大広間に取り寄せようよ」
注文を確定したら料理が届いて大広間が夕飯時の旅館っぽい。
「お料理も揃ったね、今日はお酒も美味しいのをいただこうよ」
乾杯してご馳走をいただく。前菜は三種盛り、お造りは五種盛りでどれも美味しい。
「リオの煮物が好きだけど、この煮物も美味しいね」
「焚合ってのはただの煮物じゃないんだ。今日は五つの食材が入っているだろう、これは全部別の鍋で食材に合わせた味付けがしてあるんだ」
「へえー!ずいぶん手間をかけているんだねえ」
「家で作る時は全部一緒に煮ちゃうんだけどな」
「うちの煮物も美味しいよ」
「そうか?そうか?」
お酒を飲みながらゆっくりと食事を楽しんだ。
「ねえアルバロ?」
「なに?」
「父さんがお米作りの話をしていたでしょう?」
「うん、冬の間に準備を始めたい?」
「それは父さんに任せるつもりなんだけど、オーガニックコットンを育てて手触りの優しい綿を作りたいんだ」
「いいね!」
「調べてみたらコットンはお米より栽培時期が早いんだ」
「そっか、まずは場所を探そうか」
「それだけじゃないの」
「なに?」
「ハナのために果樹を植えたでしょう?あれとは別に葡萄を育ててワインを作りたいなって」
「ワインもいいね!じゃあ綿花と葡萄の栽培に適した場所を秘境の中で選定しておくよ」
「ありがとう」
美味しい食事を堪能した後は自動的に食器が片付いた。旅館、最高!
フルーツの収穫で疲れたので今日は早めに休むことになった。アルバロに先導されて渡り廊下を進むと客室っぽいエリアだった。
「好きなお部屋を選んでね、純和風のお部屋から和モダンから洋室まで揃ってるよ。もちろん全室にトイレと露天風呂、縁側がついているから!庭園を眺めてのんびり出来るよ」
「アルバロ…」
「やりすぎだってば」
20部屋あった。
「参考にした旅館客室がどのタイプも良くて絞れなかったんだ。気分で選べていいでしょ?」
「確かにいい…!」
「でしょー!」
「カナちゃん、このお部屋がいい!」
ハナが選んだ和モダンな部屋にハナと一緒に泊まった。抱っこすると温泉でいつも以上にふわふわになったハナの毛皮が気持ちよかった。
明日は祝福の木と約束した2週間めだ。




