第140話 ログハウス
誤字報告ありがとうございます!
その後も毎日、祝福の木の治療をしてから建設作業と土木作業、ハナのお散歩を繰り返した。
早送りの映像が再生されるようなスピードで建物と庭園が出来上がってゆく様子は私たちの目を楽しませた。
「出来ちゃったね!」
「本物の温泉旅館みたいだな」
私と父さんが大喜びだ。
もともとの予定通り、裏山で採取した薬草やキノコや山菜を貯蔵したり加工したりする拠点はログハウス風にこじんまりと作った。こちらは風通りの良い場所につくって夏の避暑にも利用するつもりだ。
ハナの希望で近くにいろいろなフルーツとナッツを植えたし大きな温室も作ったので収穫が楽しみだ。
温泉旅館風の別邸はログハウスから離れた場所に作った。こちらは建物も庭園も和風だ。お風呂は女湯と男湯に分けて魔法陣で源泉を引いている。
「まずはみんなでログハウスを見てみようか」
アルバロに先導されてログハウスに向かう。
「隠れ家って感じだね!」
「こういう家もいいな」
「気に入ってもらえて嬉しいよ、中へどうぞ」
「設計図通り地下は貯蔵庫、1階は収穫したものを加工する部屋とくつろぐ部屋と立派なキッチン」
「薪ストーブがある!」
「後でつけてみようか、果樹園に行ってみよう」
アルバロに先導されて果樹園に行ってみるとフルーツが全種類、実をつけていた。季節を無視しているし成長が早過ぎる。
「いやいやいや!」
「おかしいぞ」
「初年度だけのサービスだよ。さっそく収穫しようよ!」
「……」
季節を無視しているけど黙って収穫した。なぜならば食べたかったから。アルバロもサービスと言いながら全種類を実らせたのは自分が食べたかったからだろう。今も実によく働いている。
「あれ、リオもカナも全部採らないの?」
「冬は餌も少なくなるから鳥や野生動物も困っているだろう?」
「私たちが食べる分は充分だよ」
フルーツも木の実も1/3くらい残してある。それでも充分採れた。
「…ありがとう」
びっくり顔のアルバロが嬉しそうに笑った。
「でも温室の方は全部収穫しないとね!」
「侵入禁止の魔法陣を刻んでいるから俺たちが食わないと無駄になっちまうもんな!」
父さんが好物のメロンばっかり収穫する横で私とハナが好きな苺を収穫した。食べごろの実を根こそぎ摘んでやった。
「あれ?」
「どうしたの?」
「この花…」
「リオが植えてたよ。食べられないけど植えるんだって」
理由は分からないけど綺麗だねと言うアルバロ。
「カナとハナの花だ」
「プルメリアだっけ?」
「そうだ」
亡くなった母さんが新婚旅行で行ったハワイでプルメリアを気に入って私の名前、花南子の由来になった花だ。ハナは私の名前から名付けられたからハナの名前の由来でもある。
「白いのとピンクのと黄色のでにおいが違うね、いいにおい」
ハナがフンフンする。
「気に入った?」
「うん」
「ハナの部屋に飾るといい」
「ありがとパパー」
ハナのためにプルメリアを少し切ってから収穫に戻った。木も苗もかなり植えたので収穫に半日かかった。
「これで全部だね」
「ログハウスに戻ろうよ」
地下の貯蔵庫にフルーツとナッツを出したらすごい量になった。
「この貯蔵庫は時間停止の魔法陣を刻んであるから置いておいて大丈夫だよ」
「1階のキッチンでジャムに加工しても良いね」
「いいね、ジャム!じゃあ温泉旅館風の別邸に行こうよ」
「待って!」
「どうしたのカナ?」
「この後、温泉に入るでしょう?」
「もちろんだよ!楽しみにしてるんだから」
「お風呂上がりに紅まどんな、食べたくない?」
紅まどんなは皮が薄くて甘くて美味しいみかんなので全員一致で多めに植えた。
「少し持っていこう、カナは冴えているな!」
「リオったら少しじゃ足りないってば!」
父さんとアルバロが紅まどんなを籠にいれて腕に抱えた。籠がデカいよ!
後で薪ストーブを試してみようと言っていたが暗黙の了解で明日以降になった。




