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第138話 瓦作り

 次の日は祝福の木に薬を塗り終えてから温泉旅館作りに合流した。上から下まで鑑定したが今日も病気の部分は見つからなかった。



「柱と壁と屋根が出来てる…」

 まさか1日でこんなに出来ているとは思わなかった。切り出したままのざらついた木材を組み上げた状態だけど形になっている。


「あとは綺麗に整えたら雨風をしのげるようになるよ。まあその整えるってとこにこだわるんだけどね!」

 アルバロがノリノリだ。高級旅館に似せて作ると張り切っている。


「カナは瓦にする粘土をお願い。土魔法で粘土を混ぜてすり潰す工程を繰り返して欲しいんだ。空気が抜けて粘りの出る粘土になるまで繰り返してね!」

 瓦作りに使う粘土を任された。父さんとリザはアルバロと一緒に建設作業でハナは自由に駆け回っている。裏山なら安全なので自由に遊んでてくれ。




── 地味な作業だな。


 目の前の粘土を捏ね回す作業は単調で眠くなる。土魔法で捏ね回しながら横をみると温泉旅館の外壁が出来上がってゆく。ゲームの画面か早送りの映像を見ているようだった。



「良い状態になったね!」

何も考えずに無心で捏ね回していたらアルバロに声をかけられた。


「次は練り上げた粘土を板状にして瓦の形に成形するんだ。その後は乾燥、水分が多いと焼いた時に割れちゃうから」

 アルバロが用意してくれた型で粘土を瓦の形に成形してはインベントリに瓦フォルダを作って収納。全部収納したら瓦フォルダから5%ほど水分を取り出してみるが乾燥が足りないようなので、いい感じになるまで少しずつ水分だけを取り出した。


「いいね!次は施釉せゆうっていう工程だよ。瓦に釉薬を塗るんだ。今回は黒い瓦にするよ」



「カナちゃーん」

 アルバロと一緒に釉薬を塗っているとハナが戻ってきた。


「ただいまー!」

「おかえり」

 可愛い顔で突撃してきたので抱き止めて撫で回す。

「お腹すいたー!」


「昼メシの準備をするか。ハナちゃん、少し待ってな」

「うん!」


 昨日の昼にも使ったと思われる竈門に火を起こして父さんが塩胡椒で下味をつけた鶏肉の両面をカリカリに焼きはじめた。


「いいにおい」

ハナが父さんの横でフンフンする。

「美味しいのを作ってやるからな」

「ありがとパパ」


 いったん鶏肉を取り出して刻んだニンニクを炒めたら生クリームを加えて一煮立ちさせる。鶏肉を戻し入れてソースを絡めて煮込んだら出来上がりなんだけど、ここで本来は入らない茹でたブロッコリーを加えるのは野菜不足を心配する父さんの配慮だろう。



「シュクメルリの完成だ。世界で1番ニンニクをおいしく食べるための料理と言われているんだぞ」


 父さんがテーブルの中央に大きなお鍋を置いたので隣にパンの籠を出した。

「パンは好きなものをどうぞ。バケット、クロワッサン、バターロール、フォカッチャ、胡麻とチーズのパン、ベーコンエピ、くるみパン、明太子フランスね」

 焼き立てでインベントリに入れたからふかふかでモチモチだ。

「チキンもパンも美味しそう!」

「いただきます!」



「おいしー」

ハナの好みだったようだ。私もシュクメルリを一口…美味しい。寒い季節に合う。


「カナちゃん、パンとって」

「どれがいい?」

「うーんとね…えっと…チーズのパンがいい」

 胡麻とチーズのパンを取ってやると美味しそうに食べてくれて嬉しい。


「昨日の昼メシは俺たちはここで肉を焼いて食ったんだ。カナたちは何を食べたんだ?」

「ハナと2人だったからベーグルサンドとサラダとスープでワンプレートにしたよ」


「食った気がしないやつか!」

 勤務先のホテルの女子会プランをバカにしがちだった父さんらしい失礼なコメントだった。父さんによると見た目の綺麗さよりも利益率ギリギリを攻めてホテルを苦しませるようなプランを利用するお客さんが賢いらしい。あからさまなぼったくりじゃなければいいじゃんと、いつも喧嘩になるが私は大人なので今日は黙っておいた。



 午後は瓦の焼成。これは父さんとリザに任せる。瓦は1,000℃以上の高温で焼き上げるらしい。アルバロが土魔法で大きな竈門を作ったのでみんなで瓦を並べた後、危ないのでハナを抱っこして離れた。私たちは内装を担当しよう。


 中から見ているとドラゴン化したリザが豪快に火を吹いて石炭が一気に燃え上がった。高温で長時間焼くと寒冷地の凍結にも耐えられる丈夫な瓦が出来上がるらしい。父さんが石炭を足してはリザが火を吹いている。



 私とハナは浴室に石を並べて露天風呂っぽく仕上げたり、窓枠を朱色に塗ったりした。あと1〜2週間で出来ちゃうかも。魔法って凄い。

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