第137話 ベーグルサンド
翌朝、ハナと一緒に祝福の木の様子を見に行った。2週間ほど滞在してもらって治療をすることになっている。
下から上までじっくりと鑑定してゆくが病気の部分は見つからなかった。
私が鑑定している間、ハナは小さなバケツに聖人の泉の水を汲んでは取手を咥えて運び、祝福の木の根元に撒いている。ハナが良い子で可愛くてつらい…後でぎゅうぎゅう抱きしめちゃおう。
「じゃあお薬を塗っていきますね」
昨日削った患部に薬を塗り終わると肥料を撒いた。
「何か不足しているものはありませんか?」
祝福の木の枝が何もないと言うように左右に揺れた。
「あのね、お水も肥料もじゅうぶんだって。時間がたてば元気になるって」
「そっか、通訳してくれてありがとう」
ハナをぎゅうぎゅう抱きしめたら最初は喜んでいたのに、しばらくしたらもがいて離れていった。『カナちゃんは大きくなっても甘えたさんなんだから』と言いながらブルブルして可愛い。
今日の治療を終えて家に戻った。今日はアルバロと父さんとリザだけで温泉旅館作りをするということなので私は家に残って家事だ。
ロボット掃除機を起動してハナに任せる。お昼は父さんたちと別々でハナと2人きりのランチなのでハナの好きなものを作ろう。
── 栗とりんごのベーグルサンドにするか。
まずはベーグル作り。
ボウルに強力粉、きび砂糖、塩を入れてよく混ぜる。中央にくぼみを作って水、ドライイーストを入れて生地がつるんとするまでこねたら生地を分割して丸める。
丸めた生地は間隔を空けて並べて、絞った濡れ布巾をかけて休ませる。
生地をベーグルの形に成形したらオーブンの天板に並べて発酵させる。その間に大きめのお鍋にお湯を沸かしてモルトシロップを溶かしておく。オーブンも予熱をはじめる。
沸かしておいたお湯に生地を入れて片面約30秒、裏返して30秒茹でたら水気を切って天板の上に戻してオーブンで焼く。
焼いている間に使った道具を片付けて具材を準備してインベントリに入れた。あとは焼き上がったベーグルに挟むだけだ。
「カナちゃん、お掃除終わったよ!」
「ありがとうハナ」
戻ってきたハナを抱きしめて浄化して撫でてベーグルサンドを仕上げる。
「今日のお昼はベーグルサンドだよ」
テーブルで焼き立てのベーグルを上下半分にスライスするのを椅子に座ったハナが丸い尻尾をピコピコさせながら見ている。
ベーグルにクリームチーズをたっぷり塗ってサーモン、薄切りにして水にさらした玉ねぎ、ケッパーをのせて挟む。
「鮭!」
期待通りの反応が嬉しい。
もう一つのベーグルにクリームチーズとマロンクリームを合わせたマロンチーズをたっぷり塗ってスライスしたリンゴを乗せて挟む。
「リンゴ!」
「ハナの好きなものばかり挟んだよ」
「ありがとカナちゃん!」
ベーグルサンドを半分にカットしてサラダとスープと一緒に盛り付ける。全部ハナと半分こだ。飲み物はハナは牛乳で私はカフェオレ。
ハナの手を浄化していただきます。ハナが鮭とクリームチーズのベーグルサンドにかぶりつく。
「鮭おいしー」
「サーモンとクリームチーズって合うよね」
私も大好きな組み合わせだ。
「リンゴのも食べる!」
リンゴのベーグルサンドを食べたハナがびっくり顔で固まった。
「カナちゃん!このリンゴ、栗の味がする!」
やっと気づいたか。
「クリームチーズとマロンクリームを合わせたマロンチーズを塗ってリンゴを挟んだんだよ」
「おいしー、これ大好き」
思った以上に気に入ってくれたようだ。
「お腹いっぱい…おいしかった」
食後、ハナがもたれかかってきたので抱き寄せて撫でながらオーガニックコットンについてスマホで調べた。
エステルが勤務するお店でアルバロと父さんに買ったシャツの手触りが忘れられず自分で作れないかと考えている。綿花は春に種まきだからお米作りよりも早く動かないといけないからアルバロに相談してみよう。
手触りの良い布が出来たら持ち込みでお仕立てを頼むのもいいな。




