第132話 家庭菜園とココア
錬金の翌日はアルバロに手伝ってもらって冬の家庭菜園を頑張った。
父さんはリザと一緒に海に行った。ハナが蟹のハサミに挟まれて諦めた大物を釣り上げると張り切っていた。
玉ねぎの植え付け時期は11月〜12月上旬で収穫は5月、いろんなメニューで使うのでたくさん植えた。
もう少ししたらジャガイモとにんじん。じゃがいもの植え付けは2月で収穫は8月、にんじんの植え付けはジャガイモと同じ2月だけど収穫は少し早くて4月。キャベツと大根とブロッコリー、カリフラワーも2月に植える予定だ。
少し前に植えたそら豆、さやえんどうも順調に育っている。
時間停止のインベントリは本当に助かる。少し前に大量に収穫したラディッシュが新鮮な状態で大量にあり、サラダの彩りにちょこちょこ使っている。
秋に収穫したエシャロットは全部父さんのインベントリだ。どこに入っているのか気づいていないけどたぶん頻繁に食べている。トマトとキュウリ、セロリと里芋とさつまいも、青梗菜、リーフレタスは父さんのインベントリと私のインベントリに半分ずつ。
畑仕事を始めるタイミングでさつまいもを焼きはじめたのでアルバロとハナは気になって仕方ないようだ。
「じっくり焼かないと美味しくないから、まだ時間がかかるよ」
「そうなの…」
ハナががっくりとうなだれる。
あまりにも可哀想で可愛いので甘やかしてしまうのは仕方ないだろう。
「焚き火でココアをいれようか、上にマシュマロを浮かべてあげる」
「やったあ!」
ハナとアルバロが笑顔になった。
「キッチンからお鍋と材料を持ってくるからアルバロはテーブルを出しておいて」
「わかった!」
材料を持って戻るとアルバロとハナがわくわく顔で待っていた。ハナの丸い尻尾がピコピコ動いて可愛い。
鍋にココアパウダーとグラニュー糖、ダンジョン産の美味しい牛乳をいれてダマにならないように混ぜる。ここで混ぜる牛乳は少なめだ。
よく混ざったら鍋を火にかけながら牛乳を加えて少しずつ伸ばす。温まったらカップに注いでマシュマロを浮かべる。ハナの分は少しぬるく作った。
「熱いから気をつけてね」
「ありがとカナちゃん!」
ハナにカップを手渡すと両手で受け取る。カップを包むお手手が可愛い。
「おいしー」
身体を動かしていたけど、ずっと外にいて冷えていたから温かいココアが美味しい。
「……」
アルバロがココアをじっと眺めながら何かを考えている。良からぬことを考えているに違いない。
「何を考えているの?」
「僕の世界にカカオ豆はあるのにチョコレートどころかココアもまだ無いんだよね」
「カカオ豆は利用されているの?」
「まだ誰にも収穫されたことが無いんだ」
「カカオ豆をカカオマスに加工して残ったココアケーキの粉末がココアパウダーなので相当な手間がかかっているんだよ。収穫されたことが無いなら遠い未来に期待するしか無いかもねえ」
「なんとかならない?」
── 神様がなんとか出来ないものを一般人に相談されても…
「ダンジョンにカカオ豆を生やしてみたら?鑑定の説明に産地や栽培に適した環境や簡単なレシピもつけて」
アルバロがポンと手を打った。
「良いね!カカオ豆の栽培に適した環境の全ダンジョンにさりげなく生やしてみるよ!」
── 平均気温が結構高い高温多湿の環境じゃないとダメだからレアなダンジョン内植物になりそうだな…。
午後も家庭菜園に精を出して3時のおやつに焼き芋を食べた。食べすぎを後悔して身体を動かすつもりで畑仕事をしたのにクリームチーズと一緒に食べてしまった…。美味しい組み合わせなので自分を止められなかった。
後悔しつつハナと一緒にお散歩ダンジョンでめちゃめちゃ動いた。




