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第127話 トニーニョさんの手紙

誤字報告ありがとうございました!

 グロリアさんとトニーニョさんをお祝いしたい人たちが続々と集まってきた。


 スイーツを引き渡したら特にやることも無いのでアルバロと一緒にドリンク係になっている。

 招待客は働き詰めのグロリアさんを心配していた派とトニーニョさんの拗らせ片思いを心配していた派の二大派閥に分類出来るようで、どちらの派閥もこの結婚を喜んで祝福している。


 どちらにも属さないのはグロリアさんの亡くなった旦那さんのご家族とトニーニョさんのご家族とグロリアさんのご家族だ。


 グロリアさんのご家族は再婚に安心しているようだ。マテウスさんのご家族は微妙そう。マテウスさんが亡くなって少し距離が出来てしまったが孫のミーナちゃんは可愛い。でも入り浸ったらグロリアさんに気を使わせてしまうので遠慮してきたが再婚したらますますミーナちゃんに会いづらくなりそうで不安といったところだろうか。


 トニーニョさんのご家族は、トニーニョさんが執念で結婚にこぎつけたけど、拗らせ過ぎてあいつ大丈夫か?という不安な気持ちと、いきなり父親になって大丈夫か?気を使いすぎてやらかして嫌われたりしないかという心配だろう。

 よくある状況だけど他人の私たちに出来ることは無い。この結婚をお祝いすることに徹しよう。



「皆さん!」

 料理が半分以上片付いたタイミングでトニーニョさんが話し出した。


「上手く話せる自信が無いので手紙を用意してきたので聞いてください」


 トニーニョさんが内ポケットから取り出した手紙を読み上げる。


「これはミーナへの手紙だ。俺を2人めの父親として受け入れてくれてありがとう。生まれてくる君に会える日をマテウスが指折り数えて楽しみにしていたことを覚えているよ。君が生まれた日にマテウスがはしゃぎ過ぎて階段から落ちたことも覚えている。君が初めてお喋りした日のことも何度も聞いた。俺はずっと親戚のおじさんのような気持ちで君の成長を見守ってきたんだ」


「君が成長する中で僕のことを口うるさいと思うことがあるだろう。夜更かししていたら早く眠るよう言うし、門限を破ったら叱るだろう。そんなことばかり言っていたら君に嫌われてしまうかもしれない。でも君が信頼され、愛される大人に成長するために必要なことだから俺は口うるさい父親になるよ」


「俺は君を1人のレディとして尊重し、敬意を持って接してゆくと誓うよ。グロリアとミーナ、君たちを愛しているよ」


 ミーナちゃんがトニーニョさんに抱きついた。

感動的な手紙だった。成り行きで家族になるよりも、こうやって自分の言葉で宣言するとことでトニーニョさんの中で新たな決意が生まれたようにみえる。



「うっ…ぐすっ…」

父さんが大きな身体を震わせていた。


「おふっ…」

アルバロも号泣だった。


 パーティーに出席している多くの方が涙ぐんでいるけれど、ここまで泣いているのは父さんとアルバロだけだ。


 ご家族を差し置いて泣きすぎだよ!

父さんをリザに任せてハナと2人でアルバロの背を撫でる。



「それからマテウスのおじさん、おばさん、これから俺もここに住むことになる。軍属の仕事は続けるが休みの日はこの宿の従業員だ。だからもっと気軽にミーナに会いにきて欲しい」


「いいのかい?」

「グロリアさんに気を使わせてしまうでしょう?」

「俺と一緒にミーナにマテウスの話をしてやってもらえないか?」


「…迷惑がられない程度にお邪魔させてもらおうか?」

「そうね、嬉しいわ」


「俺が宿を手伝うからミーナが会いに行ってもいいな。ミーナ、俺もちゃんと働くしグロリアに無理をさせないから安心して出かけていいんだぞ」



 カナたちが感動している頃、トニーニョは家族から『ミーナちゃんをマテウスの実家に行かせている間にグロリアさんに甘えようとか考えていたらどうしよう。そんなことをたくらんでいたら感動が台無しだぞ』などと心配されていた。



 自分の家族からあまり信用されていないトニーニョだったが、宣言通りグロリアとミーナを大切にし、グロリアとミーナからも愛される家族になった。

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