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第124話 合コン

 今日は待ちに待った合コン!


…しかしアルバロがついてきた。ちょっと邪魔だが仕方ない。



 女の子はクラリッサとエステル。クラリッサはエルフでエステルはハーフ・サキュバス。

 男性は王都でも結構大きい商会の若旦那で妖狐のたつみたつみの友人の遠野トーノ遠野トーノは魔族の血を引いており、予想通り闇っぽいビジュアル系バンドのメンバーのような容姿で、たつみは妖狐だと聞いてイメージしていた通りつり目で狐っぽいイケメンだった。



── 今日はエステルと巽と遠野とも友達になるのが目標だ。


 早々に本日の婚活を諦めて友達作りに目標変更した理由はハナだ。今日のメンバーからハナがモテモテなのだ。全メンバー人気がハナに集中しており足掻く気にもならない。友達になって後日改めて長命種族の友達を紹介してもらおう。



「ハナちゃん、私と半分こしましょう」

 クラリッサが棒状のクラッカーをくわえてハナを抱きとめるとハナが反対側からサクサクと食べ進める。

「やーん、ハナちゃんとチューしちゃった♡」


「ハナちゃん、次は私と半分こしましょう」

 エステルともクラッカーを半分こしてた。



 モテモテの逆ハーレムだ。ハナが超モテている。


「カナはハナちゃんみたいな可愛い妹がいていいねえ」

「ハナがおねえちゃん!」

ハナが巽に反論する。


「ハナちゃんがお姉さんなのかい?」

「そうだよ!ハナの方が早く走れるんだから」

「早く走れる方がお姉さんなのかい?」

「うん」

 巽はテイマーのスキル持ちでハナと会話出来るが今までパートナーを迎えたことは無く、従魔と触れ合うのは初めてだと興味津々だ。


 ちなみに今日のアルバロはハナの通訳に徹している。


「母親を亡くした赤ちゃんのハナを私が2〜3歳くらいの頃に父さんが連れて帰ったの。私が生まれてすぐに私の母さんも亡くなってて、兄弟姉妹もいないんだけどハナが一緒なら私が淋しくないだろうって」

「ハナも赤ちゃんだったけどカナちゃんもヨチヨチだったのよ。小さいカナちゃんは可愛いかったの」


「あの頃のハナは全然言うことを聞かなくて大変だったよ」

「カナちゃんが子供だったのよ」


「初めて1人でハナのお散歩に行った時は散々だったよ。30分で帰るはずが全然言うこと聞かないし、いつもと違う道に行きたがるし」

「あの時はカナちゃんがわんわん泣いてびっくりしたのよ」


「予定より帰りが遅いから心配した父さんが探しにきて両腕に私とハナを抱えて帰ってくれたんだけど、家に着いたらハナに爆舐めされて号泣しちゃった」

「カナちゃんは泣き虫だったのよ。ハナはお姉さんだから心配だったの」

「軽くペロってされるのは可愛いけど爆舐めは嫌だったんだよ」


「ハナ、スモークサーモン食べたい」

 ハナが知らんぷりでスモークサーモンを強請ると巽が言いなりにハナの口にスモークサーモンを運ぶ。


「うちの商売にテイマーのスキルは必要ないと思っていたんだけど、なんだか僕もテイムしたくなってきたよ」

「すっごく可愛いよ。子供の頃よく熱を出したんだけど私が寝込むといつもハナが側にいてくれたのは嬉しかったなあ」

「ハナはカナちゃんのお姉さんだからね!」


 合コンというよりハナを愛でる会だったがハナが可愛いと評判で嬉しい。



「ハナちゃん、これもどうぞ」

あーん。

「おいしー」


 クラリッサが手配してくれて今日の料理はハナの分もしっかり一人前ある。ハナが上手にフォークやスプーンを使って食べる姿が可愛いと評判だがクラリッサがせっせと給餌してくれてハナも喜んで食べている。


「ここのお料理、美味しいね」

「遠野の友達のお店なのよ」

「価格も雰囲気も気取らない居酒屋だから贔屓にしてやってよ」

「父さんが喜ぶと思う。今度は家族で食べにきたいな」


「カナのお父さんはムキムキな冒険者で錬金もするのに本職は料理人なんですって?」

「父さんの料理は本格的だし、なんでも料理するよ。私の専門はパンとスイーツ」

「いくつか商業ギルドにレシピを売ってくれて富裕層の間で評判なのよね」

「いい条件で買ってくれて助かったよ、ハナに美味しいフルーツ買ってあげられるもんね」

「ハナ、カナちゃんが焼いたパンにジャムとバター塗ったの大好き」

「また焼こうね」

「うん」



「そうそうエステルは男性向け服飾店の販売員なの、良かったらアルバロさん行ってみてね」

「アルバロさんはスタイルが良いからおすすめし甲斐がありそう」

「2人とも髪を切るときは僕のお店にきてよ、男性も女性も1番似合う髪型にしてあげる」

 遠野は王都の売れっ子美容師だった。



「ハナちゃん?」

 ハナが巽のお膝で船を漕いでいることにエステルが気づいた。

「…ハナ眠くなっちゃった。カナちゃんスリングだして」

「ちょっと待ってね」


 インベントリからペットスリングを出すとハナがみんなの膝から膝へぽてぽて歩いて戻って来た。ペットスリングを肩に掛けると『よいしょっ』と言いながら短い手足でよじ登ってスリングの中におさまった。


「か、可愛い…」

「自称お姉ちゃんなのに甘えんぼなのね」


「…真剣にテイムを検討するよ」

「可愛いけど手がかかるよ。あんまり大きい子だとお世話も大変だし。相性の良いパートナーじゃないと大変そうだから契約する前に相性を確かめてね。ちなみにハナはお風呂嫌いなの。浄化魔法を使えなかったら大変だったと思う。ブラッシングも尻尾は嫌がって暴れるし」


「そうだね、よくよく考えないとお迎えしても不幸にしてしまうね」

「同じ家で一緒に暮らすなら抱いて運べるサイズの子がおすすめだけど、大きい子も可愛いよね。この先ハナが大きくなったら引っ越しするつもりなの」

「僕みたいな初心者がいきなり大きな子のお世話は難しそうだね、アドバイスありがとう」

「良い出会いがあると良いね」

「ありがとう」


 そこからは打ち解けた飲み会になった。この世界に同年代の友人がいないので、こういうのは久しぶりで楽しかった。



「じゃあね、今日は楽しかったわ」

「またこのメンバーで飲もうよ」

「長命種族同士、親交を深めるっていいな。これからもよろしく!」

「カナ、お土産ありがとう!」

「私こそ楽しかったよ、またね!」


 みんなにはクロワッサンとブリオッシュとパン・ド・ミーとジャム3種と発酵バターといちごバターを籠に入れて渡した。今日の合コンは捨てたけど料理上手をアピールしておけば今後の婚活を有利に進められるだろう。



── 合コンの帰りに同じ方向の人に送ってもらって仲が進展することもあるけど今日はこいつがいるからそれも期待出来ないな…と思いながらアルバロを見るとほろ酔いで上機嫌だった。楽しい飲み会だったから、まあいいか。

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