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第121話 ステンドグラス作り

 今日は父さんとリザとハナが一緒に出かけた。ちまちました作業はハナが飽きるし、ガラス片が危ないので出かけてもらったのだ。ドラゴン化したリザに乗って秘境を探検するらしい。



 まずは色付きガラスを錬金するところからだ。

アルバロがガラス片とマリーゴールドを錬金釜に入れて魔力を流したら鮮やかなオレンジ色の板ガラスが出来た。ガラス片とピンクのガーベラでピンクの板ガラス。


「綺麗な色になったねえ」

「…カナが持ってるのは枯葉?」

「そんな顔しないでよ、秋っぽい色が欲しいんだから」


 紅葉した葉っぱで深い茶色やワインレッド色の板ガラスが出来た。


「結構いいね!ドブ色になるかと心配だったけど」

── アルバロが一言多い。


 私たちは家の四方向ごとにテーマを決めてステンドグラスを作ることにした。

 源氏物語の主人公・光源氏の邸宅、六条院のように辰巳(東南)の方角の窓を春、丑寅(東北)の方角の窓を夏、未申(西南)の方角の窓を秋、戌亥(西北)の方角の窓を冬に見立てることにした。


「じゃあ僕が春と夏でいい?」

「私が秋と冬ね」


 秋はクリムトの接吻の人物が纏う衣装のようなゴールドの背景にエミール・ガレの蜻蛉をイメージした。…そういうのを作りたかったのに出来上がったのはパウル・クレーが描く天使みたいだった。


── 色だけは綺麗だからいいか。次だ次。



冬は青地に白で樹氷をイメージした。


── これはいいんじゃない!


 失敗しようのないモチーフを選んだ自分を褒めてやりたい。青い背景に白で木を描けばそれっぽくなる。木の出来が子供のお絵かきレベルでも雰囲気バッチリだ。


「良いじゃん!」

振り返るとアルバロがいた。


「これは樹氷だよ」

「冬だもんね!」

「アルバロも出来たの?」

「うん、見る?」

「見る!」


── ずるい。神様クオリティはずるい。


 アルバロが作った春のステンドグラスは花々が咲き乱れる芸術点も技術点も満点な見事な出来栄えだった。


「な、夏は?」

「こっちだよ」



── 夏もヤバかった。

「手前が向日葵で奥が緑の気配が濃い山、空の青は夏っぽい色を意識してみたよ」


「このレベルのステンドグラスを作っちゃって大丈夫なの?時代とか技術レベルとか超えてない?本当に大丈夫なの?」


「大丈夫だよ。このくらいは作れる職人がいるから。魔法や錬金が得意なら不可能じゃないんだよ」

「そうなんだ…」

「ごめん、予め言っておけばよかったね。カナ、作り直す?」


「…ううん、あれが私の実力だし」

「そう?あ、そういえば秋の作品まだ見てなかった!見にいこうよ」


 気乗りしないがいつかは見られるので重い足を引きずって西南の窓を見に行った。



「秋の実りと、実ったものが一斉に枯れてゆく滅びが同時に存在する哲学的な作品なの。豊穣と滅びを表したステンドグラス」



── 概念だと言い張った。蜻蛉なんて作っていない。

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