第120話 色付きガラス
ステンドグラスを作るには色付きガラスを作る必要がある。
酸化鉄をガラスに添加すると青緑色になり、酸化銅を添加するとターコイズブルーのガラスになる。
なので材料を探しに行くのはまたの機会にしよう。それも一度では揃わないな…国中を回らなきゃと思ったらアルバロがやりやがった。
「僕の世界には錬金があるから地球とは違うんだよね」
── アルバロがちょっと偉そうだった。
「お花とガラスを錬金すると色付きガラスになるように設定したよ。赤い薔薇で赤いガラス。向日葵で黄色いガラス」
── アルバロが乙女ちっくだった。
「ガチガチの鉱物を合わせて作るものとばかり…」
「せっかく綺麗なガラスを作るのに鉱物?」
── 私よりもアルバロの方が可愛くて乙女で悔しい。
「古道具屋でガラス片を買おうよ」
ハナをペットスリングに入れてアルバロと一緒に古道具屋に向かった。
「ハナ、これに入るの好き」
「私もハナと密着できるから好きだよ」
ペットスリングに入ったハナはいつもより甘えっ子になって可愛い。いちゃいちゃしながら歩いているうちに古道具屋に着いた。
「いらっしゃい、何を探しているんだい?」
「ガラス片を買いたいんだ」
「割れた破片でいいのかい?」
「うん」
「それなら量り売りになるよ、1kgで6,000シル」
窓ガラスの大きさを思い出して悩んでいたらまとめ買いは割引すると言われ、思い切って15kg買った。素材が余ったらとんぼ玉を作りたい。博物館で見る古代のとんぼ玉も現代の技術で作られたとんぼ玉も大好きだ。とんぼ玉の帯留めも高いものは素敵なんだよね。
「まいど!」
古道具屋の主人に見送られて店を出た。
「そろそろお昼だから市場に寄ろうよ」
王都中央市場の横にある屋台村は広くて、まだまだ食べていないものが多い。
「ハナ、美味しい匂いする?」
「あっち!」
ハナに導かれるまま買い物をした。
大きなお鍋で作られたタルティフレットのような料理と野菜スープを買った。
「おいしー」
「じゃがいものグラタンみたいなのがこってりしてるからシンプルな野菜スープと合うね」
タルティフレットはフランス・サヴォワ地方の郷土料理だ。茹でたじゃがいもに炒めた玉ねぎとベーコンを乗せて生クリームを回しかけてからルブロションというセミハードチーズを乗せてオーブンで焼いた料理だ。屋台なので大きなフライパンで作っていた。
「本当に美味しいね、フランスの製菓学校に通っていた頃によく食べたタルティフレットに似てる」
「ハナ、それも食べてみたい」
「じゃあ今度、家で作ろうか?ルブロションていうセミハードチーズを乗せてチーズに焼き色がつくまでオーブンで焼くんだよ」
「作って!」
「はいはい」
食後、王都の中古住宅に戻ると父さんとリザが庭仕事をしていた。
「ただいまー!」
「おかえり」
ハナをスリングから出すと父さんのもとにまっしぐらだ。
「何を作ってるの?」
「花壇だ。家庭菜園は我が家にあるからな」
確かに野菜は充分だ。
「少し前にお隣さんに会ったぞ」
「そうなの?」
「仕事で留守にしていたとかで今日帰ったらしい。ちょうど焚き火で焼き上がった栗をお裾分けしたら喜ばれた。熊獣人で栗が好物だと言っていたな」
「そうなんだ!」
ハナと仲良くしてもらえるかもしれない、会うのが楽しみだ。
「うちも本拠地は別にあると伝えたよ。滅多に会えないのは残念だけど大歓迎だって」
「私たちも会えるといいな」
「いくらでもチャンスはあるだろ」
「そうだね」
庭仕事を少し手伝ってから魔法陣で我が家に戻ってハナのお散歩ダンジョンに行った。今日のダンジョンは草原のフィールドで、色とりどりのお花が咲いていたのでハナが魔物を倒す横でステンドグラスのために、せっせとお花を採取した。




