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第111話 デニッシュを試作

「王都でレシピを売るのか?」

「うん、富裕層が多いから需要があるんだって」


 グロリアさんが元気になったので宿のお手伝いは終わった。私たちは素泊まり客に戻って王都で食べ歩いたり我が家で和食を食べている。鈴蘭亭のご飯は洋食縛りだったので和食が恋しかった。今日は我が家で牛丼だ。


「おいしー」

ハナも牛丼を気に入ったようだ。



「俺もレシピを売りたい。米が一般的になったらオムライスなんかも作れるんだ」

「安定した品質のお米を入手できるかな」

「米のメニューが人気になったら美味い米を作る農家が出てくるだろ」

そういう発想か!逆転すぎるわ。



「何を作るの?」

 食後に後片付けをしていたらアルバロが聞いてきた。

「デニッシュを考えているんだ。富裕層の朝食とか軽食っぽいでしょ」

「デニッシュ?」


「発酵させたパン生地にバターを挟んで3つ折りに畳んで伸ばしてを繰り返して27層以上に重ねたリッチなパンだよ。艶々のジャムを乗せたり、カスタードやフルーツを乗せたり見た目も華やかなんだ」

「へえー!貴族が喜びそうだねえ」



 夕食の後で仕込みを始めた。最初に折り込み用のバターを正方形に伸ばして冷蔵庫で冷やしておく。


 ボウルに粉類、卵、水、イースト菌を入れて混ぜる。粉気がなくなったらバターを入れてさらに混ぜる。生地がひとまとまりになったら台に出してこねる。表面がざらついているくらいでOK。

 生地をボウルに戻して暖かい場所で20分くらい発酵させたら台に出して生地を上から手で押さえてガスを抜いて正方形にする。生地にぴったりとラップをかけて冷蔵庫で一晩休ませる。


「今日はここまで」

「えー」

ハナとアルバロがガッカリ顔だ。

「生地を寝かせる時間が必要なの。明日まで出来ることはなし」


 ハナをお風呂に誘ったら『もう寝る』と言って自分の部屋に逃げた。逃げ足が早くて可愛い。つまみ食いを強請られる心配も無くなったのでカスタードクリームを作って冷やして寝た。



 翌朝、いつもより早く起きてデニッシュを焼いた。


 台に打ち粉をふって生地を取り出し、めん棒で正方形に伸ばしたらシート状にしたバターを生地に乗せて折りたたむ。めん棒で縦長の長方形に伸ばしたら、向こう側と手前から折って三つ折りにする。普通はここでラップに包んで冷蔵庫で30分休ませるんだけど冷却魔法で一瞬で冷やした。魔法、超便利。

 90度向きを変えて伸ばして三つ折りにしたら冷却魔法で冷やす。同じようにもう一度三つ折りして冷却魔法。


この時点でインベントリに入れて複製しまくる。


 生地を1つ取り出して成形。打ち粉をふった台に生地を取り出して伸ばして一辺10cmくらいの正方形10個に切り分けてデニッシュっぽい菱形に成形したら少し暖かい場所で発酵させる。

 刷毛で表面に溶き卵を薄く塗って中央の窪みにカスタードをのせて焼く。


 発酵や焼成の時間を利用してダンジョンから出た美味しいフルーツをカットしたりチキンサラダを作って後片付け。


 デニッシュが焼けたらインベントリに入れてたくさん複製した。食べる直前にフルーツを乗せてナパージュを表面に塗れば艶々で美味しいデニッシュの出来上がりだ。クリームチーズやコンフィチュールを乗せても美味しい。



「カナは早いな」

 父さんが起きてきた。

「デニッシュの試作をしたんだ。後で商業ギルドのクラリッサのところに持っていくよ。朝食もデニッシュでいいよね?」

「ハナちゃんとアルバロが楽しみにしているんだろ?」

「うん」


「チキンサラダも作ってくれたのか」

「うん、スープはインスタントにしようよ」

「インスタントのスープは美味いよな」

 料理人だけどインスタントも大好きな父さんがリザのために卵とベーコンやソーセージを焼いた。手抜き大好きなのにリザのために手間を惜しまないのは良いと思う。



 ハナがのそのそ起きてきた。

「おはよう、カナちゃん」

「おはようハナ」

「甘いにおいがする?」

 ハナがフンフンする。微かな甘いにおいに誘われて目が覚めたらしい。

「昨日の夜に仕込んだデニッシュを仕上げたよ。アルバロを呼んできてくれる?」

「うん!」

 ハナが四つ足で駆けてゆく。ポフポフの尻尾とお尻が可愛い。



 アルバロとリザも揃ったので朝ごはん。

「今朝焼いたデニッシュだよ。コンフィチュールを乗せたのとフレッシュなフルーツとカスタードを乗せたの。好きなものをとってね、追加で出せるから食べたい組み合わせがあったら言ってね」

 インベントリから大量のデニッシュを出すとハナとアルバロから歓声があがった。


「ハナはどれにする?」

「ぜんぶ食べたい…でもハナそんなに食べられない」

「じゃあ種類をたくさん食べられるように私と半分こしようか?」

「うん!」

ハナが選んだデニッシュを半分にカットしてお皿に乗せる。


「おいしー」

「気に入った?」

「うん」


「アルバロは足りる?」

「うん!これ美味しいね!サラダやスープでリセットするとその度に最初の一口の感動が甦るよ!」


デニッシュはアルバロが完食した。

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