第110話 クラリッサ
ハナを連れて商業ギルドにきた。
父さんとリザとアルバロはグロリアさんに料理を教えている。グロリアさんが静養している間に振る舞った料理を鈴蘭亭の定番にすると張り切っている。
「すみませーん!」
「いらっしゃいませ。コンフィチュールのカナさん」
「実はモンテ・トラスの冒険者ギルドのイレーネさんからの紹介状があるんです」
「クラリッサ宛ですね、少々お待ちください」
── グロリアさんが元気になるまではと我慢していた婚活!合コン!この王都では家族の誰もやらかしていないし、私の怪力もバレていない…イケると思う!
巻き髪の美女エルフが現れた。ちょっとギャルっぽい雰囲気だ。
「はじめまして、イレーネおばちゃんのお知り合いですって?」
── 絶世の美女のイレーネさんがおばちゃん…確かに姪と言っていたけれど…
「…面白いわ!」
私が黄昏ている間に紹介状を読んだクラリッサが立ち上がった。
「男女3対3とか5対5くらいの人数で行う飲み会は普通だけど、手拍子やコールで盛り上げての一気飲みとか、ポッキーゲームでイチャイチャとか第一印象ゲームとか王様ゲームで男女の距離を近づけるって発想は無かったわ」
「王都で合コンしたいなあって」
「任せて!未婚でフリーの男女を集めるわ」
「頼りになるぅ!」
「イレーネおばちゃんが長命種族って指定してるけど間違いない?」
「私も長命種族なの。カミロさんにも結婚相手を探すなら長命種族同士がいいって言われて私もそうかなって」
「ひいおじいちゃんにも会ったの?相変わらず元気だと思うけど」
「ローレの冒険者ギルドでマイペースに働いていたよ」
「そっかー」
「合コンにハナも連れて行ってもいい?私のパートナーなの」
「大歓迎よう!可愛い〜」
「良かった〜」
「ねえ、私もお願いがあるんだけど」
「なに?」
「ドス・グラントの商業ギルドで焼き菓子のレシピを販売したでしょう?王都向きのレシピって無いかしら?あたし今期の実績が足りてないの」
「どんなものが良いの?スイーツ?パン?」
「富裕層向けの贅沢品がいいわ。贅沢品ほど高く売りつけられるもの。せっかく王都にいるんだから見栄っ張りなお金持ちに出来るだけ高く売りつけてやりましょうよ!」
クラリッサが拳を握った。
「…何か考えて試作してみるね」
── クラリッサは欲望を隠さないタイプの美女だった。




