第106話 ハナの寝起き
昨夜も魔法陣で我が家に帰った。
翌朝はアルバロにリザとハナを託して早い時間に王都の鈴蘭亭に行って朝食の支度をした。
私はパン屋勤務で朝が早いのは慣れているし父さんもホテルの朝食ビュッフェで早朝勤務が多かったから朝から働くのは問題ない。朝の弱いリザとハナは置いてきた。起きて私たちが居ないとぐずるだろうからアルバロには頑張ってほしい。
「誰か降りてきたね」
「おーい、朝メシできてるぞ」
現れたのは商人のお嬢さんたちだった。
「あんたたち…」
「早いから勝手に退去するって言ったじゃないか」
「せっかくだから見送りくらいさせろよ」
「朝食ですよ」
パンとソーセージと目玉焼きとほうれん草のポタージュ。
「これまた美味しそうだね!」
「いただくよ!」
お嬢さんたちはもりもり食べた。
「このスープ美味しいね」
「ほうれん草だ」
「ほうれん草は貧血に良いんですよ」
「グロリアの為に作ったのかい」
「おかげで私たちまで美味しいスープをいただけちゃったね」
お弁当代わりに父さん特製の干し肉を渡してお嬢さんたちを見送った。
全員に朝食を出したところにミーナちゃんが起きてきて宿泊客に囲まれた。
「おはようミーナ」
「グロリアさんはどう?」
「まだ寝てる」
「自然に目が覚めるまで休ませてあげようね」
「うん」
「ミーナちゃん、ご飯は?」
「食べる!」
「このスープ美味しい」
「ほうれん草は貧血に良いんだ。お母さんは貧血だから、ほうれん草やレバーを食べてもらうようにしてな」
「うん!」
「ミーナ、手紙はどうする?」
男女の旅商人のグループがグロリアさんの実家方面に行く予定があるので手紙を届けても良いと言っている。
「お母さん、心配かけたくないって。倒れたって知らせてもおじいちゃんもおばあちゃんも何も出来ないし。心配かけるだけだからって」
「そうなの」
「王都にはお父さんの実家があるんだっけ?」
「あんまり頼りたくないって」
「そうなの…」
「元気になるまで手伝ってくれる通いの人を探した方がいいかもね」
「ギルドの紹介なら悪い人は来ないから」
「お母さんに話してみる」
「しばらくは俺たちが居るからな」
父さんは長期滞在を決めたようだ。
「ありがとう」
しんみりしたところにハナが騒がしく階段を降りて来た。
「カナちゃーん!」
ハナが弾丸のように飛び込んできたので受け止めて抱き上げる。
「起きたらカナちゃんいなかった〜」
しがみついて泣くハナが可愛い。
「ごめんごめん。よく眠っていたから起こさなかったんだよ」
「ハナも一緒がいい〜」
「アルバロが居たでしょう?」
「カナちゃんがいい〜」
「んんっ!もう可愛いなあ!ハナが可愛い!」
ぎゅうぎゅう抱きしめながらアルバロを見るとぼろぼろにやつれていた。ハナが相当ぐずったようだ。さらに横を見るとリザが父さんに抱きついていた。なんかごめん、アルバロ。
「すみません!誰かいませんかー」
受付の方で声がした。
「誰だろう?」
「パン屋の配達とか?」
「パン屋さんの声じゃないよ」
「僕と一緒に行ってみようか」
「うん」
アルバロがミーナちゃんの手を引いて受付に行って、軍人さんを連れて来た。




