第103話 王都
1週間かけて王都に来た。道中、浄化と採取を頑張ったのでマッピング地図に赤や黄色の地帯はなく綺麗だし、インベントリの中には薬草や錬金済のポーション類がいっぱいだ。
「王都に入る行列はすごいね」
今までで1番列が長い。
「王都だもんなあ」
馬車の中から我が家に転移して庭でハナを遊ばせて順番が回ってくる直前にアルバロに迎えに来てもらって馬車に戻った。父さんとの会話に夢中なリザは私とハナが途中で抜けたことに気づいていない。
「そろそろ順番だ」
「ハナ、スリングに入って」
「うん」
全員降りてギルドカードを見せる。今回もハナがドヤ顔でギルドカードに魔力を流してピカピカさせて可愛いと褒められた。
「王都の滞在をお楽しみください」
あっさり通されたので父さんが馬車をインベントリに収納して城門を潜った。
まず向かった先は冒険者ギルド。ちらりと掲示板を見ると依頼は少ないようだった。まずは受付で魔石やドロップ品を買ってもらうことにした。
「はじめまして、ゼカと申します。本日は買い取りですね、どんなものになりますか?」
お散歩ダンジョンで毎日たくさん倒しているので魔石もドロップ品も豊富にあるのでサンプルに1つずつ積み上げようとしたら途中で止められて倉庫に案内された。
「いつも、その街で需要の高いリストをもらって、リストにあるものを出してゆくスタイルなんです」
「では私もリストを持ってきますね」
ゼカさんがリストを取りに行っている間に魔石の入った巾着を並べた。今では米袋のようなサイズになってしまった。
「お待たせしました。これは?」
「魔石です。質の良いものは王都でなら買い取り可能と聞いたので」
「とりあえず全種類を出してみた。巾着ごとに質を揃えてある」
「こっちがクズ魔石」
「反対側が1番質が良い。うちの裏の海で釣り上げたクラーケンの魔石だ」
「…はい?」
「我が家の裏が海でな、みんなで釣った」
「クラーケンは肉も買い取りして貰えなくてインベントリに残っているのでぜひ買い取りお願いします!」
「まだたくさん残っているんだ。リザがクラーケンより肉を好むから減りが悪い」
「クラーケンも美味しいですよ、お肉はもっと美味しいです」
「リザが本気を出してくれたら1年で完食できるよ」
「お肉の方が美味しいです」
そんな会話をしていたらゼカさんがギルドマスターを連れてきていた。
「ギルドマスターのパルミラよ。クラーケンの魔石を見せてもらっても?」
「どうぞどうぞ!」
買い取り金額に期待して待つ。
「とても良い魔石ですね。職人ギルドが欲しがるでしょうから買い取りさせてください」
「クラーケンの肉もあるぞ!」
「食品は後ほど別室でお願いします」
喜んでゼカさんが持ってきてくれたリストにあるドロップ品を出しまくった。
「すっごい金額…」
クラーケンの魔石だけで3,400,000シルになった。王都は高級品が売れるので全部を合わせたら2億超えだ。
「どれも品質が良いのでありがたいです。食品は別室でお願いします」
パルミラさんとゼカさんの後をついてゾロゾロ移動した。
「浄化したらいいか?」
「…ぜひお願いします!」
父さん(と私)が全員を浄化するとパルミラさんとゼカさんが驚いて目を見開いていた。ムキムキの父さんがエルフの血を引いている設定に驚いたんだろう。なんかごめんなさい、ただの厨二病の日本人なのに。
「一度に全員を浄化出来るとは素晴らしい腕前ですね」
「そうか?」
「ここに出しても良いですか?」
「はい、お願いします」
「まずはクラーケンを少し」
スーパーで売ってるパックくらいの量を出した。
「これはサンプルだ。実際には200倍あると思ってくれ」
「鑑定しても?」
「どうぞどうぞ!」
ついでに私も鑑定してみた。
【クラーケンの肉】
釣れたての鮮度。透明で肉厚で美味い。ゲソも美味。お造り、海鮮丼、姿焼き、一夜干し、フライ、天ぷら、ゲソの唐揚げ、クラーケンとセロリのマリネ…どう料理しても美味い。
「ずいぶん良いインベントリ持ちなんだな、料理人が喜ぶだろう。購入希望者が現れたら都度出してもらってもいいかな?」
「ああ、それで頼む」
「じゃあ次ね」
いろんなダンジョンで出た肉やチーズ、ハチミツやフルーツ、シーフードなどを出したら全部買い取ってくれて670,000シルになった。
「すっごい金額になっちゃったね!」
「そうだな!」
「でも貼り出されている依頼は少なかったね」
「王都は近くに危険な場所も少ないので薬草の常時依頼くらいしかないんです。王都に暮らす通常レベルの冒険者は便利屋のような存在なんです」
王都に家を構える有力な冒険者もいるらしいが彼らは王都で仕事をしないらしい。
「確かに王都にキメラやワイバーンが現れたら大騒ぎですよね」
「王都の全住人がパニックを起こしますね」
王都で依頼を受けることは無さそうだ。パルミラさんにおすすめの宿を教えてもらって冒険者ギルドを後にした。




