告白。
「ええ! 付き合い始めたぁ⁉」
勉強を始めて一時間ほど。
何やらごにょごにょとしゃべっていた女子連中のほうから、そんな声が響いた。
ちなみに、僕はチヒロの勉強を見ている。
やばい。
マジで、よく受かったなっていうレベルで、呑み込みが悪い。
と、今はそれより大きそうな問題が発生した感じがする。てか、勉強してたんじゃないの君たち?
「遠山君、今の話ほんと?」
春山の友達、確か名前は深山と言ったか、が、僕に聞いてくる。
いやだから、勉強会における質問って、そういうのじゃないでしょ?
でもまあ、一応答えるか。ここにいるやつらには、そのうち言わなくちゃならないと思っていたわけだし。
「ああ」
答えると、周囲はざわりとなった。って、ざわざわするほどの人数いないけどね?
少しの間をおいて、深山が聞いてくる。
「で、どっちから告ったの?」
僕が答えた方がいいかな。
「僕からだよ」
「え!? お兄ちゃんから告白したの!? 何で!?」
いや、なんでって......。
「いや、理由を聞く必要はないだろ......。僕が、その、まあ、そういうことだよ」
「わ、私のお兄ちゃんが、私のお兄ちゃんが......」
なにやらぶつぶつと言い出した双葉をよそに、会話は続く。
「告白の言葉はなんて言ったの? やっぱあれ? 文芸部員らしく、『月が綺麗ですね』みたいなの?」
「いや、普通に、ありきたりな感じだったと思うけど......」
「ああ、太宰治だっけ?」
「いや、さっきのは、夏目漱石だ。あれだ。彼が英語教師をしていた頃に、I love youをそう訳したってやつだな」
「ああ、それだ!」
「でも、さっきも言ったけど、いたって普通の、ありきたりなもんだったぞ?」
「なんだ、つまんないの」
「うるせえ。人生、そんなドラマチックにできてねえんだよ。そもそもだな、そんな告白の仕方して、相手が知らなかったりしたら、めちゃめちゃ恥ずかしいだろ? そんなことするやつ、現実には存在しねえんだよ」
「は、春山さん、といいましたか......?」
「え、あ、はい。春山小春と言います。よろしくね、双葉ちゃん?」
「いえ、よろしくしなくて結構です。お、お兄ちゃんは、あなたには渡しませんよ!」
「「「「「「えええ!?」」」」」」
その場の全員が驚いた。
いや、うちの妹大丈夫か? お兄ちゃんちょっと心配。
まあ、その後も、勉強会は特にハプニングなく進んだ。
妹ちゃんは、お兄ちゃん大好きです。
本編となっております同シリーズの別作品たちもよろしければお読みくださいませ。