戦略05 作戦会議③
ここでようやく入店時に頼んでおいたコーヒーが2人の前にやってきた。4月になり春を感じるとはいえ、まだ肌寒い日は多いので、湯気を立てている淹れたてのコーヒーはこの時期の一種のオアシスのように見える。
「なんか知らないけどコーヒーに見とれてるところ悪いんだけどさぁ、昇降口で悩んでたことは注目されるのが嫌ってだけではないんでしょ。この恋愛マスターの仁科大先生がどんな質問でも完璧なアドバイスをして差しあげよう」
コーヒーについ見とれていてわざわざ相談にのってもらっていた相手のことを忘れていたのは悪かったと思う。
だが自分のことを恋愛マスターだとか、大先生とか呼ぶのはちょっと痛いぞ。
まぁここまで話したら頼れる所は出来るだけ頼っていこう。
そう思い見つめていたコーヒーを一口だけつけた。
「瑠璃が自分に自信が持てないからみんなには付き合っての内緒にしてるって言ったじゃん。だから瑠璃がもっと堂々としていられるようにしたいなって思ったんだよ。でもそれがどうしたらいいかよく分かんなくて悩んでたんだ」
さっき口に含んだコーヒーの苦い後味が話終わってからやって来た。
今から砂糖とかを入れるのはどうかと思っていたら、こっちの話を聞きながらコーヒーを飲んでいた仁科もやっと後味がやって来たらしく砂糖を追加で入れていた。
「んー。やっぱり英二は瑠璃に変わって感じなのかな?」
「俺のためだけじゃなくて今後の瑠璃のためにもなると思うんだよね。だからこそ瑠璃を変えてあげたいかなって思ったんだ」
「愛だねー。そういうことであるなら手を貸してもいいかな。今日帰ってから考えてみるから時間ちょうだい」
「もちろん。こっちもいろいろと考えておくけど、案は多くても困らないしな」
「じゃあ、というわけでお会計よろしく~」
これからバイトだからと言って伝票だけ残してさっさと行ってしまった。
残された俺は一人で苦みの強いコーヒーをゆっくりと堪能してから帰ることにした。