ご、五本目!
俺の両脇では、姫様抱っこをしている野郎二人。
「君の名前なんての?」
「名前ってなあに♡私の事好き?ダーリン」
「うん、好き、無いならえと、まりんちゃんって呼んでいい?」
「うんいいわよ♡私の事、大好き?」
うん大好き♡まりんちゃん、面倒くさそうな彼女と、いちゃついてる磯辺。それより気になるのは、大人妖しい人魚を引き当てた砂浜田だ。自分の事などほっておいてそちらをガン見している俺。
「坊や、かわいいわ、わたしを引き当てたのなら……『坊やの坊や』が、何かに変わったの?」
うひぁぁお!流石大人だ。どストレートに聞いている。
「あ、はい、ハゲナマコに……」
あ、答えちゃってるし。
「透明で光ってるのね。ウフフいけない子ねぇ……私の事どう思ってて?」
おひゃ!お前の息子、透明で光ってるのか……そりゃ地獄を見たとか、俺達のはマシとかほざくはずだ。お姉さま、首に手を回して囁いているのは、お子ちゃまな俺達には危険だ。人魚だから上半身人間だし……すげーし!男を誑かす上級テクニックにしか見えん!
「あ、あ……綺麗で……いい……」
「ありがと、じゃあキスして私を貰ってくれる?人間になれるの。嫌なら……私はどんどん重たくなるのよ、重たくなって朝日と共に船を沈めるの……。泳げないと、あなたは溺れ死ぬのよ。フフフフ」
「ひぇ、き、キス……も、貰うって、けけけけ結婚、ですか?」
そうよ……毎日一緒に過ごすの。私のこと愛してくれる?何処からどこまでも♡うぉぉぉ!すげー事になってる。俺が興奮してたら、テヅルモヅルもそうなのか、ウネウネウネウネ踊り狂ってるし。
いけー!それやれー!姉ちゃんイイ!と酒盛りで盛り上がるおっさん連中の声。
「人魚と結婚すると……、別れられないの。浮気をしたらお仕置きするのよ、身体中にハゲナマコ生やしてやるわ。それでも、私のこと愛してくれる?どんな事されても好きだって言ってくれる?海の神様に誓ってくれる?」
「ほえ!結婚……ち、誓う!」
おい、肝心なこと聞き逃してるぞ、身体中に生やすって何だよそれ。誓って良いのか?
「うふふ、可愛いい坊や。『この河豚野郎!私の言う事聞きやがれ!』て……、ヌタウナギで攻めても愛してくれる?」
え……ヌタウナギ、ふぇぇぇ!ヌメヌメ責め……。このお姉様が攻めるの。砂浜田って、こっちだったのか……。
「愛します!何でも言う事聞きます女王様!」
女王。って言っちまってる。良いのか砂浜田。
「あら、素敵♡マイハニー、もっと言ってみて?」
うぉぉおー!我が家の嫁が!嫁はぁぁ!ナイスぅ!と網を上げながら砂浜田の親父が盛り上がっていた。いや!親父っさん良いのか?あの美魔女人魚様で、人間になると、いや今でも女王様だよ?
それに負けじと磯辺の親父も、俺っちの可愛いい嫁のがイイ!と叫んでるし……。そして爺ちゃんが話してきた。
「おま……雑念、邪淫が強いと、うるめみたいに坊主だぞ?手ぶらだ、まぁそれでも禿げて終わりだから爺ちゃんは構わんが」
「え!嘘!あー、でもそれでもいいかな……」
……磯辺のを見る。365日好きって言ってね♡浮気をしたら、顔もどこもかしこも青藍に染めちゃうぞ♡とまりんちゃんとやらが話している。
……砂浜田を見る。尾ひれは、脚になるのよね。あなたの頭に置いて、見下してもいいかしら?一度船の上で人間の女が男にやってたのを見て、憧れてたの、と女王様が話している。
人魚って……普通のいないのかな……、でも婆ちゃんは普通だし……コイツラがおかしいだけ?俺は不安になってきた。とんでもない運命の出会いがありそうで……と、取り敢えず棄権は出来ない様なので、せめて可愛いいの、カワイイの、kawaiiのと一心に祈ってみた。
息を詰めて水面を見つめていると……、クイクイ!と釣り竿に手応えが……何!来たのか!俺にも可愛いい子がァァ!グイっと引き寄せる様に上げると。
パッシャァァン!と軽い水音と共に出てきたのは……え!
「うほぉぉ!おま!ロリだったのかぁ!」
爺ちゃんの声が響いた!ドンドンドン!と太鼓が鳴らされた。三人共にとは目出度い!と村長の声が……。俺の親父が村長に声をかけている。
「いやー、ちっと若いが、俺や村長さんみたいに釣れないよりは、あの時は少しばかり辛かったです。先輩が俺もそうだと慰めてくれたから、他にも居るって教えてくれて、気が楽になったンスよ」
「ワーハハハ!本当に!あの時……周りに取り残され、オオイカリナマコだったし、慌てて舞い上がり……釣れなかったのは、若気の至りだな!まっ!ありのままの自分でイイと結婚出来たから良かった、うるめも良かった良かった、ワーハハハ!」
出来上がっているポンポン船のオッサン達。まりんちゃんと女王様と盛り上がっている幼馴染。そして俺は、俺は……び!美少女だが!美少女だが!見たところ小学校六年生位の女の子が出てきたしー!ひー!抱き止めねば泡になるんだっけ?
抱き止めたら……ロリ認定⁉パールピンクの尾ひれ、くるくる巻いた金の髪の毛、大きな菫色の瞳を一杯に広げた、さくらんぼの唇の人魚が、あたふたとしている俺に向かって飛び込んで来た。
テヅルモヅルが、かわいいその子に向かい触手を伸ばしている……。
次回で終わりですよー。