一本目
檸檬 絵郎様からお題を頂いたのですよ。テズルモズルって何やねん。深海生物で御座います。
テヅルモヅルを知っているか?
――テヅルモヅルとはクモヒトデ綱カワクモヒトデ目のテヅルモヅル亜目またはその中のテヅルモヅル科の棘皮動物の総称である。 1,000メートルくらいまでの海底に棲む。ほかのクモヒトデと同じように腕は5本あるがその腕が数十回も枝分かれし、触手となる。生息地では海中にこの触手を広げ、デトリタスなどを集めて食べている。 〜ウィキペディアより
こやつは学名『ゴルゴンの頭』と言われているんだよな。じいちゃんの船に乗って網を引き上げていたら……かかってたんだよ。かぁー!やめてくれよな。気持ち悪いんだよ、それはもう、まさにメデューサ……
どうせならテヅルモヅルに住む海老ちゃんいないかな?コイツ可愛いんだな、探して見たけどいなかった。
漁師をしているじいちゃん、採った魚で売り物にならないのは、当然ながら家で食う決まりの我が家。なので俺はわけのわからん深海生物を喰って大きくなった。
そこでだ!『テヅルモヅル』を喰ってみたくなった俺、だってその辺に放置してたら、カモメは中身食べてるんだぞ、食えない事はない!
陸に上がると俺は、一斗缶に流木を放り込み、火を起こした。そして網を乗せると熾火になるのを待ち、ソレを持ち上げた時、ポロリと落ちてしまった脚の一部を焼いた。残った部位は海にリリースしたのは言うまでもない。
喰えるのか!コイツ……こんがりと焼き上がったそれを、恐る恐る齧って見たが……みたが、ひたすら硬くて食えない代物だった。
「ぺっぺ!こんなの食えんわ!」
ポイっとソレを投げ捨てた。命は粗末にしちゃいかん!とじいちゃんの教えを忘れてた。せめて火にくべ成仏させておくのだった。それか海に還しておくのだった。
……、そして俺は、軽率な行動を後悔した。
「おま……頭どした?」
翌朝、すっかりテヅルモヅルの事等、忘れ果てて起きた俺に向かい、ばあちゃんのひと言。慌てて手を持って行くと……なんかあるし。
「……ばあちゃん、さっきラジオ体操してたの見たし……国会答弁見るの好きだし……俺よりしっかりしてっし……何がある?」
ジーと食い入る様に見たあと……おま、粗末にしよったなと脅してきた。ビビる俺に……
「なんだ?アレアレ、あー、なんだったか網にかかる、そじゃ!テヅルモヅルの脚が生えちょる」
見たままに教えてくれた。ガーン……。なんでや、なんで?そんなの生えとるねん。
「アーハハハ!おま、食えんかったから棄てたんじゃろ、祟られたんじゃ、ばあちゃん知らん」
そういうと青い顔してる俺を置いて、朝飯を食べに行ってしまった。髪の毛に紛れて何か生えて動いている存在感。良かった、親父みたいにハゲで無くて……、なんて少しばかり自分をなぐさめた。でも。
ううう……困った。あー、困った。どうにかならないかな?それに手をやればグニグニと絡まりついてくる、クイッと引っ張れば、
「嘘!いてててて」
痛かった……。これは……、早急に祟りを何とかせねば、散髪に行けやしない。それどころか人前に出れない……。
「うー、でもどうやって?ばあちゃん!ばあちゃん!祟りってどうやったら消えんの?」
俺は台所でクロワッサンサンドに、イワシのつみれ汁の朝ごはんを食べているばあちゃんに泣きついた。
「ん?コーヒー入れてくれたら教えちゃる。インスタントじゃないのがええ」
俺はコーヒーメーカーで、ばあちゃんの為に珈琲を入れる。いい香りが台所に広がる。良かった。ばあちゃん居てくれて、母さんは朝のこの時間は港で漁協のバイトしてていない。親父は一般サラリーマンなので今日は早朝会議だとかでもう出ている。じいちゃんは海の上だ。
「朝ごはん食べや」
マグカップを差し出すと、ばあちゃんはミルクを入れた後、角砂糖をトポトポトポと落とすと混ぜながら話してくる。そういや朝飯まだだった……。俺は母さんが作り置いていった、クロワッサンサンドを手にすると、モグモグと食べた。
「うう、ばあちゃんなんでやねん」
「ふ!それはやな、ダーリンに聞いたところによると……いつの時よりか知らん、この村に住む男はおまの年頃に……試練がふりかかるらしいんじゃ」
じいちゃんの事を『ダーリン』と呼ぶばあちゃんが、俺につみれ汁をよそってくれながら、ぶっ飛んだ事を話してきた。何だ?その『試練』てのは!
―テヅルモヅルとはクモヒトデ綱カワクモヒトデ目のテヅルモヅル亜目またはその中のテヅルモヅル科の棘皮動物の総称である。 1,000メートルくらいまでの海底に棲む。ほかのクモヒトデと同じように腕は5本あるがその腕が数十回も枝分かれし、触手となる。生息地では海中にこの触手を広げ、デトリタスなどを集めて食べている。
参考情報、ウィキペディアより