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俺のアイスは甘酸っぱい

作者: 一ノ瀬 葵

あれ、このシャーベット、こんなに甘酸っぱかったかな。


俺、このアイス、好きだったんだけどな。こんなに甘酸っぱかったかな。


そんなことを思いながら俺はボロボロと涙を地面に落としていた。


出会いは数年前、高校のクラスメイトだった。最初は緊張して、話しかけるのにも時間かかって俺が結局聞けたのは好きなアイスの味くらいでよっぽど怪しかったんだろうな。毎日彼女のこと覗いてたのが。話しかけた時言われたんだよ。

「チョコだよ、今日の帰りコンビニ寄って行こうか、ずっと食べたそうにしてたもんね」

と微笑みながら。

全部見透かされてたんだと思うと本当に恥ずかしかった。

だけど俺らが付き合ったのはそれがきっかけ。

コミュ障の俺でも話せるくらい、ゆっくり聞いてくれて、俺も少しずつ慣れていった。

本当は俺が告白するべきだったのに彼女から告白してくれた。


「好きなアイスの味は何ですか?」

って泣きながら。


「俺もチョコです、俺と付き合って」

そんなかわいい付き合いだった。本当は俺が好きなのグレープのシャーベットなんだけどね。


そのことを友達に報告すると、すごい嬉しそうな顔して喜んでくれた。


それから、デートするようになって学生らしく付き合って楽しく過ごしていたんだ。

しばらくしてから一緒にアイスを買いに行った時、なぜか彼女はグレープのシャーベットを手に取ってレジへ持っていった。

「どうして?」

と聞くと

「だって、本当はこれが好きなんでしょ?」

と微笑んでレジを通した。

そして、蓋を開けてスプーンですくって俺に差し出した。

「はい。あげる。」

とまた微笑んだ。


また、見透かされたのか、と思うと恥ずかしながらも差し出す君がかわいくて、もうそんなことどうでもいいとまで思ってしまった。


でも、知らなかったんだ。

ずっと応援してくれてた友達が実は俺の彼女を好きだったなんて。


知るわけもなかった。

ずっと応援してくれてた。

あの時だって。


そう思うとやはり俺の涙は止まらない。


別れた理由が、そいつを好きになったからだもんな。


でも、俺にも責任がある。

だから言ったんだ、あいつに。


「幸せにしてやってくれ」ってな。


そしたら、あいつ

「ごめん。お前と一緒に見てるうちにやっぱかわいいなって、でも、奪うつもりはなかったんだ。本当に応援してた。それだけは信じてくれ。」

とか言うんだぜ。


別に疑ってなどいない。

お前も俺の彼女が素敵だなって思った。

彼女もお前を素敵だなって思った。


ただそれだけの話なんだ。


むしろ、俺が邪魔者だったのか。

だとしたらとんだ茶番だ。



でも、きっとあの日に戻っても俺はもう一回聞くのだろう。


「アイスは何の味が好き?」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全部っ…!言うことなしっ…!! [一言] まさか…。 こんな悲恋だったなんて!! 甘酸っぱい…甘酸っぱいよ!!
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