1-7
下駄箱で靴を履き替えた頃だった。
ぷるるるると携帯電話が鳴る。
着信表示は司兄さんだ。
「もしもし」
『おっ隼人か?帰りが遅いから心配でな』
「ごめん先生と話してたらこんな時間になっちゃった。これから帰るよ」
『おうわかった。もう杏里ちゃんも来てるから車に気をつけて帰ってきな』
「はーい」
と、電話を切り校門を出る。
今日はオムライスかーと思いつつ商店街の中へ入っていく。
時刻は夕方18時過ぎ。
今日はやけに静かだなーと中を通っていく。
いつもだったら奥様方が夕飯のために賑わっているはずの商店街…。
いつもだったら…?
俺はなんで今そう思った…
足が止まる
周りの店はすべてシャッターが下りている。
いつも開いているはずの店が閉まっている。
なぜ…。
『きゃああああああああああ!!!』
後ろから悲鳴が聞こえた。
慌てて振り返る。
そこには、
「…嘘…だろ…」
夕日が赤く染まっている。
夕日の明るさと、赤い血
同じ制服を着た女子生徒が刺されていた。
体はぐったり倒れており、流血が止まらない。
刺しているのは黒装束の男
身長は俺より高く、巨漢
「な…んで…」
俺は足が恐怖で動けなかった。
男は刺している刀を抜き女子生徒を抱える。
その間も血は出続けている。
地面に下し、刀に付着している血液を拭う。
そして、次の標的は…俺
「見たな…」
低い声が脳に響く。
顔をこちらに向けて刀を構える。
赤い目が鋭く光る。
逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ!!!
頭で分かっていても体が動かない。
恐怖が体を支配している。
「動け…動けよ!俺の脚!!!」
「目撃者は…殺す!」
男が一歩踏み込んだ。
俺はその瞬間、持っていた鞄を向かってくる男に投げた。
足は動かないがなんとか腕は動いた。
「くっ…邪魔だ!」
顔面に当たる前に刀で両断されたがその数秒でも十分だった。
俺はその場から路地裏へと逃げた。
まっすぐ行ってもすぐ追いつかれる…。
それなら地の利を生かして裏道から逃げる。
商店街を出ればすぐ警察があるからそこまで行けばなんとかなるはずだ。
「はぁ…はぁ…」
後ろを振り返ることなく裏道をゆっくり歩いていく。
その間頭を整理する。
刺されていたのはうちの学校と同じ制服の女子…。
刺していたのは日本刀。
そして赤い目の男…。
人殺しか…。
なにか報道でもあったのか?
賑わっているはずの商店街がシャッター街になっているのは明らかにおかしい。
「一体何がおこっているんだよ…」