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夢の中で会いましょう  作者: 朱希紘
1章 Alice
6/12

1-5

 午後からの授業も一切頭に入る事はなかった。

集中力なんて皆無だった。

終わりのホームルームでも多分ぼーっとしていたのだろう。

担任のまっつんから雑務を押し付けれた。

 大量のプリントを別館の資料室まで運んで欲しいとの事。

今日の一連の反省として俺は了承した。

そして放課後。

友人達は悪いな隼人!と言って帰っていった。

 俺はさっさと終わらせようと思い、プリントを運んでいく。

別館に直接繋がっている廊下が3階にあったのは不幸中の幸いである。

その廊下から聞こえる、吹奏楽の練習や運動部の走り込みを見ながら運んでいく。


「しまった資料室ってどこだ」


 別館はほとんど授業でしか訪れていなかったので、何階にあるのかを聞くのを忘れた。

鍵は預かっていたので、鍵に書かれていないか確認するためプリントを置こうとしたが…。


「どうかしましたか?」

「あっ…松本先生に資料室にこのプリント運ぶようにって言われて…。すみません資料室ってどこですか?」


 話しかけてくれたのは、白衣を着た男性。

物理担当の和泉(いずみ)先生だ。

そう言えば和泉先生の研究室が別館にあったのを思い出した。


「あーこのプリントですか。申し訳ないのですが僕の研究室に変更して貰ってもいいですか?」

「えっ…でも」

「大丈夫です。これは元々僕が松本先生にお願いしたプリントですので安心してください」


 にっこり笑う和泉先生。

俺はあははと苦笑いをし、結局当初の目的とは違う研究室の方へ運んでいく。

プリントを半分持ってくれた和泉先生には感謝しかない。

 研究室は別館1階の一番奥だった。

和泉先生は女子生徒に人気で、優しいしかっこいと言う意見をよく聞く。

もっと詳しく聞いてもよかったが先生の評価とかどうでもよかった俺にとってはその評価が納得できた。

当たり前かもしれないが、半分持っているとは言ったがもちろん俺より多く持っているし、

すれ違う生徒には一人一人挨拶している。

皆に好まれるのは納得だな。

と、考えていると研究室に着いた。


「いやー石坂君ありがとうございます」

「いえ…」

「喉が渇いたでしょ?お茶を入れますね」

「いやいいですよ!ただプリントを運んだだけなんで」

「まぁまぁそう言わずに。椅子に座って待っていてくださいね」


 先生はそう言って、奥の部屋へと入っていった。

来客用のソファーに座り、周りを見渡す。

なんだかんだ研究室へと入るのは初めてだったので、興味深々である。

当たり前だが本棚が両側にあり、どれも難しい本ばかりだ。

真ん中には来客用の大きいソファーとテーブル。

その少し奥には先生専用の大きい机。

机の上はパソコンや先ほど持ってきたプリント。

案外整理整頓されていて驚いている。

漫画とかでは資料とかで汚いイメージだったからだ。

 きょろきょろしてると奥の部屋からお盆を持った和泉先生が現れた。

お盆の上には冷たい麦茶が入ったコップが二つ。

一つを俺の前に渡し、テーブルを挟んで和泉先生が座る。


「本当助かりましたよ石坂君」

「ただプリント運んだだけですよ和泉先生」

「ふふふ。そのただの行動が僕にとっては助かる行為だったのですよ」


 そう言いつつお茶を飲む。

俺も折角出されたお茶を飲む。

うまい。


「口に合うか分かりませんが、冷えているので美味しいでしょ?」

「はいうまいです」

「それはよかった」

「和泉先生は研究室にずっといるんですか?」

「うーんそうですね…職員会議とかない時とかはずっと居ますね」

「顧問とかは…?」

「一応文芸部の顧問ですけど、文芸部は今年なくなってしまいましたからね。だから次が決まるまでは引きこもりです」


 ふふふと笑いながら優雅にお茶を飲む。

イケメンが飲むと絵になるなと思ってしまう。


「石坂君は何か部活には入らないんですか?」

「帰って家事をしないといけないので」

「そうなんですね…。なら仕方ないですね」

「親がほとんど帰ってこないので兄と妹で家事をしています」

「なるほど。妹さんと言うのは一年の石坂愛理さんですかね」

「そうです」

「色々と賞を取っていましたね。先生方も話題にしていましたよ」

「そう…なんですね」


 どうも俺は妹と兄の話をされると、言葉がつまってしまう。

今話しているのは俺なのに俺の話題ではないからだ。

和泉先生が悪いとかじゃない…。何も持っていない俺が悪いんだ…。


「…そういえば石坂君は今日何かおかしな事を言っていたと聞きましたよ」

「えっ」

「居るはずのない転校生の話です」

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